2025.02.10NTTリーグワン2024-25 D1 第7節レポート(埼玉WK 28-28 BL東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第7節(交流戦)
2025年2月9日(日)14:30 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 28-28 東芝ブレイブルーパス東京

「負けるマインドはまったくなかった」。引き分けに持ち込んだ“確信”の同点トライ

後半35分、殊勲の同点トライをもぎとった埼玉パナソニックワイルドナイツの竹山晃暉選手

埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)対東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)の一戦は、互いの技術と闘志が激しくぶつかり合う攻防の末、28対28のドロー決着となった。1位・埼玉WKと2位・BL東京の首位決戦にふさわしい激闘だった。

勝負のポイントは、サイドでの攻防だった。埼玉WKのウイングは長田智希と竹山晃暉、BL東京のウイングは森勇登とジョネ・ナイカブラ。フィールド中央でフォワード陣が激しくぶつかると、両軍がダイナミックにサイドへ展開。ライン際でのスピードとパワーを駆使したバトルがゲームに大きな影響を与えた。

埼玉WKの快速ウイング・竹山は「ゲーム分析の段階で、BL東京さんがワイドにボールを動かすのが分かっていたので、攻守両面でキーになるのは確実に僕だと思っていました。まずは目の前の相手に対して貪欲にドミナント・タックルすることを目指して、そこから攻撃につなげたいと思った」と振り返る。

埼玉WKは前半34分に司令塔の山沢京平が負傷交代するアクシデント。16対7で前半を折り返したものの、後半はBL東京が激しく巻き返して一進一退の攻防となった。

手に汗握る首位対決は、後半27分に森、後半30分にナイカブラのウイング陣が豪快にトライを決めて(ともにコンバージョンも成功)BL東京が28対23として逆転。BL東京がサイドの覇権を握ったことによって生まれたトライだった。6連勝中の埼玉WKに“土”がついてもおかしくない状況だったが、ブルーのジャージーをまとった荒武者たちは屈しない。

後半35分、5mスクラムの流れからヴィンス・アソが大外へロングパス。走り込んだ竹山が両手を目一杯に伸ばしてキャッチすると、そのままタッチライン際にグラウンディングして同点トライ。昨季のプレーオフトーナメント決勝と同じカードとなった今節の首位決戦は、28対28でノーサイドとなった。

2トライの竹山は「どんな展開になっても負けるマインドはまったくなかった。最後のトライは、必ず外へ来ると確信して準備をしていた。自分たちのラグビーを信じた結果が同点につながったと思う。今日の試合は“終点”ではなく成長の“過程”。引き分けをただ受け止めるのではなく、なぜドローだったのか、どうしたら勝てたのかを追求していく必要がある」と語った。

サイドの攻防戦は痛み分け。一昨季から続く埼玉WKのリーグ戦連勝記録は23で“小休止”となったが、野武士たちの王座奪還への進化は続いていく。

(伊藤寿学)

埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督(左)、坂手淳史キャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

「タフなゲームになりました。『このリーグの上位2チームの試合結果はこうなる』という試合でした。全員がプレッシャーを感じていたと思います。両チームとレフリーにプレッシャーが掛かった試合だったと感じていますが、全員が試合に携わってとても良い試合になったと思います。ファンのみなさんにも楽しんでいただけたのではないかと思います」

──前半と後半の戦いについて、その違いをどう感じましたか。

「東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)さんのような質の高い選手がいるチームには、成功する瞬間もありますが、いろいろな瞬間にプレッシャーが掛かります。相手もプレッシャーを掛けてくる中で、このような結果になりました。22mラインの内側では良いプレッシャーを掛けていたにもかかわらず、自分たちのところで良い選択肢が見つかりませんでした。そのような部分が違いを作ってしまったのではないでしょうか」

──アーリーエントリーの佐藤健次選手が初キャップとなりましたが、起用の意図を教えてください。

「チームメンバーのコンディションが要因でした。あのタイミングでの起用となったのは、まずはグラウンドに出て、初キャップを取ることが大切だったと思ったためです。ここからキャリアが始まっていきます。この試合では二つポジティブなことがあったと感じていて一つは佐藤選手のデビューで、二つ目は福井翔大選手の復帰です。彼自身、ハードワークをして復帰に取り組んでいたので、良かったと思います」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「ロビーさん(ロビー・ディーンズ監督)が言うとおり、非常にタフなゲームでした。勝敗はつかなかったですけど、あの時間帯でトライできたことは自信になりますし、絆を感じることができました。ゴール前のアタックでワイルドナイツらしくない単発になってしまったところはありますが、(山沢)京平が抜けてしまったところでコミュニケーションが足りない部分もありましたし、さらに磨きをかけていきたいと思います。アタックのところでもっとできることはあると思います。ファンのみなさんには楽しんでもらったと思いますが、リーグワンの魅力を伝える大きなゲームになったと思います。もっとみんなでプレーを楽しんでリーグを盛り上げていきたいと思います」

──後半はどんなところに難しさを感じましたか?

「ゲインされた部分のほとんどは、一人でディフェンスをしようとしてしまったことがミスだったと思っています。相手が風下だったのでアタックをしてくることは分かっていたのですが、そこに対して自分たちのディフェンスを保ち続けていればああいうことにはならなかったと思います。インサイドのプレッシャーが少なくなっていましたし、アウトサイドのところではなかなか難しい時間もありました。そこは改善できる部分だと思っています」

──できたところとできなかったところはどういった部分でしょうか。

「相手のダブルタックルは良かったです。僕らも入れていたと思うのですが、ラックの周辺ではお互いに良いディフェンスができていました。ブレイクダウンでもっと前へ出られるアクションができていれば、もっと良いボールが出たと思います。そこは改善点として考えていきたいと思います」

──昨季のプレーオフ決勝で負けたBL東京との対戦でしたが、いまの時点の感想は?

「昨季の決勝で負けていますが、そのイメージ、その思いはもっていません。自分たちにとってどう成長して、どうタイトルを取りにいけるか。そこにフォーカスしています。そこに向けての課題があって、収穫がある。みんなでかみ砕きながら次に向かって成長していくことが必要だと考えています。シーズンは中盤ですが、これから結果を残していくチームなので、もっともっと成長するためにいろんなチャレンジをしていきたいと思います」

東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(右)、リーチ マイケル キャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「素晴らしいラグビーの試合になったと思います。お互いにプレッシャーを掛け合う展開で、序盤に埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)さんが小さな局面での勝負をモノにして、当然、私たちも準備をしたのですが圧を受けてしまいました。後半は向かい風に対して、しっかりとボールを持ってアタックしようと選手たちは素晴らしいプレーを見せてくれたと思います。後半は良かったからこそ、前半の課題が浮き彫りになったと思います。点差を離されても後半は勝利をつかめるところまでいったのは収穫かなと思います」

──風が強いときのマネジメントについて、どういった印象でしょうか。

「準備の段階からゲームマネジメントを考えてきて、1週間を通じてコーチ陣とすり合わせをしてきました。前半は早く脱出すべきところで無理にボールを回してしまいました。今日のようにお互いにプレッシャーの高いチーム同士の対戦になると、そういう場面でも自分たちのラグビーができるかが大事になってきます。ゲームマネジメントも80分に近づくにつれて改善できたことは収穫です」

東芝ブレイブルーパス東京
リーチ マイケル キャプテン

「フィジカリティーの部分ですごく良かったと思います。試合のはじめから最後までしっかりと自分たちのプレーができて、80分間戦い続けられたことを誇りに思います。後半の最後までお互いに勝機があるすごい試合だったと思います。自分たちがやろうとしていたことが少しずつできたので、次の試合へ向けて収穫にして頑張りたいと思います。リーグワンの試合はプレーしていて楽しいですし、今日はさすが埼玉WK対BL東京というゲームでした。こういう試合を毎週できるように頑張りたいと思います」

──調子の波がある中で、今日の試合のテーマはどんなものでしたか。

「調子の波はありますが、今日は良くできたかなと思います。それ(調子の波がある状況)でも勝つときは勝てるものです。今日はプレッシャーのところがしっかりとできたかなと思います。感覚としてはディフェンスが頑張れば、良いアタックにつながる。風の影響もありましたがBL東京らしさが出せたと思います。1試合1試合で学んで修正すれば、シーズンを通じて成長できると思います」

──シーズン半ばの2月の時点で埼玉WKと引き分けたことをどう捉えますか?

「お互い同じ感覚だと思います。通用したところ、通用しなかったところ。感じたところは一緒だと思うので、修正能力は高いので、次にやるときはまた違った展開になると思います。シーズンの中で1試合1試合、成長していくことが大切です」

──相手に堀江翔太選手がいた昨季の戦いとの違いはありましたか?

「昨季は堀江選手のようなビッグメンバー、後半のインパクトプレーヤーの存在は感じました。今季は坂手(淳史)選手が長くプレーしているし、今季入った佐藤(健次)選手もこれから出番が増えてくると思います」

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