NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン1 第16節(リーグ戦)カンファレンスB
2026年4月25日(土)14:30 スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場) (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 54-21 三重ホンダヒート
すべてはこのときのため。待ち続けた男が残した爪痕
その瞬間は、本人が予期していたよりも早いタイミングで訪れた。4月25日、スピアーズえどりくフィールドでの三重ホンダヒート(以下、三重H)戦。前半26分にスクラムハーフの藤原忍が負傷。代わってピッチに入ったのが、数十分後にはこの日の主役となる岡田一平だった。公式戦出場は、じつに3年ぶりとなる。
「いつか出番は来る、いつかは来ると思いながら続けてきました。辞めずにやり続けてきたことが、やっと出番につながりました」
試合前の取材で、岡田はそう語っていた。だが、そこに漂っていたのは悲壮感ではない。むしろ、どこか肩の力の抜けた明るさと、彼らしいユーモアだった。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイきってのムードメーカー。それがチームにおける自分の役割だと、岡田は考える。そして、そのスタンスは2023年にブーツを脱いだ“先代のムードメーカー”、4年先輩のスクラムハーフ、井上大介から受け継いだものでもある。
「大介さんはチームの中での存在感がすごく大きくて、明るいキャラクターを意識せずに自然に作り上げられる人でした。そこは自分にはマネできない部分です。ただ、同じにはなれなくても、チームの中で元気を与えられるような存在にはなりたいと思っています」
練習試合でも40分以上プレーし続けることは、ここ数年はなかった。それでも常に80分出る準備は続けてきた。練習試合も“ただの試合”として流すのではなく、自分の課題と向き合う場として捉える。出場機会のない時間さえも、「試合の一部」として積み重ねてきた。
だからこそ、想定より早いタイミングでの投入にも戸惑いはなかった。「サプライズではあったけど、準備はできていました」という言葉に、これまで積み重ねてきた時間が凝縮されていた。
ピッチに立てば必ず爪痕を刻む、ミラクル請負人でもある。前半最後のプレーでは自らトライを決め、後半29分には三重Hが追い上げをみせる中、江良颯からパスを受けると、そのままトライゾーンへ。重くなりかけていた流れを断ち切った。フィールドでも、岡田はムードメーカーであり続けた。
2020年2月2日、佐賀での宗像サニックスブルース戦。前半21分、スクラムハーフでありながらウイングの岩佐賢人と交替する形でピッチに入った岡田は、後半38分、左サイドを切り裂いてトライを奪い、役割を全うした。それ以来、6年ぶりとなるトライ。試合後、その存在感はプレーヤー・オブ・ザ・マッチという形で証明された。
「練習試合や日々のトレーニングで積み重ねてきたことを出すだけだと思っていました。(藤原)忍や谷口(和洋)たちと一緒に練習して、そこで学んだことに自分なりのプラスアルファを加え、自分のこだわりであるフィジカルの部分でも引かずにプレーできたと思います」
報道陣に囲まれた岡田に、バーナード・フォーリーが「よ、スーパースター!」と声を掛けた。「まあ、僕はいじられキャラでいいですよ、はい」と、岡田は表情を崩した。陽気な笑顔がオレンジの陽の光に溶け、春のやわらかな風が、その頬をそっとなでていた。
(藤本かずまさ)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケ ヘッドコーチ(右)、マキシ ファウルア キャプテンクボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「今日の結果を得るためには、明らかにハードワークが必要でした。最後の10分間で4トライを挙げたことを考えると、三重ホンダヒート(以下、三重H)さんが最後まであきらめなかったことが分かりますし、私たちは忍耐強くハードワークを続けなければなりませんでした。今日の選手たちの大きな努力をとても誇りに思っています。
そして、オレンジアーミー(S東京ベイのファンの呼称)のみなさんは、私たちにさらなる手足を与えてくれるような存在です。チームを本当によくサポートしてくれて、日本中を旅して応援に駆け付けてくれます。えどりくでの試合は久しぶりだったので、多くのサポーターやファンがチームを応援してくれる光景を見ることができてうれしく思います」
──久しぶりの公式戦出場となった岡田一平選手の評価を聞かせてください。
「彼はこれまでS東京ベイ一筋で、常にハードワークを続け、必ずしもすべてのチャンスを得られたわけではありませんでしたが、決して立ち止まりませんでした。それはまさにクボタスピリットの象徴のようなものです。彼はハードワークを続け、今日チャンスをつかみ、それを生かしました。彼は本当によくプレーしたと思いますし、彼が登場した際の選手たちや周囲の歓声を聞けば、いかに彼が支持されているか分かったでしょう。そのことを本当にうれしく思います」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
マキシ ファウルア キャプテン
「今日もたくさんのオレンジアーミーのみなさんが会場に来て、熱狂的に応援していただいて本当に感謝しております。本当にタフな試合でしたし、週の初めにタフな試合になることを全員が理解していた上で、いい準備ができました。今日は、その準備が結果につながったと思います。本当に三重Hさんのフィジカルは強かったですし、自分たちにとってはいいチャレンジだったと思いますし、勝ち切れたことが一番良かったです。もちろん、反省するところもありますし、そこはチームで見直して、次の試合に向けて準備したいと思います」
──試合中、厳しい場面で我慢できたと感じた部分、良かったと思う部分を教えてください。
「三重Hさんの大きなフォワード陣に対して、自分たちはフィジカルの部分で勝負するというテーマをもっていました。それが、自分たちのディフェンスの我慢強さや、コネクションの部分を出すことにつながりました。今日はそうした、いい形がたくさんできていたと思います。何フェーズ重ねられても、しっかりと我慢強くディフェンスし切れたことが、良かった点だと考えています」
三重ホンダヒート
三重ホンダヒートのキアラン・クローリー ヘッドコーチ(左)、ワイマナ・カパ キャプテン三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ
「明らかに選手たちにとっては厳しい1日となりました。前半、ハンドリングや正確性に欠ける部分があり、自分たちの首を絞めてしまったと感じています。ハーフタイム直前、オフサイドやレッグリフトのペナルティを与えてしまい、そこから追加で7失点したことが大きな打撃となりました。後半は30対21まで追い上げ、自分たちのペースに戻せた場面もありました。チャンスも何度かありましたが、それを決め切ることができず、最後の7、8分で相手に数本のトライを許し、スコアを広げられてしまいました。選手たちの努力は誇りに思いますし、残りの数試合に向けて積み上げていける手ごたえは得られました」
──互角に渡り合えるシーンもあったかと思います。何が一番勝敗を分けたと感じましたか。
「S東京ベイはこのリーグで最もフィジカルが強いチームの一つです。今日は彼らに対して、非常にうまく立ち向かえたと思っています。勝敗を分けたのは、明らかに前半の精度の差であり、それが後半にも少し影響してしまいました。そこが両チームの最大の差だったと思います。彼らはチャンスを確実にモノにしましたが、私たちはそれができませんでした」
三重ホンダヒート
ワイマナ・カパ キャプテン
「キアラン(・クローリー ヘッドコーチ)が言ったように、自分たちのミスが原因だと思います。前半に少し簡単にアクセルを緩めてしまった部分がありました。試合を立て直そうと頑張りましたが、S東京ベイさんのような強力なチームを相手に、簡単に逃げ道を与えてはいけません。彼らはスキのないトライを連続して決め、そうなってしまうと私たちにとっては苦しい展開になります。もちろん悔しい結果ですが、まだ2試合残っています。勝利を目指して前を向きたいと思います」
──久しぶりの出場となりましたが、どんな思いでグラウンドに入りましたか。
「ただただ楽しみでした。もちろん、点差が開いた厳しい状況での復帰でしたが、個人的には第4節以来の試合でしたし、そのときも相手はS東京ベイさんでした。コンディションがとても良い状態であることに感謝していますし、この調子を残りの数週間につなげていければと思っています」



























