2025.02.24NTTリーグワン2024-25 D1 第9節レポート(S東京ベイ 62-14 静岡BR)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第9節(交流戦)
2025年2月22日(土)12:00 スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場) (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 62-14 静岡ブルーレヴズ

“ルースレス“な戦いぶりとチームの絆。鬼となったS東京ベイは昨季の悪夢を振り払った

リーグワン初出場で1トライも獲得、クボタスピアーズ船橋・東京ベイの梁本旺義選手

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)が鬼になった日──。

とどめを刺すかのごとくラストのワンプレーでダメ押しのトライを決めたショーン・スティーブンソンは、この一戦に向けてチームは「ruthless(ルースレス)」をテーマに取り組んできたと語った。それは「情け容赦ない」といった意味を持つ形容詞で、スポーツの文脈では相手に対して一切妥協せず、勝利のために徹底的に戦う姿勢を表す際に用いられる。

昨季、S東京ベイは静岡ブルーレヴズに苦杯を喫した。第3節、後半43分にトライを許して痛恨の逆転負け。さらに第13節では24点リードしながらも逃げ切ることができずにまさかのドロー。これが決定打となり、プレーオフトーナメント進出の道が閉ざされた。

ホストスタジアム『えどりく』(スピアーズえどりくフィールド[江戸川区陸上競技場])で迎えた難敵との対戦。昨季の悪夢を払拭するかのごとく、S東京ベイは強烈なスクラムを武器とする静岡BRに序盤から牙をむいた。ここ数戦は大量リードを許すなど課題となっていた前半戦からフルアクセルの猛攻を見せ、さらに後半に入るとトライを量産。“ルースレスな攻撃”を最後まで貫き、今季最多の62得点で圧倒的な勝利を飾った。前日にバーナード・フォーリーが体調不良となり、急きょ10番を背負って出場した押川敦治が、試合を振り返る。

「仲間がペナルティを取ってくれたり、スクラムで頑張ってくれたり、いろいろな要素がある中で(今季)最多得点を挙げられたのは、チームにとってすごくプラスになる。得点力という部分で言うと、これからもっと厳しい戦いが続いていくので、すごくポジティブなことだなと思います」

そんな無慈悲な戦いの中で見られた、ハートウォーミングなシーン。後半30分、この日が初キャップとなった梁本旺義がピッチに入ると、スタンド席のノンメンバーたちから「オウギ! オウギ!」の歓声が。そのわずか2分後、モールがトライゾーンに押し込まれ梁本がボールをグラウンディングすると、再び大きな「オウギ」コールが発生。試合中にもかかわらず、梁本は思わず込み上げる涙をこらえたという。ファンを惹き付けるチームの魅力がここにある。

情け容赦ないルースレスな戦いと、揺るぎないチームの絆。他者を思いやる優しさがあるからこそ、人は時に鬼になれる。これでえどりく21連勝。ランキングは第9節を終えた時点で3位。次節、2位の東芝ブレイブルーパス東京が待つ鹿児島に乗り込む。

(藤本かずまさ)

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケ ヘッドコーチ(右)、ファウルア・マキシ キャプテン

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「こんにちは。結果には非常に満足しています。静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)さんとの試合は、常にタフで重要な試合になります。彼らはシーズンをとおして良いラグビーをしています。私たちは80分間集中してプレーすることにフォーカスし、そしてベーシックな部分を重視して準備してきました。

選手たちを称えたいと思います。タフなリーグになっていますが、選手たちはスマートに、自分たちの責任を理解していました。80分間をとおして集中力が非常に高く、選手たちがステップアップしてくれたことが非常にうれしかったです。重要なパフォーマンスを見せることができ、今日のような大事な試合、勝利が求められる試合で勝つことができました」

──セットピースでプレッシャーを掛けたことが、勝利につながったと思います。セットピースについて、どう考えていますか?

「そこではいいバトルができたと思います。モールとスクラムは彼ら(静岡BR)がエネルギーを生むもので、彼らの強み、DNAの一部だからです。そういうフィジカルなゲームになると思っていました。そこで勝てたことが大きいです。そういったことができないと、エリアを挽回されることや、22mライン内に侵入されることにつながります。そして、今回はそれを止めずにやり続けました。以前のパフォーマンスとは違い、今日はチャンスを生かすことができました。それがプレッシャーを生み出したのだと思います」

──バーナード・フォーリー選手の欠場と、押川敦治選手の先発が決まったタイミングについて教えてください。

「フォーリー選手は昨夜、体調を崩していました。状態は改善したのですが、そのタイミングでメンバーは決めていました。ファウルア・マキシ キャプテンも言ったように、私たちはチーム全体で戦うことが大事だと考えていました。すべての選手が重要です。そして今日、押川選手がステップアップしてくれました。彼は三菱重工相模原ダイナボアーズ戦や横浜キヤノンイーグルス戦でも良いパフォーマンスを見せてくれていました。今日の試合でも良いプレーを見せてくれました。彼のパフォーマンスには満足しています」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
ファウルア・マキシ キャプテン

「今日対戦した静岡BRさんは非常に強いチームだと分かっていました。今週はタフな試合になることも分かっていました。準備の段階から、一日、一日を大切にしてきました。メンバーだけでなく、チーム全員の勝利だと感じています。日々、積み上げてきたものが今日の結果につながったと思います。ノンメンバーのおかげで、自分たちは今日の試合に勝てたと思っています。今日の結果をうれしく思っています。そして、いつも応援してくれるオレンジアーミーの声援が、自分たちの力になりました」

──ノンメンバーへの感謝を述べていましたが、具体的にはどのようなサポートをしてくれたのでしょうか?

「週末のメンバーが発表されてから、メンバー外の選手たちにも、それぞれの役割があると思います。(練習で)静岡BRのアタックシェイプやディフェンスなど、自分たちにすごくいい絵を見せてくれたからこそ、この試合がすごくやりやすくなりました。見えないところで支えてくれるノンメンバーに感謝しています」

静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズの藤井雄一郎監督(左)、クワッガ・スミス キャプテン

静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督

「今日はイエローカードも3枚、それ以外にもペナルティがあり、どうしても14人で戦わざるを得ない時間が長くなり、かなりストレスがあった試合でした。アタックも、それが原因でなかなかうまくいきませんでした」

──前半、ペナルティが多かったのはどういったところに原因があるとお考えですか?

「ハイタックルや、トライを阻害するプレーは厳しく(ペナルティを)取られました。トライを阻害する行為は、規律というよりは思わず手が出てしまった感じだと思います。ですが、ペナルティはペナルティなので、気を付けていかないといけないです」

静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス キャプテン

「今日は私たちにとって残念な試合でした。明らかにイエローカードが影響したと思います。多くのミスもあり、勢いに乗ることができませんでした。クボタスピアーズ船橋・東京ベイさんは本当にいいプレーをしました。フォワードとバックスがうまく連係し、セットピースも良かったです。それが私たちに対する彼らのキーポイントだったと思います。彼らは本当にいいプレーをしましたが、私たちはベストのプレーができませんでした。しっかりと修正をして、前を向いていきたいと思います」

──ゲームプランとしてはどういうところを強みとして勝つプレーを狙っていたのか。そして、そのプランのどのあたりがうまくいかなかったのか教えてください。

「5m地点や22mライン内でチャンスがあったのですが、ほとんど生かせませんでした。ラインアウトでミスを犯してしまいました。ゲームプランはここ数週間やってきたことと同じでしたが、勢いに乗ることができませんでした。1フェーズ、2フェーズでボールを失ってしまいました。ボールを保持し、相手を疲弊させ、ギャップを広げる必要がありました。今日の遂行力は良くなかったと思います」


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