NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第8節(交流戦)
2025年2月15日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
リコーブラックラムズ東京 44-22 浦安D-Rocks
練習での失敗を生かす。試合で実現できたのは“落ち着き”の結果
浦安D-Rocks(以下、浦安DR)を江東区夢の島競技場に迎え、ホストゲームに挑んだリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)。前半を15対22のビハインドで折り返したものの、後半に4トライを挙げ突き放せば、守っては無失点。同会場におけるスポーツ大会最多観客数を更新する3,065人の声援が後押しとなり、44対22で今季初の勝ち点5を獲得した。
第2節以来およそ1カ月半ぶりとなる勝ち星に、BR東京にはようやく笑顔が戻った。試合を終えたタンバイ・マットソン ヘッドコーチは「良くやった」とチームを称えた。
重要課題だったラインアウトを安定させることに貢献したのは、今季初先発の山本嶺二郎。「1週間しっかりと話し合って準備した」と挑めば、ラインアウト成功率80%台後半の成功率を誇った。
だが練習では「自分がどうにかしようと思い過ぎて、いつもはしないようなプレーに走ってミスを重ねてしまった」と振り返る。練習で失敗したからこその、本番の落ち着きだった。
「自分の仕事をしっかりとこなせば、ラインアウトも取れることが分かった。一貫してやり続けます」
また2トライを挙げたセミシ・トゥポウは、プレーヤー・オブ・ザ・マッチを獲得。力強い走りにハイボールキャッチでも役目を果たして、チームに勢いをもたらした。
「ノンメンバーが良い準備をしてくれて、コーチからは良いアドバイスももらえました。だから自信を持ってゲームに挑めた」と晴れやかな表情を見せる。
後半のスコアは29対0。今季苦手としていた後半に勢いをつかめたことは、チームにとって大きな自信となる。
TJ・ペレナラは言った。
「人間とはできないことが続くと癖になり、悪いサイクルが続いてしまうものです。でも今日はそれを止めることができた。この勝利を足掛かりにしたいと思います」
そして付け加えたのは、プロフェッショナルスポーツプレーヤーとしての在り方だった。
「勝っても負けても、来週には再び良いスタートを切らなければいけません。今日は良い試合の終わり方ができましたが、しっかりとリカバリーをして、次戦に向けハードワークをしたいと思います。この旅路がとても大切です」
そう、われわれはまだ旅の途中。来週も変わらず、新たなゲームへと挑む。
またこの日は、BR東京のルル・パエアと浦安DRの松本壮馬がそれぞれリーグワン初キャップを獲得。
パエアは「できる限り自分の役割を実行しよう」と出場3分間を全うし、アーリーエントリーの松本は「学生ラグビーとは雰囲気が違いましたが、思ったよりも緊張しなかった。この経験を次に生かしたい」と飛躍を誓った。
(原田友莉子)
リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京
タンバイ・マットソン ヘッドコーチ
「TJ(ペレナラ)が言ったことすべてに同意します。
クラブとして結果もすごく重要(な試合)で、チーム全員がハードワークし、一貫性についても重要視してきました。こうやって結果が出ると、ハードワークしてきたことに意味があるんだなというところにつながります。
前半はリードされましたが、後半のリアクションは良かったかなと思います。エリアのコントロール、また(中楠)一期がイエローカードから戻ってこられるようにゲームをスローダウンさせて、うまくゲームをコントロールしてくれたと思います。良い反応が見えました」
──中楠一期選手がイエローカードで試合から離れている間、伊藤耕太郎選手がスタンドオフに入ってゲームをコントロールしました。どのような評価でしょうか。
「良い仕事をしてくれたと思います。一期がいない間、そんなにチャンスはなかったのですが、ただゲームがオープンになったときに彼の強みが見えたのかなと思います。ディフェンスの部分でも良い関わりがあったので、良かったです」
──伊藤選手は大卒1年目ですが、成長ぶりについてどのように感じますか。
「すごく良い状態で成長してくれています。大学を卒業した1年目は、切り替えの難しい年ではあると思いますが、2年目になるともっと慣れてくるかな、と。
いま、違うポジション(フルバック)でやっていることも彼にとってはプラスだと思います。違う視点からゲームが見られて、再び10番をやるときには必ずこの経験がプラスに働くと思います」
──チームが勝てない時期が続きましたが、その間に何かアクションを起こしたのか、それともあえて何もしなかったのでしょうか。教えてください。
「僕たちとしては次の週、いまは東芝ブレイブルーパス東京戦のことを考えています。また来週も一貫性のある試合を見せなければなりません。この試合はセットピースパフォーマンスもだいぶ良かったので、後半のコントロールにつながったかなと思います。来週タフなゲームになるので、同じレベルの精度を見せられるか、はチャレンジになると思います」
──中楠選手がライン際で良いディフェンスをするイメージがありますが、ヘッドコーチとしてはその危機管理能力を評価しているのでしょうか。
「彼の強みの一つは、良いディフェンダーであるということ。すごく勇敢で、ディフェンスにコミットしてくれています。10番はアタッカーに狙われるポジションでもあり、今日であればサム・ケレビなど重いプレーヤーたちが突っ込んでくるポジションです。その中でしっかりと勇敢なディフェンスを見せてくれていると思います」
──浦安D-Rocks(以下、浦安DR)に対して、どうやって勝とうとしたのでしょうか。
「こういう(なかなか勝てない)シーズンなので、いまは自分たちにフォーカスを当ててやってきています。どのチームにも勝つチャンスはあると思います。もちろんどのチームにも強みがあって、その時間をできる限り制限することが狙いです。今日、ケレビがワンチャンスで決めたときはタフでしたね。それ以降はみんなが良くやってくれましたね。ヤスパー・ヴィーセもモメンタムを生む選手ですが、うまく対処できました。
チームとしてフォーカスしていることはあまり変わらず、自分たちのラグビー、自分たちのシェイプをより安定させて、一貫性をもってやり続けます」
リコーブラックラムズ東京
TJ・ペレナラ ゲームキャプテン
「試合後のハドルでは『良い足掛かりになったね』と仲間に伝えました。前半は少しエフォートが残念だった部分もありました。いくつかソフトなプレーもあり、簡単に取られ過ぎてしまったところもありました。
ですが、後半はコントロールの部分で正しいポジションでプレーしたり、チャンスのときには実行したりできました。相手にも脅威となる選手が何人かいたので、その脅威に対して良いディフェンスを見せることができたと思います。
(5連敗から)カムバックしたことを誇りに思います。これをきっかけに、さらにレベルアップしたいです」
──チームが勝てない時が続きましたが、その間に何かアクションを起こしたのか、それともあえて何もしなかったのでしょうか。教えてください。
「結果が出ていなかった間も、大きな部分では良いことができていました。本当に『ベストゲームができなかった!』と感じたのは、コベルコ神戸スティーラーズ戦ぐらい。ですがそれ以外は、約60分間はリードすることもできていたので、いかに序盤に見せる内容をもっと長くできるようになるか、というところでした。
今日は面白いことにその逆で、良いスタートを切れなかったのですが、でも必要なときに良いプレーができました。良かったです。
確かに結果は出ていませんでしたが、向かっている方向は間違っていなかったので。あとは自分たちが分かっている、自分たちができる(高い)レベルのプレーを、一貫性をもって長くプレーできれば、どのチーム相手にもプレッシャーを掛けられると思っています」
──ハーフ団を組んで感じる中楠選手の良さを教えてください。
「ヘッドコーチと同意見です。ディフェンスの局面で勇気を見せてくれて、一番大きい選手が突っ込んでくることも気にしません。彼のインサイドでディフェンスをしているので『もし一期が抜かれたとしても、僕が対応する』というコミュニケーションも取っています。それも彼の自信につながればいいな、と思っています。
それから一期のゲームマネジメント面での成長も、いまはすごく良いですね。自分自身に自信もついてきて、周りの選手も彼のことを認めていると思います。若い選手たちがこのレベルでプレーするとなったときに、自分自身に対する自信を持ちづらいこともあるんです。でも彼のリードの仕方を見ていると、自分でも自信を持ってプレーしていると感じます。未来は明るいですね。僕も彼の成長過程の一部となって、手助けができればなと思っています」
浦安D-Rocks

浦安D-Rocks
グレイグ・レイドロー ヘッドコーチ
「前半は良いプレーができて、すごくポジティブな結果を生むことができたのですが、後半はそれを生かせず、チームとして完全に切れてしまったという総括です」
──安田卓平選手がリーグ戦通算50キャップを達成しました。決して大きくないサイズで、日本人選手で、キャップを重ねられる理由はなんだと思いますか。
「彼はけがも少なく、ハードワークをし続けてくれる選手で、ステップも武器の選手です。過小評価されている選手だと感じています。50キャップを取ることができて個人的にもうれしいですが、今日を良い結果で、良い思い出を作ってあげられなかったことを悔しく思います」
──アーリーエントリーながらファーストキャップを獲得した、松本壮馬選手の起用理由を教えてください。
「練習でもかなり良いパフォーマンスを出していますし、先週末行った部内マッチでもフィジカルの部分を見せてくれていました。浦安DRとしてはできるだけ若い選手、良い選手を育て上げていきたいという気持ちもあるので、彼を起用しました」
浦安D-Rocks
飯沼蓮キャプテン
「ヘッドコーチが言ったとおりです。前半はリードして折り返すことができたのですが、後半は風下ということもあり自分たちがアタックする時間を作れず、ディフェンスの時間が多くなってしまいました。ペナルティなど後手に回ったプレーも多く、後半が原因でこの結果になってしまったと思います。チームとして本当に悔しい結果になりました」
──キャプテンから見て、安田卓平選手はどのような選手でしょうか。
「卓平さんは常に冷静で、安定しているプレーヤー。多くのポジションもできますし、無難に自分の仕事を確実にこなす選手だと思います。あまり波のない、お手本となるような選手です」
──リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)に対してどのような準備をしてきたのか、一方で試合中、その準備がどのあたりからうまくいかなくなったのか教えてください。
「(前節の)三重ホンダヒート戦に勝利して、勢いに乗れました。自分たちの強みを出せればポテンシャルはある、BR東京を相手にも勝機を見出すチャレンジができると考えていました。
まずはフィジカル。そして相手のリアム・ギルとTJ・ペレナラ、この二人が脅威となっているので、そこの対策をしました。だからといってそこにフォーカスし過ぎるのではなく、自分たちの仕事を80分間し続けることも準備してきました。
前半は良い形で終えられましたが、後半はディフェンスで後手に回ってしまい、TJとリアムにかなり好き勝手させてしまったな、と。相手が勢いに乗ったところで、自分たちはそれを覆せなかったです。細かいところはチームに持ち返って反省したいと思います」