横浜キヤノンイーグルス(D1 カンファレンスB)

大分最終戦に向けてテンションは最高潮。合言葉は「遂行力」

横浜キヤノンイーグルスの安昌豪選手。先発での出場は今シーズン初めて

前節のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦に敗れた横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)は3位から4位に転落。今節の花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)戦は、前節の悔しい敗戦を払拭するためにも、是が非でも勝利が欲しい一戦だ。今節は早いもので、セカンダリーホストエリアである大分でのラストマッチを迎える。3月25日(土)14時キックオフ。会場はレゾナックドーム大分だ。

雨中の激闘となった前節。結果的に接戦を落とす形となったが、チームはすぐに次の試合に向けてファイティングポーズをとった。花園L戦に向けて、チーム内で共有した点は、“積み上げてきたことがゼロになるわけではない”ということ。順位を一つ落としたことに決して気を取られず、積み上げてきたものを発揮することに注力する意思を、チーム内で確認してきた。

なお、今節に向けたチーム内のスローガンは「遂行力」。今季初先発出場となる安昌豪は「個人個人に課せられた仕事を100%やり切ることに尽きる」と語気を強めた。また最前線で体を張る安は、チームの勝利に貢献するための自分のタスクについてはこう触れた。

「一番はスクラムで相手をドミネート(力で圧倒する)して、自分たちに流れを持っていく働きをすること。その他にはブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)やディフェンスなど、ワークレート(仕事量)の部分でも貢献したい」

安自身のタスクは多岐にわたるが、本人は「プロップのポジションと言えど、何でもしなければならない時代になっている」と話し、前向きに捉えている。すべてはチームの勝利のため。今節に向けたチーム内スローガンである「遂行力」を発揮するまで、だ。

こうして自分たちにベクトルを向けて準備を推し進めている横浜E。その眼前に立ちはだかる相手が花園Lだ。ビジターチームは今季未勝利だが、余計に「勝利へのハングリーさがある」(安)ことは否めない。気迫で後手に回れば、苦戦は免れないだけに、安はこう言い切った。

「リーグワン内に格差はないし、相手がどんなことをやってきてもそれを上回っていく」

大分最終戦に懸けるチームのテンションは、最高潮だ。

(郡司聡)

花園近鉄ライナーズ(D1 カンファレンスB)

自分のリハビリよりもチームの練習。
『クーパー効果』で初勝利をつかむ

コーチングスタッフとともに練習を見守る花園近鉄ライナーズのクウェイド・クーパー選手

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1で唯一、未だ勝利がなく最下位に喘ぐ花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)。前節は東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)に12対64で敗れ、試合後の会見で水間良武ヘッドコーチも「われわれは毎試合同じメンバーで戦えるだけの準備ができていなかった」と苦境を認めたが、チームは決して心を折っていない。

ディビジョン1昇格の立役者の一人だったオーストラリア代表のスタンドオフ、クウェイド・クーパーは左足アキレス腱断裂によるリハビリを母国で行なっていたが、3月14日に再来日。前節の東京SG戦もチームに帯同したクウェイド・クーパーの存在はチームの刺激になっている。3月23日に雨の中で行われた練習では、本来ならば自身のリハビリに専念したいはずのクウェイド・クーパーがピッチ内に立って、アドバイスを送り続けていた。

「彼がいると引き締まる。バックスの細かいランニングラインや、どこに当てるのかなど……。一発で取りに行くムーブとスペースを開けるアタックがありますが、ディテールをチームに落とし込んでくれています」と、キャプテンの野中翔平は世界的名手のアドバイスを歓迎する。

前節にリーグワン初キャップを飾り、いきなりトライも決めた19歳のヴィンセント・セフォはクウェイド・クーパーから直接受けるアドバイスに「ああいった世界レベルの選手からもらえるアドバイスはすごく貴重です」と目を輝かせる。2試合連続での先発起用となるヴィンセント・セフォを含めて、横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)戦では福井翔らアーリーエントリーの全5人がフィニッシャーとしてメンバー入り。恐れを知らない若い力とともに横浜Eとのビジターゲームに挑む。

もはや入替戦での生き残りが現実的な目標ではある花園Lだが、シーズン最終盤の戦線復帰を目指すクウェイド・クーパーのためにも、という思いがチーム内には芽生えている。

「本来ならけが人はリハビリで練習には出てこない。でも、クウェイド・クーパーは自分の睡眠時間を削って早朝に来てリハビリをして、そのあとに練習を見てくれています。キャプテンとして本当に感謝しています」(野中)

23日の練習後には、クウェイド・クーパーの声掛けで急きょ、バックス陣を集めたミーティングも実施された。「われわれのラグビーはこういうものだと教えるミーティングです」(クウェイド・クーパー)。未勝利の昇格組が一朝一夕で変わるはずもないが、横浜E相手に『クーパー効果」の一端が見られるか楽しみだ。

(下薗昌記)

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