NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン1 第2節(リーグ戦)カンファレンスA
2025年12月21日(日)14:30 ヤマハスタジアム (静岡県)
静岡ブルーレヴズ 22-26 東芝ブレイブルーパス東京
敗戦の中での光明。新人離れした23歳がスクラムで新風を吹き込む
右プロップとして相手に押し勝つスクラムワークをみせた稲場巧選手朝から本降りが続く雨天の中でも11,000人を超える観客が駆け付けた、ヤマハスタジアムでの今季初ゲーム。後半の内容から見れば、ホストの静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)が勝たなければいけない試合だっただけに「本当にたくさんの人に応援してもらって、今日はどうしても勝ちたかったんですが、自分たちのミスで苦しんで勝ち切ることができなくて……。これを今後の糧にして次のゲームに進みたいと思います」と藤井雄一郎監督は悔しさをにじませた。
前半は、大敗した開幕戦の雪辱を期す東芝ブレイブルーパス東京の気迫に圧される展開となり、武器であるスクラムでも優位に立てなかったが、後半は今後に向けて一つの光明があった。左プロップに山下憲太、右プロップに稲場巧を投入してからスクラムに押し勝ってペナルティを奪うシーンが増え、反撃モードを力強く後押しした。
特に稲場は、今季のルーキー陣の中で先頭を切って初出場。ポジション争いが非常にハイレベルになっている今季の静岡BRで、若手が好アピールしたことはチームを大いに活性化させるはずだ。本人も確かな手ごたえを感じつつ、反省点も口にする。
「スクラムでしっかり押し切れるところもあったので、そこは好感触がもてましたし、(途中出場で)インパクトを与える意味では勢いを付けられたのかなと思っています。でも最後の最後でスクラムトライしないといけない場面があった。相手がイヤがって(スクラムを)落としてくるのに付き合っちゃいけなかったと思います。落としてくるのを引き上げてどれだけ押していけるかというのが、今日の僕の仕事だったと思うので、そこができなかったのが……。もっともっと成長して、あそこを押し切れる選手になっていきたいと思います」
それでも在籍14年目の日野剛志は「(稲場は)本当にチャンスをつかんだというか、しっかり押してくれて非常に頼りになりました。全体的にレベルは上がっているので、すごく楽しみです」とルーキーの台頭を歓迎する。藤井監督も「稲場は本当にスクラムが強くて。スクラムしかないんですけど(笑)、いろいろなスキルが今後広がっていけばいいなと思っています」と報道陣を笑わせつつ、23歳のプロップの成長に期待を寄せる。
レヴニスタ(静岡BRファン)からは際立った首の太さや愛嬌のある笑顔も含めて「かわいい」という声も目立つが、スクラムでは最も負荷の掛かる3番の位置で新人離れした強さを発揮する稲場。悔やまれる敗戦の中でも、チームの火力を勢い付ける新鮮な風を吹かせてくれた。
(前島芳雄)
静岡ブルーレヴズ
静岡ブルーレヴズの藤井雄一郎監督(右)、クワッガ・スミス キャプテン静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督
「今日は雨の中、静岡のいろいろなところから本当にたくさんの方に応援に来ていただきました。雨の中でこんなに人が集まるのはたぶんウチのチームだけじゃないかなというぐらい、今日はたくさんの人に応援してもらいました。どうしても今日は勝ちたかったのですが、自分たちのミスで苦しみました。最後は1トライ差というところまでもっていきましたが、勝ち切ることができませんでした。これをしっかり今後の糧にして、また次のゲームに進みたいと思います」
──後半、トライラインまで何度か迫った中で、トライを取り切れなかった点に関して、今後に向けてどんな課題があるでしょうか。
「ペナルティなど自分たちのミスがありました。もちろん今日は東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)さんがすごく気迫のこもったプレーをしてきて、そこは分かった上で準備はしてきたんですが、そこでのプレッシャーが強かったかなと思います」
静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス キャプテン
「本当にたくさんのファンの方々が応援に来てくれたことは、自分たちにとっても特別な気持ちですし、本当に感謝しています。シーズンをとおしてプレーしていく中で感謝することはすごく大事だと思いますし、ファンの方がたくさん来てくれることもすごく大事だと思っています。
試合に関しては、自分たちのミスで自分たちがやりたいことができずに、相手にチャンスを与えてしまいました。自分たちがチャンスを作ったところでも取り切ることができませんでした。逆にBL東京はそういうところでしっかりポイントを取ってきたと思いますし、自分たちのペナルティでBL東京を勢いづかせてしまったと思っています。この試合からしっかり自分たちを見つめ直して、改善して次の試合に向かっていきたいと思っています」
──後半、トライラインまで何度か迫った中で、取り切れなかった点に関して、今後に向けてどんな課題があるでしょうか。
「チャンスがいくつかあったと思うのですが、自分たちの遂行力が足りていなかったと思っています。今日のこの結果から学んでいく部分がたくさんあると思いますので、その遂行力のところはしっかりと自分たちで修正して、次の試合に向かっていきたいと思います」
東芝ブレイブルーパス東京
東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(右)、松永拓朗バイスキャプテン東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ
「選手たちのことを誇りに思います。先週にあのような負け方(0対46)をしたところではあったのですが、しっかりと自分たちのやっていることに自信をもったまま良い準備を1週間して、今日に臨めたことが大きかったのかなと思います。特に前半は素晴らしい試合運びができました。後半、静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)さんに流れをもっていかれかけたところもあって、特に終盤にかけては腕相撲のような一進一退の攻防にはなったんですが、その中でペナルティもお互いにありつつ、最後は自分たちのことを信じて戦うことができたということが大きな勝因かなと思います。
試合をとおして選手がしっかり体を張ってフィジカルにプレーするというところもやってくれましたし、しっかり目の前に来たチャンスというのを取り切るところもできたと思っています。後半、静岡BRさんに流れをもっていかれる時間があった中でも、しっかり良いトライも取りながら、自分たちのラグビーへの信念は揺らぐことなく、最後まで自分たちのスタイルを貫けたのが素晴らしかったと思います。
何より、若手が3人、リーグワンデビューを果たしました。チームとして勝利という形で彼らを迎えることができて非常にうれしく思っています。今日の学びとしては、試合の流れをつかんでいるときにどれだけ点を取って、試合の流れをつかめていないときにいかに踏ん張って流れを取り戻すかというところの重要さが、勝った中でもチームとして良い学びとして得られました」
──開幕戦で非常に厳しい負け方をしたあと、この1週間はどういうところに特にフォーカスして準備をされてきたのでしょうか?
「非常にシンプルに、いつもどおりというところで、特に負けたからといってここを変えようということはしていません。埼玉パナソニックワイルドナイツに対して負けましたが、それは過去のことであって、いつまでもその負けを見ていてもしょうがない。静岡BRさんはすごくいいチームですし、強力なスクラム、ラインアウトをもっているチームということも分かっていたので、そこに向けて、負けを見ているより次の試合に向けてやるというところが大きな部分でした。
けが人も出た中でも、まだ1敗ということで、1敗したから自分たちが悪いチームになるわけでもないですし、弱いチームになるわけでもないというところをチームで確認しながら、しっかりいつもどおりの準備をして、その部分を試合での実際のパフォーマンスとしてグラウンド上で表現できたというのが大きいのかなと思っています」
東芝ブレイブルーパス東京
松永拓朗バイスキャプテン
「雨の中でタフなゲームというのが予想されていた中で、前半はうまく敵陣で戦えて、なおかつフィジカルの部分で勝てたというのが、自分たちに流れをもってきた要因だと思います。あとフォワードも、ラインアウトやスクラムを、前半は特によくやってくれたと思っています」
──開幕戦で非常に厳しい負け方をしたあと、この1週間はどういうところに特にフォーカスして準備をされてきたのでしょうか?
「今週は雨が降るという想定の下、そういう準備もちゃんとできていましたし、キックが多くなるというのも理解してゲームプランを組んでいました。ラグビー自体にはそこまで変化はあまり加えていないのですが、チームの一体感やハドルのときに誰が明確にしゃべるのか、そのしゃべっている人の話を聞こうということなど、一体感をすごく意識して挑みました。
それと、メンバー外の選手が、ブレイクダウンや、ディフェンスラインのプレッシャーなどで静岡BRの良い絵を見せてくれたので、僕たちもそのプレッシャーを練習の中で常に感じながら、いい準備ができたと思っています」
──この前の試合で「リーチ マイケル選手に頼り過ぎだった」とおっしゃっていましたが、そのリーダーシップについて特に松永選手が心がけたことや良くなったことはどういうところですか。
「リーダーシップというところで特別何か変化を加えることは、いますぐできるようなことはないですけど、先ほども言ったように一体感というところはすごく大切にしました。ハドルになったときに『これがどう、これがどう』とたくさんしゃべりたい選手もいますし、しゃべっている人に対して聞いてない選手もいます。そういうのをなくしたくて、ハドルを組んだらしゃべっている人の目を見よう。しゃべる人は明確なことを言って、次に挑もうと。だから今日の試合で特に意識したところは、一体感です。何か時間があればすぐハドルを組んで、やることを明確にして、次に挑む。そういうところは意識して練習から取り組みました」



























