2025.02.24NTTリーグワン2024-25 D1 第9節レポート(三重H 20-17 横浜E)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第9節(交流戦)
2025年2月23日(日)12:00 三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 (三重県)
三重ホンダヒート 20-17 横浜キヤノンイーグルス

楕円のボールを鈴鹿の風に乗せて。三重H、ホスト2連勝を導いた二人のキック

この試合、横浜キヤノンイーグルスのほうがトライ数では上回っていたが、三重ホンダヒートは中尾隼太選手によるペナルティゴール、コンバージョンゴールで得点を重ねた

三重交通G スポーツの杜 鈴鹿で、ディビジョン1に昇格後初めてとなるホストゲーム2連勝を三重ホンダヒート(以下、三重H)が達成した。

前半はトライこそ決められなかったものの、中尾隼太の2本のペナルティゴールで6点を奪うことができた。そして後半には二つのトライと中尾のコンバージョンゴール2本によって得点を伸ばす。終盤には横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)に詰め寄られたが、20対17でリードを守り切ることに成功した。

この日スタジアムには『鈴鹿下ろし』と呼ばれる強く冷たい風が吹き付け、横浜Eは2本のコンバージョンキックを外していた。もしこれらのキックが成功していれば、勝敗が逆転していた可能性がある。

前半の段階でトライ狙いではなくペナルティゴールを選択した理由について中尾は、「なかなか前に持ち込めなかったので、着実に点を奪うことにしました。結果的にはこれが大きかったです」と話した。

『キックが試合を決めた』という点では、前節の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦も同様だった。試合終了間際、1点ビハインドの状況で迎えたコンバージョンゴールを呉洸汰が成功させ、劇的な逆転勝利を収めた。その際も鈴鹿に強い風が吹いていたことは記憶に新しい。

迎えた今節、呉にとって今季2試合目の出場は、本職ではないフルバックでの先発。中尾の見事なキックを後ろから見守りながら、自身の役割を十分に果たした。

「風がとても強くて、ウォームアップのときからキックが入らないくらいの状況でした。でも、中尾さんが素晴らしいショットを決めてくれました。特に、後半27分の段階で8点差になったのが大きかったですね。フルバックでの出場が決まったときは……少し驚きはしましたけど(笑)、シーズン前から何度かプレーさせていただいたポジションでしたし、特に不安は感じませんでした。いつもどおり自分のキックを生かしつつ、フォワードを前に出そうと心掛けました。先週までゲームに出ることができなくて、スタンドで見ながら悔しい思いを持っていたぶん、『出場することになったら自分のプレーで貢献したい』という強い気持ちを抱いてこの2試合を戦いました」

二人のキックがもたらした得点により、ホストゲーム連勝という大きな成果をつかんだ。「いま、チームの雰囲気はとてもいいです。レギュラーもリザーブも関係なく、メンバー全員が1週間同じ目標に向かって準備できています。その結果がこの2連勝だと思います」(呉)。鈴鹿の風に背中を押されながら、三重Hは勝利に向かって走り続けていく。

(籠信明)

三重ホンダヒート

三重ホンダヒートのキアラン・クローリー ヘッドコーチ(左)、パブロ・マテーラ ゲームキャプテン

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「チームに対してまず申し上げたいのは、『とても誇りに思う』ということです。前半は、われわれが相手に食らい付く状況になっていましたが、そこでカギになったのはハーフタイム前の10分間をディフェンスで耐え切ったところです。後半は、連続で相手にペナルティを与えてしまう場面があり、うまくいかなかった部分も見られました。ただ、そのあとはチャンスを得てトライを決めることができました。パフォーマンスの面では、選手たちのプライドや努力が感じられる内容でしたし、いい試合だったと思います」

──この試合で前半戦の全9試合が終了しました。これまでの手ごたえと今後の課題についてお聞かせください。

「自分たちの基準を作り上げることができたと思います。プレシーズン中はジムトレーニングやフィットネスに集中しました。記録を見ていただければ分かるとおり、今季の全試合において、われわれはリードされた状態でハーフタイムを迎えています。しかし、後半に勝負を懸けて逆転できるチームになっています。前半戦を終えて感じるのは、リーグワンのどの相手とも互角に戦える力が備わったということです。ただその試合の勝敗は、相手に転んだときもあれば、こちらに転がったときもありました。

また、私は多くの選手たちに敬意を表したいです。オフシーズンに補強したプレーヤーの中には、ディビジョン2から来た選手も、前所属クラブで3~4番手だった選手もいました。たとえば、フェインガ・ファカイや山田生真は昨季(リーグワンでの)出場機会がありませんでしたが、彼らが成長してチャンスを得ることによって、チーム全体の競争力が向上しています。それは、コーチ陣の素晴らしい働きのおかげもあります。特に彼らについてはフォワードですので、担当している斎藤展士や伊藤鐘史(ともにアシスタントコーチ)の貢献があってこそだと感じています」

──後半に途中出場の選手が入ってからテンポが良くなったように見えました。特に竹中太一選手のプレーが目立ちましたが、どのようなイメージで采配をしましたか。

「ラグビーでは、試合中に積み重ねたものが最後に影響してくるものです。太一がいいプレーを見せ、テンポを上げることができたのは、最初からわれわれがダイレクトにプレーして相手を消耗させた結果だと感じています。たとえば、岡野(喬吾)の素晴らしいキャリーも相手を疲れさせる効果がありました。また、パブロ(・マテーラ)が述べたように、チーム全員が各自の役割を理解しているため、途中出場する選手には『自身がもっているスキルを発揮して、この試合にプラスできるものを加えてほしい』と期待して送り出しています」

三重ホンダヒート
パブロ・マテーラ ゲームキャプテン

「最初の言葉はヘッドコーチと同じです。今日の試合を終えて、このようなチームの一員であることをあらためて誇りに感じています。80分をとおして努力を続け、自分たちを信じ続けることが大切だと思います。これまでわれわれは前半でリードを奪われている状況が多かったのですが、いつも全員が逆転を信じて戦ってきました。今後もそれを遂行し続けます」

──シーズンの半分を終えての振り返りをお願いします。

「振り返ってみれば、これは『自分たちが戦い方を理解した前半戦』でした。選手の間でよく話しているのですが、われわれには『言い訳せずに全員がやりとおさなければいけないもの』があるのです。それは、誰もが常に準備を整えておくという姿勢です。先週の試合で2トライを決めた小林亮太が、今週はけがのために出場できなくなってしまいましたが、そのような状況でもほかの選手が常に出場できます。メンバーに選ばれなくても、全員が気を抜かずに練習をし続けることで、試合で100%の力を発揮できるように準備しているのです。リーグワンのライバルと比べると、われわれにはスーパースターがいませんが、より強く団結していて、全員で勝利のために戦うことができると思っています」

──竹中太一選手が途中出場したあと、チームに何か違いを感じていましたか。

「これについては、さきほどロッカールームでワイマナ(・カパ)と話していたところです。太一が出てきたからテンポが上がったというよりは、『前半のテンポを80分維持し続けられた』ことが大きかったと感じました。そして、相手がそれに付いてくることができなかったのではないかと考えています。前半の終盤でも『われわれがテンポを維持すればチャンスが訪れるだろう』と感じましたし、その継続がチームの強度を保たせてくれました。それが最終的に逆転へとつながったのだと思います」

横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルスの沢木敬介監督(左)、梶村祐介キャプテン

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督

「お疲れさまでした。残念な結果になったのですが、これを招いているのは自分たちなのでね。下を向いていても仕方がないので、次の試合ではしっかりと改善することができるように、1週間準備したいと思います」

──3点差で迎えた試合終了間際、ペナルティゴールで同点に持ち込むのではなくトライを狙いにいきました。会場のファンは大いに沸いていましたが、その選択についてどのように感じましたか。

「トライを取りにいく決断をしなかったら、逆に僕は怒っていたと思います。同点を狙いにいくのはあり得ないことだと感じていますし、そのような決断は何があってもしないですね」

──後半、勢いに乗れなくなってしまった要因をどうお考えですか。

「要因はいろいろとありますね。まずはレフリングに対して一喜一憂しているところや、チャンスで仕留め切れなかったという点です。セットピースについていえば、後半のラインアウトはほとんど崩れていました。コーチも一生懸命努力をしていて、『プレッシャーが掛かった状態のラインアウトではこのようなオプションをやる』というトレーニングを1週間掛けてやっているんです。ただ、いまはそれを遂行することができていないという現状があります」

横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン

「みなさん、お疲れさまです。今日の試合に関しては、自分たちから勝てるチャンスを手放してしまい、相手にそのチャンスを与えたという、言い訳ができないような負けゲームだったと思っています。ただ、改善しなければならないところはシンプルですし、そこに集中して来週以降に向けて準備をしていきたいと思います」

──試合終了間際にペナルティゴールでの同点を狙うのではなく、あくまでトライで逆転を試みました。その際の決断についてどう感じていますか。

「同じシチュエーションを何度迎えようとも、毎回トライを狙いにいくと思います。その決断に対しては、特に何も感じていないですね」

──改善するところはシンプルだと仰っていましたが、具体的に説明していただけますか。

「敵陣に入った回数は多かったのですが、ラインアウトなどのセットピースで自分たちが準備していたプレーがほとんどできませんでした。もう一度そのクオリティーを求めて練習したいです。また、勝負どころでのペナルティもそうですね。この2点に関しては、来週以降改善していかなければいけないと感じています」

──終盤はグラウンドの外から見ていらっしゃいましたが、どのようなところに問題があったと感じていましたか。

「三重ホンダヒートさんのほうがアグレッシブに前へ出てきていると感じていました。自分たちがそのレースで勝てなかったのがすべてかなと思います」

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