NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第14節
2026年5月11日(月)19:00 ヤンマースタジアム長居 (大阪府)
レッドハリケーンズ大阪 5-42 NECグリーンロケッツ東葛
いつまでもそこに変わらずあり続けるもの。区切りを迎えても歴史は紡がれていく
この試合、レッドハリケーンズ大阪は、NECグリーンロケッツ東葛をホストチームと同等のものとして迎え入れることを決め、準備していた今季のリーグワンレギュラーシーズン最後の試合となった、5月11日の月曜ナイター。今季限りでNECからJR東日本へと譲渡されることが決まっていたNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)にとっては、40年の歴史に一つの区切りを迎える最後の80分だった。レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)は、“NEC”としての最後の試合をまるで自分のことのように大切に捉え、これまでの感謝を表してさまざまな演出を準備したヤンマースタジアム長居にビジターチームを迎え入れた。
ロースコアで動いていたゲームの最中、GR東葛がラインブレイクした決定的なシーンで、小林恵太の手からボールが滑り落ちるシーンがあった。場内の大型ビジョンに映し出されたリプレー映像で印象深かったのは、倒れ込んだ小林がとびきりの笑顔だったことだ。ビッグチャンスで「やってしまった」と思っていることも、「勝ってなければ笑って話せなかったけれど、あの瞬間は楽しんでいた」ことも、ありありと伝わってくる表情だった。仰向けで倒れていた小林の左手をチームメートの藤井達哉、右手をRH大阪の島田久満がとり、彼らもまた笑顔で小林を起こした。その一幕は、見ている側にも残りの時間もラグビーを楽しみたいと思わせるだけの力があった。
そのまま走り抜ければトライかという場面でノックフォワード。NECグリーンロケッツ東葛の小林恵太選手RH大阪がGR東葛のために準備していた演出などへの感謝も含め、小林はあらためて「試合では敵であっても、ラグビーを一緒にやっている仲間の絆というか。ラグビーをやっていて良かった」と感じたと話す。「お互いに本気で体を当ててやっているからこそ、そこにリスペクトも生まれますし、試合が終われば一緒にラグビーをやっている仲間。そうした部分は、観客の方たちにも楽しんでもらえるキラキラした魅力なのかな、と思います」。
ラグビーの5つのコアバリューである品位、情熱、結束、規律、尊重と、互いの健闘を称え合うノーサイドの精神。それらは、たくさんあるルールを覚えなくとも老若男女問わず感じ取ることができるものだ。それらが根底にあるからこそ、ラグビーの試合では、対戦相手のファン同士が隣り合って座ることもできる。試合前には場外のスタジアムグルメを楽しみ、スタジアムに到着したバスから降りてくるチームを期待の込もった声援で迎え入れる。試合が始まればグラウンドで起こる事象に熱中して歓声を上げ、試合が終わればグラウンドを1周してくれる選手たちに手を振り、その1日を振り返りながら帰路に着く。ラグビーという競技を通じて得られる体験が、いかに「キラキラした」ものであるのかをあらためて感じさせる1日だった。
諸行無常は、世の理だ。一定の状態でとどまるものはなく、あらゆるものが変化していく。ラグビーそのものも、そして5シーズン目を迎えたリーグワンも、そこにいる人たちにも、それぞれに変化がある。
けれど、そこで「血と汗と涙を流してきた」(ニック・フィップス)事実や、そこまでつないできた歴史と、根幹となる精神はいつまでも変わらずそこにある。
そこでラグビーができた喜び、そこでのラグビー体験で出会えた感動や驚き、幸せ。それら一つひとつが幾重にも重なり、それぞれの歴史は紡がれてゆく。
(前田カオリ)
レッドハリケーンズ大阪
レッドハリケーンズ大阪の松川功ヘッドコーチ(右)、島田久満キャプテンレッドハリケーンズ大阪
松川功ヘッドコーチ
「開催にあたりまして、協会の皆さま、レフリーの皆さま、ありがとうございました。また、月曜日の夜の開催にもかかわらず、お忙しい中お集まりいただいた皆さま、ありがとうございました。そして、われわれも協力させてもらいながら"NECグリーンロケッツ東葛"さんの最後の試合をともにできたことを本当に良かったと感じています。
試合については、シーズン最後の試合でしたので、このシーズンで培ってきたものをすべて出し切ろうと臨みました。前半はわれわれの強みを出すことはできたと思いますが、後半はGR東葛さんの勢いを止めることができず、差が出てしまいました。シーズンを通じて良かった部分と悪かった部分がこの試合に出てしまったと感じています。今日の試合で出た課題は、来季に向けて修正していきたいと考えています。今回は若手の選手も多く出場しましたが、われわれの財産となる良い経験をさせていただくことができました。悔しさを糧に、来季はさらに成長していけるよう頑張ろうと試合後の円陣で誓ってきたところです。本日もありがとうございました」
──"NECグリーンロケッツ東葛"に、どのような印象をおもちでしたか。
「僕の学生時代は、NECさんの強さは光っていました。箕内(拓郎アシスタントコーチ)さんがキャプテンとしてチームの象徴となっていたころです。本当にすごいゲームをずっとされていました。ディフェンスが粘り強く、崩れずに相手にプレッシャーを掛け続け、スコアをもぎ取る。僕たちの戦い方にも通ずるところがあるかもしれませんが、ディフェンスのタフさや規律面など、相手として本当にイヤだったなという印象があります。そうした部分は、われわれも見習っていきます」
レッドハリケーンズ大阪
島田久満キャプテン
「月曜の夜にもかかわらず、本当に多くの方に駆け付けていただきました。今季も大きな声援をいただけたことは本当にうれしかったですし、チームの力になりました。
『今までやってきたことをしっかり出し切ろう』と今日の試合に向けて1週間準備してきました。前半は、やってきたことがしっかりとつながり、自分たちの形で得点することもできました。後半は、ミスが重なり、自分たちの弱さが出たと感じています。今季の悔しさを忘れず、来季につなげていきます。本日はありがとうございました」
──対戦相手は、"NECグリーンロケッツ東葛"としての最後の試合でした。
「僕たちもチーム再編がありましたので、先が見えずにつらく苦しい時間がありました。NECさんも同じような思いをされた時期があったのではないかと思うので、(JR東日本に譲渡されて)来季もまた戦えることをうれしく思っています。
小学生のころ、観客席に投げ入れてくれたサイン入りボールを初めてキャッチできたのがこのヤンマースタジアム長居で観戦した試合で、瀧澤直選手のものでした。そんな思い出深いNECさんの最後の試合をこの場所でともに戦えたことは本当に光栄でしたし、これからもともに戦えることを楽しみにしています」
NECグリーンロケッツ東葛
NECグリーンロケッツ東葛のグレッグ・クーパー ヘッドコーチ(右)、ニック・フィップス バイスキャプテンNECグリーンロケッツ東葛
グレッグ・クーパー ヘッドコーチ
「まず、レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)の皆さまに感謝を伝えさせてください。"NECグリーンロケッツ東葛"の最後の試合をこれほどまでに称え、試合を行ってくださいました。これは本当に特別なことです。私たちが受けた盛大な歓迎は、とても、とても、有り難いことでした。"NECグリーンロケッツ東葛"一同、心より感謝申し上げます。
また、"NECグリーンロケッツ東葛"ファンのみなさんも、ホストタウンの千葉県東葛エリアやそのほかの場所から駆け付けてくださいました。ビジターゲームでも変わらぬサポートをしてくださったこと、心より感謝しています。
試合については、前半はRH大阪さんがしっかりとこちらにプレッシャーを掛けてきたと感じました。素晴らしいキッキングゲームとラックのプレッシャーから、私たちに主導権を渡さず、RH大阪さんがコントロールする状況を作り出していたと思います。ハーフタイムには、相手のディフェンスに対してもっとダイレクトにアタックしていくこと、ボールをキープして相手のディフェンスを開いていこうという話をしました。後半は、それをうまく反映してくれました」
──セレモニーや挨拶が終わったあとも、チームのそれぞれがグラウンド上で話をし、グラウンドから出るのを惜しんでいるようにも見えました。何を感じていましたか。
「私自身の話をすると、NECでコーチとして働き始めたのが2008年でした。それから6〜7シーズンほど務め、今季からまたNECへと戻ってきました。会見に来る前に話をしてきましたが、箕内(拓郎アシスタントコーチ/RH大阪)は、私がコーチをしていたころは選手でした。そうしたことをはじめ、私にとって本当にたくさんの良い思い出があるチームが、"NECグリーンロケッツ東葛"です。数日経てば実感が湧くのかもしれませんが、これで終わりだということがまだ信じられないような不思議な感覚があります。けれど、最後の日を勝利で終えられたことは素晴らしいことでした」
NECグリーンロケッツ東葛
ニック・フィップス バイスキャプテン
「(クーパー ヘッドコーチが総括で話したことに)これ以上付け加える必要はないのかもしれませんが、選手たちの間では、『先人が築いてきてくれた40年間を引き継ぐ試合になる』ということを話していました。ファンのみなさんにとっても、NECという企業にとっても、選手・スタッフにとっても、特別なものにしたいと思って臨んだのが今日の試合でした。クーパー ヘッドコーチも同意してくれると思いますが、その結びにふさわしい素晴らしい試合ができたと思いますし、それをとても誇りに思います。チームとして望んでいた形でシーズンを終えることはできませんでしたが、どんなときでも100%の力を尽くしたチームのみんなのこともまた、誇りに思っています。
NECを代表するチームとして戦うのは、今日の試合が最後となりました。ただ、ご存じのとおり、来季からは本当に素晴らしい譲渡先となってくださったJR東日本を代表するチームとなります。私たちは、JR東日本のチームとして戦える次のシーズンを心から楽しみにしています」
──セレモニーや挨拶が終わったあとも、チーム全体がグラウンドから出るのを名残惜しいと感じているように見えました。あのときの心境を教えてください。
「おっしゃるとおり、グラウンドから出ることをためらうような感覚は、全員にあったと思います。チームの長い歴史に比べれば、私たち選手・スタッフのほとんどは"NECグリーンロケッツ東葛"に所属している時間は長くはありません。それでも、この胸にNECという名が刻まれたジャージーを着て、血と汗と涙を流しながらチームのために毎日トレーニングを重ねてきました。私たちにとって胸にNECと刻まれたこのジャージーは特別なものですし、そこに特別な思い出も数多くありますが、一つの時代を終えます。(歴史に比べれば)短い時間ではありましたが、私たちもまた"NECグリーンロケッツ東葛"の誇りを重ねられるチームとなれていたことを願っています」



























