NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第10節(交流戦)
2025年3月2日(日)14:30 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 46-32 コベルコ神戸スティーラーズ
百戦錬磨のセンターが上げた反撃の狼煙。豪胆無比な存在感を見せ、逆転勝利を呼び込む
“ワイルドナイツ劇場”の立役者は、百戦錬磨の南アフリカ代表戦士、ダミアン・デアレンデだった。
埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)対コベルコ神戸スティーラーズの伝統の一戦は、一進一退の激闘だった。埼玉WKは後半8分までに20対32で12点のビハインドとされ、窮地に追い込まれた。だが、デアレンデは逆境に屈しなかった。
後半17分に小山大輝との“阿吽のクイックプレー”で敵陣を切り裂き、トライ。ワールドクラスの最強センターは、勇敢なプレーで仲間たちを鼓舞した。
そして3分後の後半20分には自身のラインブレイクからの絶妙なワンハンドパスでヴィンス・アソのトライをアシスト。“赤い壁”を粉砕して逆転劇を演出してみせた。
「前半は相手のプレッシャーを受けていたが後半は自分たちがハードワークしたことで打開できるようになった。二つのシーンは小山選手とのコンビネーションから生まれた。自分のためではなくチームの勝利にためにプレーした結果が得点につながった」
劣勢において、さらにギアを上げてトライに絡んだデアレンデのパフォーマンスはまさに別格。坂手淳史キャプテンは「トライやアシストといった得点につながるプレーはもちろんだが、経験やゲームを読む力など見えない力をチームに還元してくれる。チームに良いものを与えようとしてくれる姿勢が良い影響をもたらしてくれる」と全幅の信頼を寄せた。
“スプリングボクス”の愛称で知られる南アフリカ代表メンバーとしてラグビーワールドカップ2023フランス大会で連覇を達成。自身のキャリアに大きな勲章を加えた。次のミッションは、リーグワン制覇。埼玉WKに復帰してからの過去2シーズンはプレーオフトーナメント決勝で敗れて2季連続でシルバーメダルとなっている。
「過去2シーズンは決勝で勝てなくて、とても残念だった。優勝は目指すが先を見るのではなく一戦一戦で進化していくだけ。シーズン終盤を最高の状態で迎えられるように全員で準備していく」
豪胆無比のセンター・デアレンデ。その立ち居振る舞いは、まさに豪傑だった。
(伊藤寿学)
埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督
「今日の結果にはとても満足しています。このブロック(第6〜10節)については、チームを誇りに思いますし、いろいろな壁や困難があったのですが、それらを乗り越えられたことに満足しています。このブロックは7人が新しいキャップを得ることができましたし、本日の朝に行われたU23との合同練習でも良い時間を過ごせたと感じています。
個人のところですごく成長が見られたと感じていて、その中でも坂手淳史選手にはチームをリードしてもらい、パフォーマンスを維持してくれて、感謝しています。それとともにコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)さんが私たちに与えてくれた困難を認識しなければいけないです。先週の試合を見ていてこのような困難が待ち構えているのは分かっていました。それに対して、自分たちは一歩一歩立ち向かえたと考えています」
──おっしゃっていた困難について具体的に教えてもらえますか。
「複数人のけが人が出たということで、選手層の厚さを考えると、かなり深いところまでいかなければいけなかった。それによって7人が新しいキャップを獲得してくれました。困難のところで言えば、誰が出ても同じパフォーマンスを維持できるかがチームの壁でしたが、それを選手たちが実践してくれたと思っています。強調しなければいけないのは、こういうことは偶然ではなく、選手たちの準備のおかげですし、コーチングスタッフを含めて全員の仕事の質が高かったからだと考えています」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン
「タフなゲームでした。いい天気で気温が上がりましたが、試合前からタフに準備してきました。チームのパフォーマンスのところで改善すべき時間がありますし、相手の勢いが勝る時間も多々ありました。その中でも自分たちのホストに戻ってきて、勝ち切って、最後はボーナスポイントを取る我慢強さも見せることができたと思います。この試合をまた一つのステップにしてチームは成長できると思っています」
──今日は主力メンバーが変わった状況で逆転勝利をつかみ取りました。その要因はどこにありますか。
「ゲームに出ないメンバーを『ハート』と呼んでいますが、普段の練習から『ハート』の選手たちが自分たちに対して、ゲームに対して準備をしてくれて、心を込めてチャレンジをしてくれています。それがチームの良い文化ですし、それがゲームのすべてにつながっています。それをチーム全員が理解しています。誰がメンバーに選ばれたとしても準備ができていますし、それぞれの強みを出し続けてくれています。そういう文化がチームの強みでもありますし、みんながチームのために準備し続けてくれるのはキャプテンとしてありがたいです。これからも良い方向へドライブしていきたいですし、これからも全員で頑張っていきたいと思っています」
コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ
「最初の50分はいいパフォーマンスができたと思います。ワイルドナイツさんのようないいチームには、自分たちが(相手に)チャンスを与える立場になってしまうことは許されません。自分たちが冒した二つのミスに対して相手が入り込んできて、その部分で自分たちがコネクトし続けることができませんでした。自分たちがコネクトを失った7、8分間にワイルドナイツさんにゲームをもっていかれたと思います。結果に関しては非常に残念です。リーグのトップチームのワイルドナイツさんには80分間すべてでパフォーマンスを出さないと勝てないです。後半はペナルティも多かったですし、自分たちのフェーズを重ねたアタックを本来はもっと見せなければいけなかったが、それができなかった。そこが勝敗を分けたと思います」
──結果は残念でしたが後半最初までは素晴らしいゲームでした。チームの成長についてどう感じていますか。
「最初の50分で神戸Sの本来のパフォーマンスをみせることができたと思います。チャンスをたくさん作ることもできましたし、丁寧にフィニッシュにもち込むところまでできたと思います。ワイルドナイツさんのようなチームには、プレッシャーを掛け続ける必要があります。素晴らしいチームに対してチャンスを与えないようにしなければいけない。前半、自分たちはテリトリーバトルで勝てていたが、後半は負け続ける結果になってしまいました。逆転されたあとにトライしかけたところのオブストラクションのシーンでは、本来であれば取れていた。フィニッシュ(トライ)できていれば5点差になってもう一度、ファイトできていたと思うがそれが残念だったと思います。ただ、良いラグビーができた時間は多かったと思います。もっと成長していきたいと思います」
コベルコ神戸スティーラーズ
李承信 共同キャプテン
「(試合の)残り30分で自分たちがキツいときに守り切って、相手を突き離さなければいけなかった。チャンスを作って、トライを奪い切るところを80分通じてハードワークできるかがトップチームとの差。それをワイルドナイツさんにやられてしまった。自分たちはこの失敗を教訓として学ばなければいけません。今季のトップチームのゲームでは、80分間戦えずに自分たちから勝利を手放してしまっているところがあると思います。メンタリティーとかマインドセットのところなので、そこをしっかりと学びながら次へ準備をしていきたいと思います」
──残り30分間で神戸Sのラグビーができなかった要因はどこにありますか。
「セットピースのミスだったり、イージーなノックフォワード(ノックオン)であったり、自分たちのミスで自陣に入られてしまいました。後半に自分たちがトライを奪ったあとに、立て続けに取られてしまいました。前半から相手に崩されたという感覚がなくて、自分たちのミスから崩れてしまったと思います」