2025.05.26NTTリーグワン2024-25 プレーオフトーナメント準決勝レポート(埼玉WK 24-28 S東京ベイ)
NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
プレーオフトーナメント準決勝
2025年5月25日(日)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 24-28 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
初めて逃した決勝進出。だからこそ、埼玉WKはまた強くなる

パワー、技術、戦略、駆け引き……。埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)対クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)の一戦はプレーオフトーナメント準決勝にふさわしい激闘だった。
白熱の攻防戦は、S東京ベイが28対24で勝利し決勝進出を決めた。埼玉WKはリーグワン4季目にして初めて決勝進出を逃し、3位決定戦へ進むことになった。
埼玉WKのキャプテン坂手淳史は記者会見場の椅子に座ると、一度、深く呼吸をした。目の周りが少し腫れているように見えた。試合後のグラウンドで若手選手たちが涙を流す中でも気丈な立ち居振る舞いを見せていたキャプテンだが、敗戦のショックを払拭するのは簡単ではなかったようだ。
重圧だったのか、焦りだったのか。キックオフ直後から押し込まれた。開始10分までに二つのトライを奪われると劣勢になった。その後、埼玉WKは何度ものフェーズを重ねて敵陣深くに攻め込んだが、オレンジの壁を崩すことができなかった。
「我慢強さが足りなかった。後半はゲインすることができていたので。前半からできていれば違った結果になったと思う」
取り戻せないリズム。こんなに苦しんでいる埼玉WKを見たのはリーグワン4シーズン目で初めて。それでも選手たちは決死のプレーを見せた。後半に入って、竹山晃暉と山沢京平が意地のトライを決めて、24対25の1点差に詰め寄った。坂手は後半26分に入替でベンチに下がり、そこから戦況を見つめた。選手、ファンの誰もが逆転を信じた。
勝敗を分けたのは後半36分過ぎのハーフライン付近でのマイボールスクラム。S東京ベイのパワーに屈してコラプシングのペナルティを取られると、ペナルティゴールを許して24対28に。そしてゲームは決した。
「スクラムでペナルティを取られてゲームが難しくなった。力が足りなかった」
今季の埼玉WKは主力に変動があった上でシーズン中は負傷者が相次ぎ、総力戦となった。
今季、ロビー・ディーンズ監督の方針で主力メンバーを「HEAD」、若手やリザーブメンバーを「HEART」と呼び、「心」の部分を大事にして戦ってきた。坂手キャプテンは「HEARTの選手たちがどんな状況でも努力してくれていたからチームとして成長できた。このチームを誇りに思う」と語り、新生・埼玉WKをけん引してきた。しかし、準決勝の終盤では若手たちが魂のプレーを見せるも力尽きた。若き野武士たちは秩父宮ラグビー場で悔しさをかみ締めた。
「また強くなります。みんなで」
埼玉WKは胸を張って3位決定戦へ向かう。強くなるための戦いは、すでに始まっている。
(伊藤寿学)
埼玉パナソニックワイルドナイツ
埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督
──焦りがペナルティーの多さにつながったのでしょうか。
「ポゼッションの見返りが十分ではなかったと思っていて、精度も足りなかった。スピアーズさんは自分たちの陣地に入ってきたときは見返りを得て帰っていったと思います。そういうところが(スコアに)反映された結果だったと感じています」
──忍耐力をもって戦えれば、違う結果になったと思いますか。
「(必要だったのは)我慢強さではないかなと思っていて、そこと精度のところで、少し足りなかったと感じています。スピアーズさんは自分たちにプレッシャーを掛けてきて、ミスを誘ってきたところが本当にうまかったと思います。プレーオフトーナメントのラグビーは、普段のリーグ戦とは違っていました」
──プレーオフトーナメント準決勝でこのレベルのゲームを見ることができた。リーグワンへの率直な感想をお願いします。
「間違いなくレベルアップしたと感じています。優勝できる能力があるチームがたくさんあると思いますが、今季に限っては(それが)自分たちではなかったと。今季の経験は糧になっていくと思いますし、若い選手たちも成長してくれていて、選手層の深さにつながったと思います。次は3位決定戦になりますが、やらなければいけないことは、これまでと同じくしっかりとやっていきます。なぜ重要かと言えば、ワイルドナイツのジャージーを着てプレーするからです」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン
──前半はなかなか崩し切れなかった印象です。どう感じていますか。
「お互いにディフェンスが強固なチームで、それが最終的な結果につながったと思います。前半から我慢強さが足りなかったと思います。後半は少しずつゲインすることができていました。(同じように)前半からそれがもっとできていれば、違った結果になったと思っています」
──今日の試合のテーマを教えてください。
「自分たちのラグビーをやるということです。そこ(を意識して)1週間準備してきましたし、それをやり続けました。足りなかったですね、それが結果だと思うので」
──足りなかったのは相手のディフェンスの強さが理由でしょうか。
「いや、それだけではないと思います。ゲームの流れというか、すごく組み合う時間が多く、その組み合いの中で自分たちの精度が足りなくて、相手の精度が高かったと思います。ショットを狙ってくるなど、(相手が)プレーオフトーナメントのラグビーをしていたと思います。届かなかったです」
──終わったばかりですが、3位決定戦へのアプローチはどう考えていますか。
「まずはこの結果を消化するのが僕自身も少し時間が掛かると思いますし、今日と明日でしっかりと消化して、来週、もう一回、成長しながら1週間を過ごしていきたいと思っています」
──勝利を信じて応援してくれていたファンへメッセージをお願いします。
「素晴らしい応援でした。今日だけではなくて、シーズンを通じて、青いジャージーを着て、青いタオルを持って、ホストでもビジターでもどこでも常に声を掛けてくれたので、大きな力になりました。オレンジアーミー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイのファン)の方々もたくさん来てくれていて準決勝の雰囲気を作ってくれました。リーグワンには素晴らしいファンがいると思います。直接、感謝を伝える機会はなかなかないので、メディアのみなさんを通じて、感謝を伝えたいと思います。ワイルドナイツもスピアーズさんもまだ来週(試合)がありますが、僕らはもっと強くなっていくので、また応援をよろしくお願いします」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
──ゲームを振り返ってください。
「結果としてはうれしいです。ただ、ゲーム内容はずっと接戦でしたし、突き放しても追い付かれる展開でした。難しい流れでしたがレギュラー陣がコントロールしてくれて、瞬間、瞬間のモーメントのところをしっかりとやってくれて、小さなことの積み重ねが大きなところにつながっていきました。来週も試合ができることは非常にうれしいことです」
──後半の守備が非常に良かったと思いますが、いかがでしょうか。
「ありがとうございます。前回対戦したところの課題を修正できて、接点やスピードのところをコントロールすることで、ゲーム全体のスピードをコントロールできたと思います」
──来週の決勝戦に向けて、相手のアタックとディフェンスにぶつかり合いとなると予想されますがどう感じていますか。
「まずは今日の勝ちを喜びたいですが、来週の決勝戦に関しては、相手(東芝ブレイブルーパス東京)も良いラグビーをしていますしスタンダードもリーグトップレベルです。前回の対戦を踏まえて準備をしていきたいと思いますが、リカバリーを重要視してやっていきます。しっかりと調整して来週に向かいたいと思います」
──終盤のスクラムで勝てた要因はなんでしょうか。
「そういうことを想定してベンチがフォワード6人、バックス2人でした。ワイルドナイツさんと対戦するときは、ボールインプレーが増えるところを含めてのフォワード戦になると想定してのフォワード6人、バックス2人でした。フォワードの接点を重視できたことでああいう結果になりました」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
ファウルア・マキシ キャプテン
──今日のゲームのテーマはなんだったんでしょうか。
「テーマは勝負しにいくことで、マインドセットは一瞬、一瞬で勝つことでした。その瞬間にいることにフォーカスしていきました。ほかのことではなく目の前のプレーに集中することだけを考えました。ジャッジやスコアではなく自分たちがやるべきことを意識しました」
──試合を通じてピンチをしのげた理由をどう考えていますか。
「自分たちのディフェンスを信じて、フィジカルのところで我慢することができたと思います。今日は、我慢できたことが良かったです。(後半にトライを奪われたが)自分たちのコネクションを失うとワイルドナイツがつけ込んでくるので、うまくいかなくても勝ちにいくとみんなに伝えていて、勝ち取ることを意識していました」
──藤原忍選手のゲームコントロールについてフォワード陣やチームメートからの評価を教えてください。
「藤原選手自身、今季すごく成長しているし、自信をつけていると思います。僕らも彼をサポートしてきました。うまいボールやうまいテンポとかで今日もうまくコントロールしてくれたと思います」