九州電力キューデンヴォルテクス(D3)
負傷中の外国籍選手が見せた行動。やるべきことをやる集団の強み
前節、ビジターゲームでクリタウォーターガッシュ昭島との一戦を制した九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)は5連勝を達成。首位で迎える今節は2位のNTTドコモレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)との首位攻防戦を戦う。九州全域をフレンドリーエリアとする九州KVだが、今節の舞台は鹿児島県の白波スタジアム。ホストエリアの福岡市を離れて、今季初のホストゲームとなる。
RH大阪とは開幕戦で対戦した。互角以上の試合内容を見せたが、ラストプレーで逆転を許し、悔しい敗戦を喫した。それでも、その一戦から学んだ課題と悔しさをバネにチームは成長。それ以降からいまも続く5連勝の原動力の一つとなった。あの悔しさを晴らすための機会が来たように思えるが、チームはいたって冷静に自分たちにフォーカスしている。赤間勝監督は「選手たちに伝えているのは『たまたま、このタイミングでRH大阪さんと対戦するというだけ。自分たちは一戦一戦、やるべきことを全員でやり続ける』ということ」と話す。萩原蓮も「開幕戦で負けた相手とはあまり意識し過ぎずに自分たちの強みを出すことに集中したい」と語った。ベクトルは自分たちに向いている。
自分たちのやるべきことをやる。この1カ月でもそれを感じさせるような光景がグラウンドにはあった。ある日の練習のこと。負傷で練習に参加できなかったフィル・バーリーだったがグラウンドに入り、チーム練習を行う仲間たちのすぐそばに立ち続けた。ゼイン・ヒルトン ヘッドコーチのコーチングも円陣の中で聞き、セッションの合間には自らが感じたことを仲間たちにアドバイスした。「コーチだけでは目が行き届かないところもあると思って、ディテールを見逃さないようにしていました。気づきがあれば、コーチ、選手に伝えましたし、そういう思いからの行動でした」。負傷中は休むことも仕事だが、やるべきことが何なのかをしっかりと考え、行動する。脳震とうで前節、出場できなかったトム・ロウもフィル・バーリーと同様の行動を見せていた。社員選手がほとんどのチームにおいて、プロ契約の外国籍選手もチームの和に則って行動できるのが九州KVの強さだろう。
それぞれがやるべきことにフォーカスできる九州KVの強みを鹿児島でも80分間、見せたとき、開幕戦で味わった悔しさはきっと晴れるはずだ。
(杉山文宣)
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪(D3)
大一番は、高校以来の地元の地で。特別な思いで臨む首位決戦
今節、九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)と対戦するNTTドコモレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)。現在の試合数は九州KVのほうが1試合多いが、互いに一つだけの黒星でここまで来ている。今節の結果がディビジョン3優勝争いへもたらす影響は、決して小さくはないだろう。
今節を今季の「大一番」の一つとした杉下暢キャプテンは、「前節で自分たちのアタック力に関しても自信を持つことができたので、ディフェンスがしっかりしている九州KVさんにもぶつけていきたい」と話している。また、マット・コベイン ヘッドコーチは「九州KVさんは良いチーム。しかし、相手がどうプレーしてきても、私たちは80分間エナジーを持ち続け、自分たちがやるべきことに集中して冷静に戦いたい」と語った。
今節の試合会場は、白波スタジアム。大事な一戦を鹿児島県内のスタジアムで戦えることに「とてもワクワクしている」と語ったのは、鹿児島県の出身の川向瑛だ。
小学1年生でラグビーを始め、鹿児島実業高校を卒業するまでは鹿児島県でプレーしてきた。高校卒業後は地元を離れたが、大東文化大学卒業後の2017年から在籍したクボタスピアーズ(現・クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)でも、20年から在籍しているRH大阪でも、鹿児島県内のグラウンドでプレーする機会はなかったという。
そうなれば、楽しみにしているのは自身だけではない。「九州北部での試合があったときも観に来てくれていた家族が、家から数十分の距離にあるスタジアムで観戦できることを喜んでくれていた。地元の友人たちも連絡をくれていて、試合を観に来てくれる」。これまで機会がなかった地元でのプレー。それを楽しみにしてくれている人がいることを「本当にうれしいですし、がんばります」と意気込む一方、妙に浮き足立つようなこともない。これまでどおり、「コーチが求める役割をしっかり果たす」ことにフォーカスしている。
前節こそ大きな点差がついた後半16分にグラウンドを去ったが、それまでの4試合にはフル出場。チームを支えてきた。自身にとっても、チームにとっても、「この試合で終わりではないので、この先にもつながるような試合」を鹿児島の地で見せたい。
(前田カオリ)