NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第10節(交流戦)
2025年3月1日(土)13:00 白波スタジアム (鹿児島県)
東芝ブレイブルーパス東京 31-27 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
鹿児島の地で世界的フッカーと激突。原田衛が見据えるのは世界の頂点

白波スタジアムの記者席で足元にかすかに感じた震動は、桜島の地響きか、屈強な男たちがぶつかり合う衝撃だったか――。強力フォワードにプライドを持つ2チームの激突は、東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)がクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)に31対27で競り勝った。
BL東京は直近2試合(東京サントリーサンゴリアス戦、リコーブラックラムズ東京戦)はスクラムで苦しんだことが、接戦に持ち込まれる要因となっていたが、この日は日本代表のオペティ・ヘルらが先発したS東京ベイと力強く組み合って、試合の流れを引き寄せた。
リーチ マイケルキャプテンが「今日のプレーヤー・オブ・ザ・マッチを選ぶならフロントロー」と称賛すると、リッチー・モウンガも「今日に関してはフォワードがものすごく良かった」とうなずいた。
最高気温が20度を超えるタフなコンディションの中、後半31分までプレーしたフッカーの原田衛がスクラムを振り返る。
「フロントローでコネクションのところを修正しました。相手は僕らより大きいので(先発フロントローの平均体重はBL東京が105kg、S東京ベイは115kg)、しっかりと低いところで全員がコネクションをもつことを話してやってきました」
日本代表10キャップを持つ原田は、同じフッカーとして南アフリカ代表76キャップを誇るマルコム・マークスと対峙。原田が前半29分に判断良くライン際に回り込んでトライを決めると、マークスは後半24分にトライゾーンに豪快に飛び込んだ。
「(マークスは)世界一のフッカーなので、ずっとやり合えたのは僕にとっても良い経験です。フィジカルが全然違うので、僕らは集団で低くいきました。あとは僕のほうが小さいのでマークス選手より走らないといけない。仕事量をもっと増やしたいと思います」
懸念だったスクラムが改善し、激闘の末に勝利を収めても、さらに成長するための課題を挙げる原田。20年以上にわたって合宿を行うなどBL東京にとって縁の深い鹿児島で、若きリーダーは世界の頂点を見据えていた。
(安実剛士)
東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ
「結果についてはこの上なく誇りに思っています。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)は素晴らしいチームだということは分かっていたので、それに応じた準備をしてきました。競った展開になることも分かっていましたが、ここ数週間で少し苦しんでいたスクラムでもタイトファイブ(フォワードの1~5番)が素晴らしいパフォーマンスを見せてくれて、フォワード全員がすごくタフな仕事をして、チャンスをモノにすることができました。プレッシャーがある中で、リーチ マイケルを含めた選手たちがよくやってくれました。鹿児島でこうした試合ができたことをうれしく思っています」
──具体的にS東京ベイ相手にどのような準備をしましたか?また、スクラムが良くなった理由は何でしょうか。
「スクラムはK9(ノンメンバー)のフロントローの選手たちが高いレベルでS東京ベイを真似してくれました。ジョシュア・シムズ フォワードコーチと選手が協力して一週間で作り上げているのが良い形になっていると思います。S東京ベイはフォワードを中心にしたチーム作りをしているので、そこで逃げるのではなく、正面からぶつかっていこうという意識でした。モールも勝負する、ラインアウトで競るところもそうです。相手の長所に真っ向からぶつかっていきました」
──復帰したワーナー・ディアンズ選手の評価をお願いします。
「(日本語で)スバラシイ。4週間ほどリハビリをしていましたが、戻ってきて一発目でやってくれました。特にラインアウトで主導権を握ってくれたので、うれしく思います」
──鹿児島のファンへのメッセージをお願いします。
「昨日、鹿児島に入ったのですが、ホームに帰ってきた感覚です。毎年合宿もさせていただいていますし、できれば来年もぜひ戻ってきたいと思います。鹿児島のみなさんのサポート、ありがとうございます」
東芝ブレイブルーパス東京
リーチ マイケル キャプテン
「鹿児島で試合ができたことをうれしく思います。鹿児島は僕らにとってはゆかりある場所で、20年ぐらい(毎年)合宿をしています。チームとして、(5週連続の試合の5週目だった)静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)戦は体がキツい状態で戦って負けてしまいました。今回は第10節で、同じように5週連続の最後の試合でしたが、良い状態で臨めました。試合の内容は“フィジカルバトル”でした。意識して臨んだところで結果的に優位に立てて良かったと思います。体が痛いので、バイウィークにリフレッシュして、次の試合に向けて準備します。今日のラグビーはレベルが高くて、楽しかったです」
──静岡BR戦と違って、良い状態で臨めた要因は何でしょうか。
「静岡BR戦の前は4週連続で試合をしていると体がキツくなってきて、練習のボリュームを減らしました。ただ、それで結果につながらなかったので、今回は全体の量はコントロールしましたが、コンタクトはしっかりやりました。少し筋トレの部分を変えるなど、選手のフィードバックを受けて変化させたことが良い形になりました」
──終盤にペナルティでスクラムを選択した理由を教えてください。
「(スクラムとタッチキックの)正直どちらでも良かったのですが、場所的に両サイドを攻められる位置で、リッチー・モウンガがボールを持つと二人のディフェンスを引き付けられるので、そこを利用するためにスクラムを選択しました」
──リーチ選手が今日のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれましたが、リーチ選手がPOTMを選ぶなら誰でしょうか。
「フロントローですね。S東京ベイは『ボムスコッド』と呼ばれるインパクトがある選手たちを後半に出していましたが、静岡BR戦では最初から彼らを起用してすごく良い戦いをしていました。東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)のフロントローは前節でスクラムを押されましたが、今週はしっかりパックとして戦いました。どうしても一人を選ぶなら木村星南選手です」
──鹿児島で試合をしましたが、いつもと違う感覚はありましたか。
「僕らがチャンピオンになってから鹿児島に来たのが大きな違いだと思います。2016年に来たときはコカ・コーラレッドスパークスに負けましたが(17対22)、そのころに比べてBL東京の人気も上がって、ファンもたくさん来てくれたのが良かったです。また、試合の演出があって、ファンサービスの交流もできました。
毎年、鹿児島で試合ができるようにしたいですし、鹿児島との関係性をより深くして、ラグビーの普及に協力したいと思います。僕らがここで良い試合をできれば、ラグビーをしたい人が増えると思うので」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「プランとしては良いプランでしたし、選手もリフレッシュをして、5週連続の試合の5週目に良い準備をしましたが、プレッシャーを掛け切れませんでした。勝てた試合だったかもしれないですが、最後にバーナード・フォーリー選手がペナルティのタッチキックを出せなかったミスもありましたし、今日は私たちが勝つためには十分ではありませんでした。ただ、ここから学んで、成長を続けるだけです」
──プレッシャーを掛け切れなかった要因は何でしょうか。
「チャンス自体は多く作れていましたが、プランを遂行することができませんでした。自分たちにプレッシャーを掛けてしまって、自滅したところもあったと思います。特に規律を守るチームとしてやっているのに、イエローカードが2枚出たことも、結果につながらなかった理由の一つだと思います。ただ、それがラグビーです。チーム作りを進める中で、優勝するためにはシーズンでこういう試合が必要なのかもしれないので成長を続けていきます」
──ショーン・スティーブンソン選手がこの試合を最後にチームから離れますが、彼はチームにどのような影響を与えましたか。
「彼はファンタスティックな選手です。パフォーマンスも良かったですし、確実にチームを良くしてくれました。契約など自身がコントロールできないところは考えないようにしていますが、彼はこの6試合でインパクトを残してくれました。来季のプレシーズンが始まる9月に戻ってきてくれることを楽しみにしています。今季に関しては戻ってこない予定なので、そこは残念です」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
ファウルア・マキシ キャプテン
「BL東京は昨季に優勝したチームで、タフな試合になることは分かっていましたが、自分たちにフォーカスして良い準備ができたと思います。今週をとおして自信になった部分もありますが、今日は自分たちの日ではありませんでした。(フラン・)ルディケ ヘッドコーチが言ったようにここで学んで成長するしかありません。次に対戦するときは自分たちが勝てるようにやっていきます」
──ブレイクダウンでペナルティを取られるケースがありましたが、要因は何だったのでしょうか。
「自分たちで自分たちにプレッシャーを掛けてしまいました。今日のブレイクダウンは僕らのスタンダードではなかったので、次に向けて修正していきます」