NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第10節
2026年4月4日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス 36-20 日野レッドドルフィンズ
海風を受け入れ、使いこなす。熟知する夢の島での戦い方
キックで得点を重ね、トライでも試合を動かす。今節、その両方で勝利に直結する働きを見せたのがビリー・バーンズだった。
今季から清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)に加入したバーンズは、スムーズにチームに適応し、安定して出場を重ねている。この試合ではチーム36得点のうち11得点を記録。後半12分には自らトライを奪い、コンバージョンキックも成功させて逆転を演出した。文句なしの活躍で、今季2度目のプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(以下、POTM)に選ばれた。
印象的だったのは、トライシーンだ。雨で濡れたピッチを利用し、相手を背負いながらスライディングでトライラインを越えた。状況を瞬時に判断し、「滑れば届く」と判断したプレーだった。しかし試合後、本人の自己評価は厳しい。
「キッキングとしては全然良くなかった。むしろ最悪なぐらいでした」
実際、コンバージョンキックは6本中3本を外している。ただ、この日のコンディションは公式記録に『雨一時強く降る/強風』とあるように、決して簡単ではなかった。
さらに、この試合が行われた江東区夢の島競技場は、海に近い埋立地に位置し、周囲に遮るものが少ない。海から吹き込む風の影響を強く受ける、キッカー泣かせのスタジアムだ。それでも、このスタジアムをホストスタジアムとして戦う以上、「風をどう扱うか」が勝敗を左右する。バーンズはその前提でプレーしている。
「フォワードの体力を無駄に使わせないように、どのエリアでプレーするかを考えてキックを選択しています。こういう天候ではミスも起きるので、特にキックは工夫しました」
ただゴールを狙うだけではない。チーム全体の消耗を抑え、試合をコントロールするためのキック。そこに、彼のゲーム理解の高さが表れている。そして、このスタジアムの“難しさ”は、見方を変えれば強みにもなる。
「このスタジアムで勝つのは難しい、と相手に思わせたい」
ただ勝つのではなく、“ここでは勝てない”と思わせる場所にすること。それが、バーンズの考える江東BSの“ホストスタジアム”だ。この日、競技場の芝生席には桜が咲き誇り、遠くには東京スカイツリーが見えた。開放的な景色と、強い風。その両方が、この場所の特徴なのだ。
「初めてプレーしたときは、少し見とれてしまうくらいでした。このスタジアムと、このファンの前でプレーできるのは本当にうれしいです」
変えられない環境を嘆くのではなく、受け入れ、使いこなす。その積み重ねが、やがて“ホストスタジアムでの強さ”になる。ビリー・バーンズの見据えるネクストステージは、単なる個人の目標ではない。ディビジョン2で現在3位。D1/D2入替戦を目指す江東BSにとって、「ホストスタジアムで着実に勝つ力」は必須だろう。クセのあるホストスタジアムをどう勝利につなげるか。そのヒントが、この一戦に、そしてPOTMの言葉に詰まっていた。
(奥田明日美)
清水建設江東ブルーシャークス
清水建設江東ブルーシャークスの仁木啓裕監督兼チームディレクター(左)、野村三四郎バイスキャプテン清水建設江東ブルーシャークス
仁木啓裕 監督兼チームディレクター
「まず、本試合開催にあたりご尽力いただいた関係者の皆さまに御礼申し上げます。雨風が厳しい、ピッチ上の雨や水がある中で素晴らしいコンディションに整えていただきました。本日の試合は、まさに『勝つか負けるか』で今後の入替戦の争いにも大きく関わる一戦だったと捉えています。その中で勝利し、ボーナスポイントまで獲得できたことは、チームの成長を実感できた試合でした。前半は風下で、課題の多い内容でしたが、昨季であればそのまま崩れていた展開を、後半にしっかり立て直して勝ち切れたことは、チームを含めて全員の確かな前進だと感じています。ありがとうございました」
──前半はリードを許す展開となりましたが、ハーフタイムはどのような声掛けを行いましたか。
「前半は、風もある中で相手の勢いを受けてしまった場面が多かったと思いますし、日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)さんは勢いに乗ると非常に力を発揮するチームなので、その流れに乗せてしまうとああいう展開になるだろうと、ある程度想定していたとおりの前半だったと思います。実は木曜日の練習でも、選手たちは一生懸命やっていたのですが、何が悪いというわけではないものの、私自身は少し"たるみ"のようなものを感じていました。"3位のわれわれと最下位の日野RD"、という見られ方の中で、うまくモチベーションをもっていけていないように見えた部分があったので、そのときも厳しい声を掛けました。ハーフタイムでは、過去を振り返ってももう戻らないので、『この40分にすべてを懸けよう』という声を掛けました」
清水建設江東ブルーシャークス
野村三四郎バイスキャプテン
「本日は雨と風の厳しいコンディションの中、素晴らしい会場を準備していただきありがとうございました。試合としては、前半に相手の勢いを受けてしまったことが大きな反省点です。本来はそこに対抗していくプランでしたが、受けに回ってしまいました。ただ、その中でも後半にしっかり得点を重ね、逆転勝利につなげられたことは良かった点です。D1/D2入替戦(の進出)にもつなげられたと思います。とはいえ、改善すべき部分は多くあります。次戦に向けて、この1週間でしっかり積み上げていきたいと思います。本日はありがとうございました」
──特に後半は、スクラムで圧倒できたように見えましたが手ごたえはいかがでしたか。
「試合前からセットピース、特にスクラムがカギになると考えていました。特にスクラムは増えるだろうと思っていました。チームとしてそこでプレッシャーを掛ければ優位になるという考えで、そうしたプランだったのですが、前半は受けてしまい、流れを相手に渡してしまいました。それがプロップの間での共通認識でした。後半の最初のスクラムは『ここで流れを変える』という強い意識で臨み、自分たちが積み上げてきたものを出し切ろうとした場面でした。スクラムの流れから逆転につながったことは素直にうれしいです」
日野レッドドルフィンズ
日野レッドドルフィンズの苑田右二ヘッドコーチ(左)、谷口永遠選手日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ
「本日は、雨風の強いコンディションではありましたが、素晴らしい雰囲気の中で試合ができたことに感謝いたします。われわれとしては、今日は雨風が強いということは天気予報を見て想定して、今週は天候を踏まえた戦い方を準備してきましたが、前半はその想定どおりにゲームを進めることができました。しかし後半は、セットピースの局面でプレッシャーを受け、自分たちがボールを保持する時間が減ってしまい、相手にチャンスを与える場面が増えてしまいました。この点は改善していかなければならないと考えています。一方で、風のある中での、風下、風上での戦い方については、少しずつ良い面も出てきています。そうした部分は自信に変えながら、自分たちの課題を修正し、次の試合に臨んでいきたいと思います」
──前半に得点を重ねたことは戦術どおりでしょうか、それとも流れによるものでしょうか。
「ここ数試合、風の強い試合が続いていたこともあり、その中での戦い方には慣れてきていました。今週は、相手ゴール前5mに入った際には、雨風でフェーズを重ねるとミスが多くなることも想定してフォワードで確実にゴールを目指そうという方針をもっていました。前半はそれがうまく機能しましたが、前半・後半それぞれで取り切るべき場面を逃してしまいました。そこを決め切れていれば、試合展開は変わっていたと思います。ただ、自分たちがやろうとしている形を遂行できた場面もあったので、それは一つの成長だと捉えています。そういう場面を増やして目指すべき姿に近づいていきたいと思います」
日野レッドドルフィンズ
谷口永遠選手 (中鹿駿キャプテンはコンディション調整のため不在)
「前半は自分たちのペースで良いラグビーができていましたが、後半の入りで相手のプレッシャーを受けてしまい、そのまま流れをもっていかれてしまったと感じています。また、後半に相手ゴール前まで攻め込んだ場面で取り切ることができなかったことが、結果的に大きなポイントだったと思います。あの場面は、20対26だったと記憶しているのですが、そこでスコアできていれば試合展開は変わっていたと思います。さらに、セットピースでプレッシャーを受けたことで自分たちのボール保持時間が短くなり、防御の時間が長くなった中で最終的に相手に振り切られてしまいました。次に向けては、セットピースの精度を高めてボール保持の時間を増やすこと、そしてゴール前で確実に取り切ることを意識して取り組んでいきたいと思います」
──前半のフォワードの優位性は今後につながる要素でしょうか。
「今週は、フィジカルバトルの部分でボールが入ったら低くまとまって前進することをテーマに取り組んできました。その部分がしっかり発揮できて、スコアにつながったことは大きな収穫です。自信にもつながりますし、次の花園近鉄ライナーズ戦もフィジカルが強く大きな相手ですが、その部分でしっかり戦い、姿勢が高くなると身長の部分で優位性はないので、低く強く前進するラグビーを継続していきたいと思います」



























