NTTジャパンラグビー リーグワン2025ー26
プレーオフトーナメント決勝
2026年6月7日(日)15:05 MUFGスタジアム(国立競技場) (東京都)
コベルコ神戸スティーラーズ 22-13 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
大輪を咲かせた“レニー・スティーラーズ”の濃密な3年間。最高の歓喜とともに、ここに完結
NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26チャンピオンは、コベルコ神戸スティーラーズコベルコ神戸スティーラーズが、悲願のリーグワン初制覇を飾った。試合終了のホイッスルが鳴ると、選手たちはその場で抱擁を交わし、大泣きする。目の前の戦いに集中した80分、そのすべてから解放されるような感情の爆発。誰もが歓喜と興奮に酔いしれた。
ただ、それは同時に一つの終わりを意味した。3シーズン指揮を執ったデイブ・レニー ディレクターオブラグビー/ヘッドコーチは今季限りで退任し、オールブラックスことニュージーランド代表のヘッドコーチに職場を変える。
今季のベストフィフティーン(フランカー)とベストタックラー(D1)を受賞したティエナン・コストリーは「悲しい」と率直だ。レニー氏のほか、ダン・マクファーランド フォワードコーチらコーチ陣も退任する。「コーチングスタッフが本当に頑張ってくれた」と感謝を口にした25歳は「教わった基本のところは、これからも絶対に続けていきたい」と自らの成長を促した数々の“師”に誓う。
ティエナン・コストリー選手は、デイブ・レニー氏以下コーチングスタッフの功績を讃えた長く3番で研鑽を積んできた前田翔は昨季、レニー氏の助言を経て1番に挑戦。この決勝戦も後半19分からその左プロップに入り、自らの役割をやり切った。
「(レニー氏は)発言がブレず、芯がある。一貫して同じことを言い続けていましたし、選手としてはすごくやりやすかった。チャレンジする機会をもらえたことに本当に感謝しています」
レニー氏が率いて以降、前年の9位から5位、3位、1位と着実に順位を上げた。前田翔との入替でフィールドをあとにした1番、髙尾時流は「ブレイクダウンの“容赦なさ”。そこでどれだけプレッシャーを掛けられるかは3年間ずっと言われてきました」と話す。選手たちに一貫性を要求する指揮官は、自らの哲学も貫きとおした。
その髙尾はこの3シーズン、先発51回、リザーブ6回の計57回と、レニー氏が率いたリーグワンの公式戦全試合に出場する偉業を遂げた。まさにレニー氏の“秘蔵っ子”とも呼べる彼は、この3年を自らの財産のように言葉にした。
「いい選手がいる中で、自分を選んでもらえました。求められている仕事ができているのかなという自信にもなりました。この3年間、本当に出場機会も増えて、いい成長ができたと思っています。感謝でいっぱいです」
最後の公式会見に臨んだレニー氏は言った。チームを去る自身も、コーチ陣も、「チームへの愛がある」。そして、これからにエールを贈る。
「チームを去ったとしても、このチームの成功を願っています。来季以降も素晴らしい成果を収めてくれることを願っています」
選手もスタッフもそれぞれが色彩豊かな大輪を咲かせた、あまりにも濃密な3シーズン。唯一無二の最高の歓喜とともに、レニー・スティーラーズが堂々完結した。
(小野慶太)
「ラグビーは32歳から」。あきらめない気持ちが切り拓いた、終わったはずのストーリー
3年間公式戦出場無しから決勝戦に9番で出場──映画や小説なら「出来過ぎ」と言われてしまうくらいのストーリーを描いてしまったクボタスピアーズ船橋・東京ベイの岡田一平選手後半5分、岡田一平はピッチの上でコベルコ神戸スティーラーズのキャプテン、ブロディ・レタリックと胸ぐらをつかみ合っていた。身長差は約40cm。見上げるほどの相手を前にしても、一歩も引かなかった。試合後、決勝という舞台がそうさせたのかと問うと、彼は少し表情を崩して首をひねった。
「分からないです」
後半5分の場面、コベルコ神戸スティーラーズのレタリック共同キャプテン相手に強気の姿勢で挑んだ岡田選手一度は、終わったはずだった。岡田の名前はクボタスピアーズ船橋・東京ベイの来季の構想から外れていた。その事実を知らされたのは、第13節・東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)戦が行われた週のことだ。
最後に戦った公式戦から、約3年もの月日が流れていたタイミングだった。もっとラグビーを続けたい。しかし、納得せざるを得ない結果がそこにはあった。年齢は今年で32歳。岡田はそれを静かに受け入れ、家族と親しい友人にだけ、その事実を伝えた。
ところが、そのBL東京戦で同じスクラムハーフの谷口和洋が負傷したことで、運命は思わぬ方向へ転がり出す。
岡田が公式戦のピッチに再び、立つことになったのはレギュラーシーズン終盤の第16節・三重ホンダヒート戦。藤原忍の欠場を受け、第17節のリコーブラックラムズ東京戦からは9番を背負った。終わるはずだったシーズンが、続くことになった。緊張感やプレッシャーがなかったと言えば、ウソになる。
「ナード(バーナード・フォーリー)やショーン(・スティーブンソン)と一緒にプレーして、たくさんミスもしましたし、たくさん怒られました。でも、うまくいったときはすごく褒めてくれる。そういう経験が、自分を吹っ切らせてくれた要因でもあります。ルア(マキシ ファウルア)もキャプテンとして、本当に手厚くサポートしてくれました。すごく助けられました」
退団リストに名前があったことは、正式発表までチームメートには伝えないつもりだった。だが、気が付くと、なぜかみんな知っていた。
それでも、そのことには誰一人触れてこなかったという。本人は「知っているんだったらイジってくれよ」と冗談交じりに語るも、仲間たちの何気ない言葉やサポートには、別の意味も込められていたのかもしれない。
たどり着いた決勝の舞台。ノーサイドの瞬間、MUFGスタジアム(国立競技場)には歓喜の涙と悔し涙があふれていた。半年間、身を削り、すべてを懸けて戦い続けても、最後に笑えるのはたった1チームしかない。ただ、そんな無慈悲な戦いの中でしか、浮かんでこないものもある。
「練習試合では経験できないものがたくさんありました。この期間でいろいろなものを得ることができたので、それを来季につなげていきたいです。でも、もっと頑張らなあかんと思います。トップレベルのスクラムハーフとしては、まだまだ全然、足りないと思っています」
このシーズン、岡田が頻繁に口にしていた言葉がある。公式戦から離れていた間、どうやってモチベーションを維持していたのか。取材陣からそう聞かれるたびに、岡田は「あきらめたらそこで終わりですから」と答えていた。
「あきらめない」──。その言葉は、時に美しく響く。だが、勝負の世界は、その思いだけですべてを救ってくれるほど優しくはない。それでも、あきらめなかった時間が未来をつなぐこともある。
「ラグビーは32歳からです」
右目を腫らしたまま、岡田一平はそう笑った。また会おう、この場所で──。
(藤本かずまさ)
コベルコ神戸スティーラーズ
コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ
「クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)さんは前半、本当に素晴らしいパフォーマンスでした。試合の序盤から自分たちに対してプレッシャーを掛ける状況を作られましたが、それに対するわれわれのディフェンスは素晴らしかったと思います。前半はそれだけプレッシャーを受けながらも13対13で乗り越えられたのは、自分たちのチームとしてのキャラクターを見せられたということだったかなと思います。後半はしっかりと自分たちのパフォーマンスを上げることができたと思いますが、逆にS東京ベイさんはディフェンスの部分で素晴らしいパフォーマンスを見せて自分たちが(スコアを)取り切ることができない状況を作ったと思います。その中でも、しっかりとボールを持ち続けて、自分たちのパフォーマンスの精度を上げることができたことによって、おそらく3つだったと思いますけど、ペナルティゴールを決め切ることができ、勝ち切ることができたと思います。今日の試合に関しては本当にタフな試合で、2チームがフィジカリティー、激しさを出した、そういった試合だったと思います」
──誰もがコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)の復活を待ち望んでいたと思います。神戸Sのファン、スティールメイツへの思いを教えてください。
「スティールメイツの方々のサポートは、本当に素晴らしいものだったと思います。神戸Sのファンの方たちが、毎回、東京まで試合を観に来ることは簡単な努力ではないと思います。ただ、どの遠征会場に行こうと、常に自分たちのファンが会場にいてくれました。
今日の試合に関しては、自分たちは本来、前を見ながらどんどんプレーしていく、トライをたくさん取るようなチームだと思いますけど、それを今日はできませんでした。その中でも、しっかりとファイトし続けて、しんどい状況でもどれだけもう一段階レベルアップしてファイトし続けられるか、そういう姿勢を見せられたこと。その部分でファンの方々に一番、喜んでもらえたらなと思います」
コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック共同キャプテン
「決勝という名にふさわしい試合だったと思います。フィジカリティーが高く、モメンタムや流れが互いに行き来する試合だったと思います。前半に関してはS東京ベイさんから非常にプレッシャーを受ける場面も多かったです。後半、ボールを持っている際には自分たちはしっかりといいプレーをすることができ、ペナルティをもらえる状況も増えたと思います。セットピースに関しても、スクラム、ラインアウトの両方とも後半は素晴らしい内容を出せたと思います。個人の能力も含めて、ターンオーバーを奪うことができ、その部分で後半はしっかりとプレーし切ることができました」
──シーズンをとおして規律の部分、ペナルティはチームの課題だったと思いますが、そこが今日は少なかった印象です。その理由を教えてください。
「ここ2~3シーズンの自分たちの課題でした。ただ、オフサイドや、ノットロールアウェイができていない際にスティールを狙ってファイトしに行ってペナルティを与えてしまうことなど、リーグ戦の最終節くらいから特に自分たちの中で簡単にペナルティをしない意識付けが非常にうまくできたと思います。どこで特にペナルティを与えないようにすべきなのかを意識して、ペナルティを簡単に相手に与えないようにしようという意識をもてた結果かなと思います」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケ ヘッドコーチ(右)、マキシ ファウルア キャプテンクボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「本当に素晴らしい戦いでしたし、このような特別な舞台に立てたことも非常に光栄です。決勝というのは常に特別なものです。前半は自分たちがゲームをコントロールできていると感じていましたし、チャンスも得点につなげられていました。しかし、後半は一つか二つの小さな、そして、大きな瞬間に左右されましたが、残念ながらそれをモノにすることができませんでした。決勝とは往々にしてそういうものです。
しかし、選手たちのパフォーマンス、特に22mライン内でのディフェンスからチャンスを作ろうとした姿勢は本当に誇りに思います。ここから学び、より準備を整えて戻ってきます。選手全員のパフォーマンスを非常に誇りに思っています」
──想定よりも相手が上回った部分はどんなところでしたか。
「確かに後半、彼らはボールを保持してプレッシャーを掛けてきました。そこが両チームの差でした。ブレイクダウンの攻防で負け、多くのペナルティを犯し、自陣に釘付けにされました。しかし、接戦でしたし、われわれは毎回立て直し、プレーを止めることはありませんでした。
ただ、大きな瞬間が二つあります。一つはモールです。(ペナルティゴールで)3点を狙うこともできましたが、コーナーへのキックを選択しました。そこがわれわれの勝機でしたが、(得点機会を)失ってしまいました。本来、モールやフォワードプレーはわれわれの強みです。もう一つは22mライン内、トライライン際でのチャンスでしたが、そこでまたペナルティを犯しました。
後半は前半のようにボールを保持してプレッシャーを掛け続けることができず、ペナルティを献上して自陣に押し込まれてしまいました。神戸Sさんを称えたいと思います。彼らは素晴らしいプレーをし、勝つにふさわしかったですし、良いチームでした。それが決勝という舞台です。後悔はありません」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
マキシ ファウルア キャプテン
「今日の試合に関しては、いまは本当に悔しい気持ちがあります。うまく言葉にできないですが、本当にチーム、仲間を誇りに思います。全員が本当にハードワークしてきて、結果は(優勝には)届きませんでしたが、ここまで来ることができ、チームメートには今日はやり切ったということを伝えたいです。
これがラグビーです。決勝は本当にタフな舞台ですし、フラン ヘッドコーチが言ったように、今日は本当にいい競争ができました。前半は本当に自分たちらしい、S東京ベイらしいラグビーができたと思います。後半に関しては、規律の部分で自分たちにプレッシャーを掛けてしまったので、そこが課題だと感じています」
──試合全体をとおして、相手のフィジカルの感触はいかがでしたか。
「お互いに、フィジカルの部分はいい競争ができたと思います。自分たちは自信をもってフィジカルで勝負しようと、今週ずっと準備してきました。それが試合で実践できたことはポジティブに受け止めています」




























