2023.02.07NTTリーグワン2022-23 D2 第5節レポート(三重H 46-24 S愛知)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2 第5節
2023年2月5日(日)14:30 三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 サッカー・ラグビー場 (三重県)
三重ホンダヒート 46-24 豊田自動織機シャトルズ愛知

三重Hが暫定首位に。「1%」にもこだわった後半、成長示す逆転劇

ゲームキャプテンとしてチームを牽引、フランコ・モスタート選手

シーズンも折り返しとなる第5節。ディビジョン2、2位の三重ホンダヒート(以下、三重H)の前半戦最後の相手は、3位の豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)であった。前半、立ち上がりから圧力を掛けてきたS愛知が主導権を握り、一時は3対24と一方的な試合となった。しかし、次第に攻守のリズムを取り戻した三重Hが反撃、じわじわと点差を詰め、後半14分に逆転した。S愛知に後半は1点も与えず、最終的に46対24と完勝した。これで三重Hは4連勝、暫定ながらディビジョン2の首位に躍り出た。

S愛知の徳野洋一ヘッドコーチが「速い出足でプレッシャーを掛けていく」と語ったとおり、序盤から相手の出足は鋭かった。三重Hは、得意のフォワードでのラインアウト勝負へ向かおうとするものの、数多くあったS愛知のラインアウトをまったくスティールすることができず、モールで押し負けるシーンもあった。バックスもパスミス、ジャッジミスが増え、ペナルティは前半、2つのS愛知に対し、7つも起こしていた。フォワード、バックスがバラバラとなり、ともに精彩を欠いた。三重H「らしくない」プレーを繰り返していた。

ただし、それは、攻守の要であるフランカー、パブロ・マテーラがいきなり前半4分にイエローカードをもらい、14人でのプレーを強いられたこと、コイントスであえて前半は、風下側のエリアを選択したことにも起因する。つまり、前半は我慢の時間であることは分かっていた。

さらに、前半の終盤になるとS愛知の意図が読めてきた。この日、ゲームキャプテンを務めたロックのフランコ・モスタートは、激しいプレッシャーへの対応策、こちらのラインアウトが分析されていること、S愛知がモールに自信を持っていることを察知した。「いいラインアウト、モールを持つチームが、こちらを分析した上でプランをぶつけてくることに対し、改善の余地があった」とゲーム後、語っている。

前半35分、S愛知のロングボールを自陣でキャッチした三重Hのフルバック、トム・バンクスは、キックではなくランニング、ボールを回していくことを選択。そこを起点に流れるようにフォワードとバックスが連動。トライへとつなげ、反撃の狼煙は上がった。

「流れがこちらへ来なかった前半に対して、後半は各セクションが、プレーの微細な部分を1%でも向上させようとした」と、絶大なるキャプテンシーを持つフランコ・モスタートは話す。チームの司令塔であるスタンドオフのケイレブ・トラスクも「後半、フォワードが前に出ていけるようになったので、積極的にボールをワイドに回していくことが効果的だと判断した。それが勝利へとつながった」と言う。結果、後半は4トライ4ゴール1ペナルティゴール、ディフェンスではS愛知の攻撃をシャットアウトした。

これまでになくワイドにボールを回すなど、グラウンドの中で、ゲームプランを変更し、ゲーム内でフォワードとバックスが連携を取り戻した。試合前、三重Hの上田泰平ヘッドコーチは「開幕からここまでのチームの成長を測るゲーム」とこの試合を位置づけた。今季初出場の選手が3人、ベテランと若手が融合し、ホストゲームとしては2試合連続の逆転勝ち。その成長が、いたるところに垣間見えるゲームとなった。

(小崎仁久)

三重ホンダヒート

三重ホンダヒート
上田泰平ヘッドコーチ

三重ホンダヒートの上田泰平ヘッドコーチ

「皆さんお疲れ様です。ホストゲームということでこちらに戻ってきて、天気もいい中、お客さんも前回よりも少しずつ増えてきている中で、こういった素晴らしい自分たちのラグビーというのを見せることができて、とても幸せです。

試合は、前半、少し苦しめられたところがあったのですが、ウチとしては、風、環境がとても悪い中、我慢して、ボールを持たない時間でも自分たちのラグビーをやることがしっかりとできたと思います。最初にペナルティでイエローカードが出たのですが、あの辺りはいま、どちらかのテクニカルな事象で、どちらが悪いのかというのをクリアにしようとしているところだと思っています。いまの時点では、あれを受け入れて、自分たちができるテクニックの改善をしっかりとやっていこうと思います。

ただ、そういった中でも前半、頑張って耐えて、選手たちが自分たちでゲームプランをコントロールしながら進めてくれたということが、三重ホンダヒートとしてはとても成長を感じて、選手を誇りに思います」

──前半、なかなかリズムがつかめなかったのは、相手のプレッシャーが強かったのか、こちらのミスによるものなのか、どちらの要素のほうが大きかったのでしょうか?

「風の影響が大きかったのかなと思っています。風の影響でパスが浮いているということ。もう一つは、おそらく気持ちがちょっと先行し過ぎたところがあったと思います。そこでランナーのプレーヤーたちが、少し浅くなってしまってタイミングが合わなかった。そういったところがミスを起こした原因としてはっきりとしています。ですから、どちらかというと相手のプレッシャーを受けていたということよりも、攻め急ぎ過ぎて、自分たちがやろうとしていることができなかったということが大きいと思います」

──後半は、ボールをワイドに横へ回すことで攻撃のリズムが出たように見えました。縦へのアタックよりも、ボールを回すことのほうが効果的という判断だったのでしょうか?

「横に回していましたね、僕は縦に行けって言ったんですけど(笑)。ただ、縦に行くプレーヤーが効果的に相手を寄せられているということで、いい判断ができて外に回したことはとても良かったと思います。最終的にやりたいことは、スペースにアタックしていくことです。それがしっかりと実行できているので、自分たちのリズムができているということです」

三重ホンダヒート
フランコ・モスタート ゲームキャプテン

三重ホンダヒートのフランコ・モスタート ゲームキャプテン

「まず、このような形で勝ててとてもうれしいです。あのような強いチームに対して、いいパフォーマンスができたということを、とてもハッピーに思っています」

──前半、こちらのストロングポイントであるラインアウトで優位に立てませんでしたが、どう感じていましたか?

「前半は、マイボールラインアウトが2本しかなかったと思います。一つはモールになりましたが、そのチャンスを得たときに、しっかりとモールを活用できるように、もっとやっていかないといけない、改善できる余地があると思いました。特に、相手のチームがいいラインアウト、いいモールを武器として持っているときに、われわれに対して分析をした上で、そのプランをぶつけてくることがあると思うので、それに対してしっかりとした対応ができないといけないと思いました」

三重ホンダヒート
ケイレブ・トラスク選手

三重ホンダヒートのケイレブ・トラスク選手

──前半苦しめられましたが、後半、逆転ができました。ヘッドコーチから具体的な指示が選手のみなさんに出たのでしょうか?

「豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)がとても頑張っていたと思いますし、プレーも良かったと思います。もちろん、われわれはもっといいプレーができたと思いますが、小さなことを変えることによって、相手を上回ることが最終的にできたという流れがありました。同時に試合を通じて、やはり風が大きな要素だったと思います。セカンドハーフは風上でプレーをできることになり、よりそれが有利に働いたのは間違いないと思います」

──前半の良くない状況は、相手のプレッシャーが強かったのか、こちらのミスによるものなのか、どちらの要素のほうが大きかったのでしょうか?

「前半はS愛知がとても良かったと思います。ヘッドコーチが言ったように、ウチのほうが、少し気持ちが先行してしまったことは間違いないと思います。前半の最後の10分間は、もう一度、われわれは基本に忠実にプレーするように心がけて、それがおそらく功を奏したと思っています。それを、セカンドハーフも続けてプレーすることができたというのが勝利した大きな要因だと思います」

豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ

「本日はこの素晴らしい環境の中で、天候にも恵まれ、たくさんのファンの方々に応援いただく中で試合ができたことにつきまして、三重ホンダヒート(以下、三重H)の関係者の方々にこの場をお借りして御礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。

ゲームとしては、最終スコアが物語るとおり完敗。すっきりと完敗したという印象です。ありがとうございました」

──前半をリードして折り返しましたが、試合に対して準備してうまくいったことはどのようなところですか?

「接点、コリジョンの部分で、しっかり戦うということと、あとは、しっかりテリトリーをコントロールしていくこと。そういったゲームの大きな方針の中で、そこはうまくコントロールできたのかなと思います」

──前半の終盤から後半にかけて、相手に主導権を握られてしまった要因はどこにあると考えますか?

「コリジョンの部分で少し受けに回ってしまったということと、キックカウンターから、三重Hさんの素晴らしいキャラクターを持つ選手に、ダイナミックに走るスペースを与えてしまったことが、モメンタムを奪われてしまった要因かなと思っています」

──小寺晴大選手と、途中で入った尾池亨允選手が負傷交代したところで、チームが自信を持っているスクラムが組めなかったことが、痛かったところでしょうか?

「われわれは、スクラムを自分たちのラグビーを表現する上で、とても大事なパーツだと思っています。それがなかったということで、スクラムファンの皆さんを非常にがっかりさせてしまったと申し訳なく思っています。少しアンラッキーもあり、もちろん、三重Hの選手も故意にコンタクトしたわけではないので、そこはラグビーをやる上で仕方のない事象が立て続けに起こったということです。そこはどうしようもできない部分ですので、ノーコンテストはノーコンテストとしてルールの中でやっていくことは、うまくアジャストできたのではないかと思います」

──三重Hに対して、攻守ともにかなりプレッシャーをかけることができたというのはプランどおりだったということでしょうか?

「そうですね。今日のメンバーを見ていただければ分かりますが、われわれは4人の外国人選手以外は、日本人選手で23名のラインアップを作っています。特に、若くキャリアの浅い選手が、たくさん出場していることもあり、三重Hさんのフィジカルの部分は、脅威になると思っていました。その部分では、速い出足でプレッシャーをかけるということは、特に意識して試合に臨みました。それを今日は少し表現することはできたかなと思います」

──そのプレッシャーをかけることが、後半まで続けられなかったということなのでしょうか?

「はい。そうですね。もちろん後半ももう一度、スイッチを切り替えてプレッシャーをかけるということをハーフタイムに話したのですが、やはり相手のコンタクトのプレッシャー、そしてキャラクターのあるランナーに走られてしまいました。そういったところが、前半のラスト15分から後半の40分間、少し受けに回ってしまった要因かなと思います」

──この試合は、勝てば順位が上に上がれるという重要なゲームだったと思います。三重Hに対してかなり分析を行いましたか?

「毎試合、分析を行う中で、三重Hさんに対して特別な分析をしたということはありません。この試合で順位が入れ替わる大切な試合だということは、もちろんそうですが、10試合あるうちの一つの試合という位置づけです。特に大きな準備を、強弱つけてやっているわけではなく、いつもどおりでした」

豊田自動織機シャトルズ愛知
清水晶大ゲームキャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知の清水晶大ゲームキャプテン

「本日は素晴らしい環境でプレーさせていただきありがとうございました。

前半は、自分たちのプランどおりに進めることができ、スコアのとおり勝って折り返すことができました。しかし後半、コンタクトのバトルというところで負けてしまって、自分たちのプランどおりに進めることができずに、最後に逆転という形で負けてしまいました。これで終わりではないので、次に向けてしっかり切り替えてやるしかないので、次は勝てるように、しっかり修正していきたいと思います」

──テリトリーを取るところ、キックで陣地を回復してからディフェンスしていくところは、キックの本数も増え、これまでの試合とは変わったように見えました。そこは試合のプランの中にあった部分ですか?

「もちろんです。あまり詳しくは言えないのですが、しっかりとした分析のとおりに、チームのプランとしては、キックを使いながら、プレーしていこうというところは前半、うまくいきました。後半は風下になってしまって、キックが前半のようにあまり使えず、プラスアルファとして、ラインアウトのミスであったり、こちらがアタックを仕掛けた時のキャリーのミスであったりというところが、やはり後手になってしまった原因なのかなと思います」

──劣勢に立つ中でも、集中が切れずにプレーを続けたこと、終盤の小笠原寛人選手が、キックオフから一気に抜け出したところなど、ポジティブに捉えることのできる部分は多々あったと思います。次の浦安D-Rocks(以下、浦安DR)戦に向け、チーム内でどのような話し合いをされましたか?

「この負けを絶対に無駄にしないようにしたいと思います。次節の浦安DR には前回、完敗していますので、まずフィジカルバトル、コリジョンバトルのところで絶対に引かずに、バトルをし続けて、80分間、試合をコントロールできるように、しっかり2週間、3週間かけていい準備をしていきたいと思います」

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