NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第7節
2026年2月28日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス 22-14 NECグリーンロケッツ東葛
受け取ったバトンを次代の選手たちへ。マリティノ・ネマニが秘める“継承への思い”
ディビジョン2の折り返しとなる第7節。清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)は、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)を22対14で破り、連敗を2で止めた。昨季からの昇格組として挑み続けてきた中で、その“挑戦者”という立場から一歩踏み出し、“D2で戦えるチーム”としての確かな成長を示した勝利だった。
その中心にいたのは、今季GR東葛から江東BSへと移籍したマリティノ・ネマニだろう。試合後には、古巣へのリスペクトを込めて控えめな言葉で語ってくれた。
「古巣ということで複雑な気持ちもありました。ただ、江東BSの一員として歴史を作れるようにしっかり準備して、この試合に貢献できたことをすごくうれしく思っています」
誇示するでもなく、勝利を強調するでもない。そこにあったのは、育ててもらったクラブへの敬意だった。
ネマニの日本でのキャリアは、GR東葛へ加入した2017年から始まった。「GR東葛のおかげで日本に来られた」と言い切るほど、その恩義は深い。「最初は先輩の選手がたくさんいて、日本のやり方や文化を本当にたくさん教えてもらいました」。ラグビーの技術だけでなく、食事や時間の使い方、仲間との距離の縮め方。オフフィールドで築く関係性が、ピッチでの信頼につながることを学んだ。
恩があるからこそ、中途半端なプレーは許されない。「勝つために何ができるかだけを考えていた」という言葉どおり、彼はこの日、誰よりも泥臭く体を張り続けた。感謝と勝負は矛盾しない。むしろ、相手をリスペクトしているからこそ、全力でぶつかり、倒しにいく。それがプロとしての、そして一人の人間としての彼なりの「恩返し」だった。
今季、江東BSへの移籍を決断した理由もまた、人とのつながりだった。江東BSには吉廣広征ヘッドコーチ兼マーケティングリーダー、権丈太郎フォワードコーチ、宮本誉久フォワードコーチ兼アナリストといった、かつてGR東葛で苦楽をともにした面々がそろっている。「日本に初めて来たときに吉廣さんにすごくお世話になりました。それからずっとその関係性だったので、江東BSで吉廣さんがヘッドコーチをしていることを知ったときは、それが決め手になったというか、恩返ししたいと思って移籍してきました」。キャリアの選択肢はほかにもあったはずだが、それでも彼は“人”で道を選んだ。前述のメンバー全員の名前を挙げ、「江東BSを代表して戦い、ともに勝てたことが幸せ」と語った。
そしていま、彼は“若い”チームの中で使命を感じている。「自分の経験をどれだけ江東BSに引き継げるか。引退するまでに全部落とし込めたらと思っています」。かつて先輩たちから受け取ったバトンを、今度は江東BSの次世代へと渡す。それが彼のミッションだ。
ラグビーは数値や戦術だけで決まるものではない。人と人が紡いできたボールを、一歩前に進める競技だ。そうした「誰かのために」という強さが、時にチームの歴史も動かす。この勝利は、ただの勢いではない。人と人の思いが積み重なった、チームの確かな現在地だ。
(奥田明日美)
清水建設江東ブルーシャークス
清水建設江東ブルーシャークスの吉廣広征ヘッドコーチ兼マーケティングリーダー(左)、マリティノ・ネマニ バイスキャプテン清水建設江東ブルーシャークス
吉廣広征ヘッドコーチ兼マーケティングリーダー
「まず、この試合に関わってくださったすべての皆さまに感謝申し上げます。
個人的には古巣戦ということで気持ちは入りましたが、自分たちの目標を達成するためにチームとして連敗を止めなければいけないというプレッシャーがありました。個人的な感情よりも、『チームとしてどう勝つか』にフォーカスして戦いました」
──ヘッドコーチとしてではなく、個人として古巣に勝った率直な気持ちはいかがですか。
「まずは100%清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)のヘッドコーチとして勝てたことがうれしい、というのが正直な気持ちです。
一方で、『もっとできた部分があった』『もっと実力を出せた』という反省もあります。その中で勝ち切れたことは非常に良かったと思っています。
個人的には、まだ知っている後輩もプレーしていますし、試合後に彼らの表情を見ると複雑な思いもあります。ただ、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)にとっても何かを変えるきっかけになればと思いますし、最後に取り切るといったところに実力を感じたので、1カ月後にまた対戦する際は、さらに激しい試合になると思っています。そこも楽しみにしています」
清水建設江東ブルーシャークス
マリティノ・ネマニ バイスキャプテン
「もちろん古巣との対戦ということで複雑な気持ちはありました。GR東葛のおかげで日本に来ることができ、日本でプレーできているという感謝もあります。ただ、江東BSの一員として歴史を作るために準備してきましたし、この試合で貢献できたことを嬉しく思っています」
──移籍1年目で古巣戦に勝利した気持ちを教えてください。
「江東BSは、自分がGR東葛にいたころから年々強くなっていると感じていました。GR東葛で過ごした時間は自分のキャリアの大きな部分を占めていますが、いまは江東BSの一員として、できることをすべてやって貢献したいという思いでプレーしています」
NECグリーンロケッツ東葛
NECグリーンロケッツ東葛のグレッグ・クーパー ヘッドコーチ(右)、ローリー・アーノルド キャプテンNECグリーンロケッツ東葛
グレッグ・クーパー ヘッドコーチ
「まずは江東BSを祝福することから始めたいと思います。非常にコミットメントの高い試合を展開していました。
本日の試合は、われわれとしては遂行力が足りなかったと感じています。アタックで用意していたオプションを出し切ることができずに終わってしまいました。チャンスはありましたが、効率性に欠けていたと思います。フィールドポゼッションやボールポゼッションの面では十分な時間を得ていたと感じています。しかし、規律を欠いた局面があり、その規律のなさが本来得られたはずのチャンスをモノにできなかった要因になりました。結果的に点数を重ねることにフォーカスしながら戦いましたが、ディフェンスでも相手を止め切れず、3トライを許しました。特に許すべきではない場面で簡単に許してしまったことは大きな課題です。精度に欠けた試合だったと感じています。ショートウィークで準備期間は短かったものの、準備自体は良い形でできていました。それだけに残念です。この試合をしっかり分析し、学び、次に生かしていくだけだと思っています」
──遂行力や精度に欠けた原因は何だったと考えていますか。
「要因としては大きく二つあると思います。一つ目は、江東BS側がディフェンスをとおして強いプレッシャーを掛けてきたことです。二つ目は、アタックの中で正しいオプションを選択できなかったことです。相手ディフェンスの弱みを突くための選択をする必要がありましたが、それができなかった局面が多かったと思います」
NECグリーンロケッツ東葛
ローリー・アーノルド キャプテン
「まずは江東BSを称えたいと思います。相手のパフォーマンスがより良かったことが勝敗を分けた、シンプルな結果だったと思います。クーパー ヘッドコーチも言及していましたが、GR東葛としては遂行力に欠けていたことが敗因としてあると思います。スコアは22対14でクロースゲームでしたが、その中であったチャンスを得点に変えられなかったことが残念です。その要因としては、やはり規律の問題があったと感じています。試合前から規律の重要性について話していましたが、ソフトなプレーになってしまい、いくつかのエラーを起こしてしまいました。それは自分たちのスタンダードではないからこそ、残念に感じています。この試合をしっかりレビューし、準備を整え、次節の日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)戦で勝利できるよう取り組んでいきたいと思います」
──シーズン後半戦に向けての意気込みをお願いします。
「今日勝つことができなかったことは純粋に残念です。ただ、自分たちのベストを発揮できなかったことをまず受け止める必要があります。ハードにレビューを行い、それぞれが責任をもつべき部分に向き合うこと。選手・スタッフ全員が1%ずつでも成長できれば、必ずチームは良くなります。1週間ごとのプロセスで改善し、日野RD戦で勝利をつかみたいと思います。その自信は十分にあります」



























