NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第1節
2024年12月21日(土)14:30 ベスト電器スタジアム (福岡県)
九州電力キューデンヴォルテクス 27-23 日本製鉄釜石シーウェイブス
「走るしかねえだろ」。
残り4分、絶体絶命の場面でのビッグタックル
2024-25シーズンのディビジョン2開幕戦。ホストゲームに日本製鉄釜石シーウェイブスを迎えた九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)は27対23で接戦を制し、リーグワンになって初めての開幕戦白星スタートを切った(2022シーズンは開幕戦が中止)。
「走るしかねえだろ」
それから約10秒後、殊勲のヒーローになる男は迷いなく走り出していた。
後半36分、ラインアウトから相手に守備網を打ち破られると、釜石SWのサム・ヘンウッドが抜け出した。得点差は4点。トライを決められれば逆転を許してしまう。昨季、一昨季と開幕戦でラストプレーでの逆転負けを2季連続で味わってきたチーム、ファンにとって“悪夢”がよぎる光景だった。
そんな窮地を救ったのが加藤誠央だった。
「ゴールまで50mくらい距離があったと思うんですけど、とにかく走らないといけないと思いました。それで追い付くことができたので、ここは止めるしかないなと。相手のハンドオフをうまくかわして良いタックルができました」
見事なタックルでサム・ヘンウッドを止めた加藤は、そのあとに相手のノックオンを確認すると、右手を突き上げて渾身のガッツポーズを見せた。
「個人的にミスが続いていたので、それを取り返せたという思いがありました。あの時間帯にピンチを防ぐことができたので、本当にうれしかったです」
加藤は勝利に貢献できた喜びを感じつつも、「僕がああいうプレーをできたのはたまたま」だと謙遜する。
「後半はほとんどの時間でディフェンスだったと思いますが、それまでフォワードのみんなが頑張って、体を張ってバチバチやってくれたおかげ。本当にみんなでつかみ取った勝利だと思います」
チームメートの頑張りを結果に結びつけられたことが加藤にとっては何よりの喜びだった。
今季、チームが掲げた『BE TOUGHER』のシーズンスローガン。それが問われる一戦となった開幕戦で、選手たちは見事に体現した。
「苦しい時間帯でもみんながすぐに立ち上がってタックルし続けていました。この『DNA』はもっと続けていける」
九州KVにとって守備は伝統であり、DNAだ。加藤が見せた姿はまさにチームを映す“鑑”だった。
(杉山文宣)
九州電力キューデンヴォルテクス
九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ
「まず、開幕戦に勝利できたというところを素直にみんなで喜びたいと思っています。前半の戦いについてはアタックで良いトライも取ることができていましたが、自分たちのミスや不必要なペナルティを与えてしまって、相手にスキを与えてしまったかなというところがありました。後半は選手たちが体を張ってディフェンスしてくれて、守り切ってくれたことで選手たちを称えたいなと思っていますし、次につながる良い反省をたくさんもらえました。勝って次につなげられるというのはすごくポジティブなことだと思います。まずはしっかり休んで、来週また良い準備をして、良い試合をしたいと思います」
──前半、後半ともに苦しい時間帯のところでスペンサー・ジーンズ選手がチャージやインターセプトで流れを変えました。彼の評価を教えてください。
「彼は昨季の途中に合流してからも今季のプレシーズンでも常に良いパフォーマンスをずっと続けています。彼のパフォーマンスが今日、特別に良かったというわけではないと思いますし、いつもどおりのプレーをしてくれたと思っています」
──終盤、特に苦しい時間が続きましたが、相手の30フェーズ近いアタックを防ぎ切った場面や加藤誠央選手のタックルでのビッグプレーなど、今村ヘッドコーチが「DNA」と表現する九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)らしい守備が表現できたのではないでしょうか。
「九州KVとしてはディフェンスを武器にしたいチームでもありますし、長いフェーズを守り切れたというところについては選手たちを誇りに思います。ディフェンスに関しては、ほぼ崩れるような場面はなかったと思います。ああいったディフェンスを80分間続けながら、そこからボールを奪い返してトライを取ることに今季はフォーカスしていますので、まだまだそこに関してはもっとできると思いますし、しっかりと改善して次に臨みたいと思います」
九州電力キューデンヴォルテクス
竹ノ内駿太バイスキャプテン
「本日はありがとうございました。さっき、友基さん(今村友基ヘッドコーチ)からもありましたように自分たちのペナルティで相手に勢いを与えてしまった、主導権を握らせてしまった部分というのは改善しなければいけないと思っています。ただ、ゲーム自体は勝つことができましたし、勝って反省できるというのはすごく良いことだと思います。これからの長いシーズンの中で、自分たちがこれまでのプレシーズンで良い準備をしてきたというところを証明していけたらいいなと思っています」
──終盤は特に苦しい時間が続きましたが、グラウンド内ではどのようなコミュニケーションを取っていたのでしょうか。
「まずは自分たちがプレシーズンで取り組んできたところ。基本的なラインスピードをしっかりと上げること。コネクトすること。前半からそこについてゲームキャプテンを務めていた山添(圭祐)からも(喚起する)トークがありました。そこを一貫して最後までやり続けるというところはプレー中、常にチームに対して伝えていた部分でした」
日本製鉄釜石シーウェイブス
日本製鉄釜石シーウェイブス
須田康夫ヘッドコーチ
「まずはこのような素晴らしい環境でゲームをさせていただいたことを非常に感謝しております。ゲームのほうは、お互いにそうだと思うんですが、開幕戦にしっかりと勝って勢いに乗りたいというところで非常に白熱したゲームだったかと思います。われわれも(試合の)入りの部分で敵陣でゲームを進めることができ、有利に試合を運ぶことができていたと思います。ただ、レッドカードが出たくらいのところから少し、(相手に)リズムを渡してしまいました。選手たちも何とか我慢しながら頑張ったんですが、後半は自分たちの手ごたえはありながらも最後のところでミスをしてしまうという形で(スコアを)取り返せなかったというところがゲームの総括になります。これを自分たちの学びとして次に生かしていきたいと思っています」
──敗れはしましたが、手ごたえを感じられる内容だったかと思います。この試合での良い部分、課題としたい部分はどういったところでしょうか。
「良い部分は、しっかりキックを使ってエリアを取ることができ、そこからプレッシャーを掛けて敵陣でラグビーができるような展開にできたことは非常に収穫かなと思っています。ディフェンスのところも粘り強く、接点へのこだわりも見ることができたので、非常に良かったと思っています。課題としてはコネクションを切らすことなく、やり続けるところだと思います。あとは自分たちでしっかりゲームをコントロールするというところも課題かなと感じました」
日本製鉄釜石シーウェイブス
村上陽平キャプテン
「いま、須田ヘッドコーチからもあったように前半の最初は敵陣でプレーすることができていて、有利な時間帯が長かったと思います。ただ、前半の半分を過ぎたくらいから相手のペースになってきて、昨季と同じようにイージーにスコアされるというところが前半の最後のほうは目立ってしまったかなと思います。後半は終始、攻めてはいたんですが、九州KVさんの粘りの前に不用意なペナルティがあり、良い感じでのテンポが出せずにうまくスコアに直結できなかったなと感じています」
──後半はほとんどの時間で優位に試合を進めました。九州KVの粘り強い守備もあったと思いますが、それを打ち破るためには何が必要だったと感じていますか。
「アタックを継続することはできていたんですが、システム的にしっかりとセットアップできていなかったところがあったと思います。ただフェーズを重ねるだけになってしまっていたようなところもあったので、そこは修正が必要だと思います。単発、単発になってしまうのではなく、フォワードとバックスがしっかりと連係し、一体となってプレーしなければ相手のディフェンスを崩すことはできないと思います。そこも修正していきたいなと思っています」