2023.02.19NTTリーグワン2022-23 D1 第8節レポート(トヨタV 21-18 GR東葛)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第8節
2023年2月18日(土)14:30 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
トヨタヴェルブリッツ 21-18 NECグリーンロケッツ東葛

喪章を付けて臨んだ試合。苦しみながらもつかんだ勝ち点4

ゲーム終盤、好判断で逆転トライを決めたトヨタヴェルブリッツの福田健太選手

シーズンの折り返しとなるNTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1第8節。後半戦に巻き返しを図りたいチーム同士の対戦は、トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)がNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)を逆転で下した。

二つの本能のトライがチームを救った。序盤から押し込みながらもミスでトライを決め切れなかったトヨタVは、GR東葛に10得点を許し、前半を終えようとしていた。

しかし40分、ウイングのヴィリアメ・ツイドラキのブレイクからチャンスを作ると、最後は同じくウイングの髙橋汰地が激しいタックルを受けながらボールを右スミに抑え込む。ジャンプした体はタッチラインを割っていたが、右手とボールはしっかりとインゴールに残していた。

「とっさだったのでよく覚えていないですけど、ウイングとしてあそこはトライを取り切ることが大事だったので良かったです」(髙橋)

コンバージョンキックも決めて3点差で折り返したトヨタVは、髙橋の素晴らしいトライの勢いに乗って後半すぐに逆転に成功した。

だが、その後、突き放すことができずに再びGR東葛にリードを許してしまう。

それでも後半35分、この日、後半途中からの登場となっていたスクラムハーフの福田健太が起死回生の逆転トライを決める。こちらも交代出場のフェツアニ・ラウタイミのブレイクをきっかけに敵陣深くまで攻め込むと、福田はスクラムハーフとして果敢に勝負をしかけた。

「トライの前にバハ(フェツアミ・ラウタイミ)がいいキャリーをしてくれた。ビッグゲインをしたあとは、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)の周りにギャップが起きやすいので、そこは僕自身もいつも意識しているところ。極論を言うと、パスをして相手が出てくるよりも、9番が行くのが一番簡単なことなので」(福田)

この試合は、“トヨタラグビー”ばかりか、日本ラグビーにとっても大きな功績を残した豊田章一郎トヨタ自動車名誉会長を偲んで、喪章を付けて臨んでいたトヨタVフィフティーン。

「僕たちはトヨタという名前を背負ってプレーしているわけなので、情けない試合はできないですし、これまでなかなか勝利を届けられていなかったので、しっかりと勝ち切れたのは良かったと思います」(福田)

絶対に負けられなかった試合で、苦しみながらもトヨタVは勝ち点『4』を積み重ねた。

(斎藤孝一)

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツ
ベン・へリング ヘッドコーチ

トヨタヴェルブリッツ(D1 カンファレンスA)のベン・へリング ヘッドコーチ

「フィールドで試合が終わった後に話をしましたが、私個人としてはすごくフラストレーションを感じた試合でした。結果としては勝利ということでいいのですが、われわれのプレーしたいレベルでプレーできたと思っていません。これからチームのスキルを改善していくためにも、取り組まないといけないことがたくさんあると思っています。いまの自分の気持ちとしては、フィフティフィフティの状態で、われわれのスタンダードとしてのプレーは達成できていないと感じています。もちろん表面上は勝者ですが、課題は多く、そこに対してハードに向き合っていきたいと思っています」

──今日はスクラムハーフで茂野海人選手が先発、福田健太選手が交代出場でした。その意図を教えてください。

「2人ともすごくいい選手です。今日の試合に関しては、ゲームをドライブしてほしいという指示を出しました。特にエリアに関して、そして、どこでプレーするかという点においてです。NECグリーンロケッツ東葛にプレッシャーを掛けるという指示を出した中で、キックゲームを使いましたが悪くないパフォーマンスだったと思います」

──延山敏和選手がデビュー戦でしたが、その評価はいかがですか?

「今日は彼にとって大きなチャレンジだったと思います。その中で80分間プレーするという点で、彼のフィジカル、準備というところが試されたと思います。彼には今後も成長の余地があり、チームでもすごく前向きで、周りからも好かれている選手ですので、このゲームが今後の彼の経験の糧になることを願っています」

トヨタヴェルブリッツ
ピーターステフ・デュトイ ゲームキャプテン

トヨタヴェルブリッツのピーターステフ・デュトイ ゲームキャプテン

「まず、われわれ自身にプレッシャーを掛けてしまった、そういう試合だったと思っています。特にディシプリン(規律)のところ、敵陣でプレーしようと思っていたところで、うまくテリトリーをコントロールできず、ペナルティを重ねてしまった結果、相手にトライを取られてしまいました。今後のフォーカスポイントとしては、ラインアウト、特に前半の部分で課題を感じています。思っていたほどプランが機能しなかったと感じています」

──前半終了直後にレフリーとコミュニケーションを取っていましたが、どんな話をしていたのでしょうか?

「それぞれの判断について話をしました。自分としてはペナルティではないと感じる部分があった中で、そのうちの一つについてレフリーも賛同したということもあり、もちろんレフリーをリスペクトしないといけない部分はありますが、チームの声を聞いてほしいと感じる部分もありました」

──次の試合に向けて、課題は?

「ディシプリンの点だと思っています。過去の数試合でも感じていたことで、敵にプレッシャーを掛けて敵陣でプレーできているんですけど、そこでペナルティでボールを失って簡単に脱出されているように感じています。なので、次の試合はディシプリンがフォーカスポイントになると思います」

NECグリーンロケッツ東葛

NECグリーンロケッツ東葛
ロバート・テイラー ヘッドコーチ

NECグリーンロケッツ東葛(D1 カンファレンスB)のロバート・テイラー ヘッドコーチ

「まずはサポーターの方々に『ありがとう』と感謝を伝えたいと思います。そして、トヨタヴェルブリッツの勝利おめでとうございます。今日の選手たちは、ここ最近いい結果を得られていないこともあり、そのモチベーションでベストの準備をすることは結構難しいことでもあったんですけど、今日の試合では良いところもあったので、そこは本当に褒めてあげたいと思いました。今日のキツい試合、本当に残念な結果の中で学んだことも多かったので、それをぜひ次の試合につなげていきたいと思います」

──1週間休みがありました。どんなことをテーマに調整をしましたか?

「一旦、基本に立ち戻ることをまず考えたということが一つと、その基本の中でもちろん、役割という点においても、しっかりとみんなが把握をしていて、クリアになっているかというところ。もう一度、そこをフォーカスしました」

──力は出せたと思いますが、勝ち切るために必要なものはなんでしょうか?

「レビューをしないとハッキリしたことは言えないですが、前半、後半ともにもうちょっとキックをするべきだったのかなというところと、相手陣内でプレーすることを増やす。それと、いつラン、パス、キックをするのか。その判断を的確にすることだと思います」

NECグリーンロケッツ東葛
レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン

NECグリーンロケッツ東葛のレメキ ロマノ ラヴァ キャプテン

「とてもいい試合でした。お互いにめっちゃいいチャンスを作れていたけど、やっぱりトヨタヴェルブリッツはチャンスを作った時にトライにまで持っていった。うちは何回も良いところまでいったけど、結局取り切れなかった。最後の杉本(悠馬)のところも、あれがトライまでいっていたら流れがだいぶ変わったと思います。負けがずっと続いて悔しいけど、それもいい経験、いい勉強になりました。来週は三菱重工相模原ダイナボアーズと試合があって、その試合も勝てるチャンスはあると思うので、いい準備をすれば、いつか結果につながると思います」

──1週間休みがありました。どんなことをテーマに調整をしましたか?

「出場時間の多い選手がめちゃめちゃいたし、ちゃんと体をリフレッシュして、今週に向けて今までとちょっと違うシェイプ(形)を練習してきました。今までの7試合を分析したら、自分たちの固有のシェイプとか、最初のポッド(攻撃戦術)をちゃんと止めれば、たぶんその後のアタックがなかなかできないので、今回ちょっと違うシェイプを練習してきました。勝ってはいないけど、うちのやりたいことはこの試合でいっぱいできたと思います」

──力は出せたと思いますが、勝ち切るために必要なものはなんでしょうか?

「ランをするべきときにキックすることもあった。もし、蹴るのであればラインをちゃんとコネクトしないとたぶんミスになる。2、3回は行けて、プレッシャーもあったけど、ディスコネクションを見抜かれました。フォワードはモールとかスクラムとかいろんな役割をやらないといけないから、できればバックスはもっと一気に蹴ってプレッシャーを掛けること。フォワードはたぶん疲れているし、そのときにミスも起こるから、もっとゲームをリードしないといけないと思います」

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