2025.02.24NTTリーグワン2024-25 D1 第9節レポート(BR東京 44-45 BL東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第9節(交流戦)
2025年2月22日(土)12:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
リコーブラックラムズ東京 44-45 東芝ブレイブルーパス東京

執念で獲得した勝ち点1。その立役者は二人のフッカー

2番で先発したリコーブラックラムズ東京の大内真選手(写真中央、ヘッドバンド)

昨年度王者・東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)を秩父宮ラグビー場に迎え、ホストゲームに臨んだリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)。一時は18点差がついたものの、4連続トライで一気に逆転。その後、逆転を許したが、最後まで食らい付き、44対45で勝ち点1をつかみ取った。

カギを握ったのは、セットピースの安定だった。今季初となる、ラインアウト成功率、そしてスクラム成功率の“ダブル100%” 。相手のラインアウトにもプレッシャーを掛け、奪い取れば、スクラムでは何度も押し込みペナルティを誘った。

その立役者は、二人のフッカーだ。

先発を務めたのは大内真。BL東京から加入2年目にして初の2戦連続スターターを任された。後半4分、相手ボールスクラムでアーリーエンゲージを取られた次のスクラムでのこと。大内は誰よりも先にポジションに着けば、レフリーと言葉を交わした。

「ギャップを取った上でセットして、『その場所から僕たちは動きませんよ』ということをしっかりアピールしたかったんです」

そのスクラムを押し込む。アドバンテージを獲得するビッグスクラムに会場は沸いた。「うまくヒットできて、押せると確信したときには押そうという準備をしてきました。試合中のコミュニケーション、バランスがうまくいった」と破顔する。

「僕は毎回、崖っぷち。120%に近づけるプレーをしないと、いつ外されてもおかしくない立場」と控えめの自己評価ながらも、交替時には古巣の同期・佐々木剛に笑顔で出迎えられ「うれしかった」と笑みをのぞかせた。

1型糖尿病を抱えながら試合に臨む。大西将史選手

後半27分、大内に代わってピッチインしたのは、今季初出場となった大西将史。開幕の前週に足を負傷した大西にとってこれが復帰戦だった。

「12月は鬼門」と語るのには理由がある。さかのぼること約1年前の2023年12月。1カ月で10kgもの体重が落ちた。病院で検査を受け、下された診断名は1型糖尿病。1週間の入院ののち、24時間血糖値を測定しながら自動でインスリンを注入するインスリンポンプ療法を試合中も受けながら、ラグビーを続けている。

「病気を理由にラグビーを辞めたくなかったし、同じ境遇の人に勇気を与えたかった。何よりもそれでは自分も不完全燃焼。チームでも初めてのケースですが、試行錯誤しながらラグビーをしています」

2人のフッカーが見せたスクラムでの一押しとラインアウトでの正確なスロー。2つの成功率100%がチームに勇気をもたらした。

(原田友莉子)

リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京のタンバイ・マットソン ヘッドコーチ(左)、TJ・ペレナラ ゲームキャプテン

リコーブラックラムズ東京
タンバイ・マットソン ヘッドコーチ

「今日チームが見せてくれたパフォーマンスに対して、本当に誇りに思います。もちろん勝ちたかったので悔しさはありますが、あのようなスタートを切ったあと、しっかりとファイトし続けてくれたチームを誇りに思います。早い時間帯にけが人が続いてしまいましたが、ハーフタイムにロッカールームに戻ってきても、いいスピリットを見せてくれていました。本当に誇りに思います。自分たちのことを振り返る必要があるので、44点を取ったけれど、45点を取られたことをしっかりと振り返ります」

──後半はスクラムでプレッシャーを掛けるなど、良い展開を作れたと思います。パディー・ライアンやファカタヴァ アマトをリザーブに回しましたが、今日の試合の流れを期待してのメンバー編成でしょうか。

「そういうわけではありません。カール・ホフトがフォワードコーチですが、良いスクラムコーチでもあります。スクラムのインパクトというのは彼が常に考えてくれています。パディーをはじめとしてスクラムでチャンスを生み出すことができて、そこからスコアも生まれました。東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)戦に向けての準備をしている中で、ディスカッションの一つがセットピースでした。セットピースがすごく重要だという話をしていたので、今日はそこがすごく機能して、良いチャンスを生み出せたかなと思います」

──今日はスクラムハーフのリザーブに山本昌太選手が入っていましたが、交替を考えましたか。

「試合時間残り20分のところで、必ずコンディションチェックをしています。TJ(ペレナラ)は昔ながらのハーフバックです。めちゃくちゃ大きいエンジンを搭載しています。そして負けず嫌い。交替させたらずっと文句を言われるのではないかと思います(笑)」

──大内真選手が2試合連続先発出場し、非常にハードワークをしているように見受けられますが、評価をお願いします。

「どんどん良くなっていると思います。ゲームコンディション、ゲームへの慣れ、周りのメンバーとのコンビネーションも試合経験を積むことによって徐々に良くなっていると思うので、そこも影響があったと思います」

──スコア的にはこれぐらいのスコアになるイメージだったのか、それとももう少しロースコアのイメージだったのでしょうか。

「30点台のイメージでした。BL東京は良いアタックをするチームなので、スコアをされるとは思いましたが、4、5トライくらいかなと思っていました。両チームの合計得点が90点近くになるとは思わなかったですね。ファンにとっては良かったですね!コーチやディフェンスコーチにとっては良くないですが……(笑)」

──最大18点差がついた中でも、一時逆転できた要因は何だと感じていますか。

「簡単な答えではないと思います。でも、チームのリーダーがしっかりとグラウンド上で解決してくれたのかなと。BL東京はディフェンディングチャンピオンなので、もちろんすごいプレッシャーを掛けられることは分かっていました。その中でも『絶対にあきらめない』という話もずっとし続けてきました。ハーフタイムにロッカールームに戻ってきたときは、選手たちもすごくよくコミュニケーションを取れていて、スピリットも高かったです。そこが重要だと思います。やっぱりスピリットが高くないと、コーチはなかなか影響を与えられません。選手たちのスピリットが高かったのが良かったと思います」

リコーブラックラムズ東京
TJ・ペレナラ ゲームキャプテン

「ヘッドコーチと同じく、チームのことを誇りに思います。すごくタフな試合でしたが、しっかりとファイトしてくれました。後半の早い時間帯にラインブレイクをされたりポイントを取られたりしましたが、しっかりと集まって戦い続けることができました。あと少しで勝てるというところまでもっていけました。ただ。45点も取られてはいけないと思います。それだと試合に勝つのは難しいので。ポジティブなポイントはたくさんあります。キツいことも続きましたが、それでもしっかりと戦い抜いたことは良かったです」

──最後のプレーが1点ビハインドで、自陣からのアタックでした。もしあの場面でターンオーバーされてトライを取られたらボーナスポイントも失ってしまう状況でしたが、マイボールスクラムから迷いなく攻めました。どういうマインドだったのでしょうか。

「試合に勝ちたいからですし、相手も勝ちたいと思うので、もしターンオーバーされていたら相手は蹴り出すのではないかと思いました。BL東京からしたら、われわれにボーナスポイントを与えないことよりも勝つことにフォーカスすると思いました」

──スクラムハーフが80分間プレーするケースは、現在はあまりないと思います。それについてご自身ではどのように感じていますか。

「(『彼に選択肢はありませんよ』とマットソン ヘッドコーチが笑わせた上で)僕は毎週、80分間プレーできるコンディションをキープするプライドをもっています。やっぱり9番としてしっかりプレーすることが大事だと思いますし、ラグビーをすることもすごく好きです。できるだけ長く出られるならばうれしいです」

──2試合続けてリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)は7トライ。しかも今日はすべて違う選手がトライを取りました。アタックの手ごたえはいかがですか。

「バラエティ豊富でいいかなと思います。ゲームシェイプを理解し、セットピースでのコーチングも良く、そこからもスコアもできました。ビデオを見て、チームの傾向をチェックして、それをしっかりとゲームにつなげる。その流れが良くなったと思います。あとはオフェンスシェイプに関して信じることも、良くなっていると感じます」

──「8点差で負けるのではなく、4点差で勝てるようなチームに」と静岡ブルーレヴズ戦の記者会見でおっしゃっていました。昨年度王者を相手に、1点差まで詰め寄るチームになりました。次の5点を取るために、もしくは一つのトライを防ぐために必要なことがあれば教えてください。

「『これだけの失点があってはいけない』。それが答えだと思います。リッチー・モウンガという世界トップ1・2のオフェンシブプレーヤーがいて、周りの選手たちももちろん、オフェンスが強いBL東京です。その相手にも自分たちは得点が取れるということを証明できたと思います。自分たちのシステムを信じているので、あとは失点を少なくすること。特に最初の20分ですね。最後のほうのトライは互いにエネルギー切れもあるので、システムどうこうというものでもありません。でも最初の20分で3トライ取られたことは、オッケーじゃないです」

東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(右)、リーチ マイケル キャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「非常にタフな試合になりました。勝利を誇らしく思います。BL東京として試合の入りはすごく良い形で入れたのですが、BR東京さんが何度も良いプレーを見せてきました。プレビューどおりBR東京さんは非常に危険なチームだということは分かっていた中で、BL東京の選手たちはしっかりと良い反応を見せてくれたと思います。1週間をとおして少しメンバーを変えたり、直前のメンバー変更があったりもしました。ノンメンバーとして長く過ごしてきた選手も、今日は出場し、素晴らしいプレーを見せてくれたと思います。苦しい展開の中でもリーダーがしっかりと舵を取ってくれました。かなり試合の流れが行き来する展開の中で、しっかりと準備されてきたんだろうなというBR東京さんのスペシャルプレーも見せられました。全体として、まずは素晴らしいラグビーの試合でした。そのラグビーの試合で勝利を収め帰れることをうれしく思います」

──後半だいぶプレッシャーを掛けられましたが、それでも勝利できた要因をどのようにお考えでしょうか。

「ボールを持ってアタックすることができれば、自分たちの強みであるオフロードなどを使って攻め、得点につなげることができると分かっていました。フィフティー・フィフティーのオフロード(パス)もしっかりつないだり、ルーズボールに飛び込んで確保したりというところから、もちろんプレッシャーは掛かっていましたが、糸口はしっかりと見えていました。選手たちも落ち着いていましたし、リーダー陣も落ち着いてリードしてくれていました。上(コーチボックス)から見てもそこまで焦ることはなかったです」

──小川高廣選手が1年ぶりの復帰戦でした。コメントをいただければと思います。

「チーム内でも非常に信頼の厚い、人気のある選手です。前十字靭帯断裂という大きなけがからリハビリをしっかりやって戻ってきてくれました。チームとしても非常にうれしい瞬間になりました。復帰戦なので少しぎこちない部分もあったかなと思いますけど、すごく展開の早い試合だったので仕方ないかなとも思います。とにかく戻ってきてくれてうれしく思います」

──この試合でシーズンは折り返し。これまでのチームの戦いをどう振り返りますか。さらに今後高めていきたいところがあれば教えてください。

「非常に楽しむことのできた9試合だったと振り返ります。もちろんチームとして学びもあり、ともに困難に立ち向かいながら、良い選手、そして素晴らしいリーダーがそろっているチームにおいて、毎週毎週楽しんで、その週末の試合に向かうことができた9週でした。次のブロックに向けても、この9試合で得た学びを一つひとつ潰していければ、もっともっとチームとして成長できるであろうと後半戦に向けて楽しみです」

東芝ブレイブルーパス東京
リーチ マイケル キャプテン

「みなさんこんにちは。今日はBR東京とBL東京のファンの前で良いラグビーができたことは、すごくうれしかったです。僕の中のテーマは『結果にこだわる』でした。内容はどうであれ、最終的に勝つことが大事。そういう点では、良くできたかなと思います。内容はいろいろとありますが、結果的に勝って本当に良かったです。試合中、BL東京はプレッシャーを掛けられても割と冷静でした。ロックがいなくなったり、イエローカードを食らったりしても、それでも冷静に戦えたことは良かったと思います。来週はわれわれのセカンドホストエリアともいえる鹿児島で、クボタスピアーズ船橋・東京ベイとの試合があります。そこに向けて準備して、このブロックを勝って終わりたいと思います。そして最後に、ペレナラという選手に本当にオールブラックスの凄さを見せられました。彼は32歳。彼を起点に取られたトライが何本もあって、多くの子供たちに彼の素晴らしいプレー、ゲームマネジメントを見てもらえたと思います。リーグワンにはニュージーランド代表オールブラックスのリッチー・モウンガにペレナラと、本当に強い選手がいることが、子どもたちに良い影響を与えます。リーグワンのレベルも上がるので、やっていて楽しいです。ありがとうございました」

──前半最初、ゴール正面のペナルティーでスクラムを選択されました。その理由を教えてください。

「ファーストスクラムだったかなと思います。あの場は自分たちのメンタリティーを示す場だと思ったので、スクラムを選択しました。それとクイックタップしてどんどん前に行くメンタリティーもBL東京らしいかなと思います」

──小川選手が1年ぶりの復帰戦でした。コメントをいただければと思います。

「大きなけがをして、リハビリを経ての復帰はチームにとってすごくうれしいです。彼を待っていたので。彼は日本で1番のスクラムハーフだと思っているので、これからどんどんチームに影響を与えてくれる選手だと思います」

──今日はいろんな意味でペレナラ選手の存在感が大きかったと思います。実際に対戦してどのような印象がありますか。

「一番は競争心です。レフリーに対しても、自分のチームメートに対しても、僕らに対しても、ものすごく勝ちたいという思いを感じました。すべてのトライシーンにおいて彼を起点にプレーしていたので、試合中に彼を止めればBR東京を止められる(と分かっていた)。それでも止められなかったので、彼は本当にトップ・オブ・トップの9番だなと思いました」


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