三重ホンダヒート(D2)

昨季のリベンジへ。チーム、ファンは一丸となって昇格をつかみ取る

トライ後にガッツポーズのパブロ・マテーラ選手。三重ホンダヒートのワールドクラスの選手のひとりだ

5月5日12時、三重ホンダヒート(以下、三重H)はディビジョン1昇格を懸けた運命のキックオフを迎える。対戦相手はディビジョン1の11位・NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)。決戦の舞台は三重交通G スポーツの杜 鈴鹿サッカー・ラグビー場だ。

GR東葛とは昨季の入替戦でも対決している。第1戦は新型コロナの影響で10人近い選手が出場できず10対33で敗戦。第2戦は24対22で勝利したものの、勝ち点で上回れず昇格は叶わなかった。

ディビジョン1昇格を阻まれた因縁の相手との再戦に、おのずとチームの士気は高まっている。

「興奮している選手がすごく多い。大半の選手はGR東葛との対戦を経験しているので、昨季敗れた同じ相手にリベンジできることにすごく燃えている。一方で、今季新たに加わった選手は『ディビジョン1でやりたい』という気持ちで入団してきたと思うので、その目標を達成するという意味で入替戦を楽しみにしている」(ショーン・トレビー バックスコーチ)

悔しさから始まった今季は、入替戦にピークを合わせるために一戦一戦経験を積み重ねてきた。「多くのことをやり過ぎず、シンプルに戦うことが大事」と話すショーン・トレビー バックスコーチの言葉に、積み上げてきた準備への自信がにじむ。

「チームで戦うことにフォーカスしたい。ディフェンスではフィジカルを全面的に発揮すること。アタックに関してはアグレッシブに精度高くプレーすることと、スピード感を持ってしかけることがポイントになる。それらをきっちりと遂行できれば、相手に良いプレッシャーを掛けられるし、われわれにチャンスが訪れると考えています」(ショーン・トレビー バックスコーチ)

三重Hでは毎週一つの「マインドセット(テーマ)」を掲げて試合に臨む。それは入替戦でも同じだ。「選手たちは(練習から)忠実にその言葉を、体現していますし、それを試合でも発揮して、チームで戦うことが一番大事。われわれはフォワードにもバックスにも(ワールドクラスの選手がいるという)強みがあるので、それをチームとして全面的に発揮していきたい」(ショーン・トレビー バックスコーチ)と一つの言葉の下にチームの心は一つになっている。

「非常に大事な1戦目」を地元・鈴鹿でファンとともに戦えることも心強い。今季の三重Hは『地域共闘プロジェクト』と銘打ち、リーグ戦のホストゲーム5試合に合計1万5000人の県民を招待してきた。入替戦にはその中から先着3000人を再度招待。チーム、地域が一丸となってGR東葛を返り討ちにする構えだ。

(山田智子)


NECグリーンロケッツ東葛(D1)

立場を変えて、かつてのホームグラウンドへ。思いは一つ。このチームのために残留をつかみ取る

NECグリーンロケッツ東葛の尾又寛汰選手。入替戦の相手は昨シーズンまで在籍していた三重ホンダヒートとなった

奇しくも昨季の入替戦と同じ対戦カードになった。5月5日、三重交通G スポーツの杜 鈴鹿サッカー・ラグビー場で、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)は三重ホンダヒート(以下、三重H)とディビジョン1残留を懸けて入替戦第1戦に臨む。

この組み合わせは、尾又寛汰にとって真逆のシチュエーションになった。昨季は三重Hの選手として、ディビジョン1昇格を目指してGR東葛と戦った。尾又は古巣と対戦する心境を、こう言葉にした。

「会場に行ってみないと分からないですけど、昨季まではホームだったグラウンドで、自分がいたチームと戦うのは変な感じがします。でも、めちゃくちゃ楽しみですよ」

昨季まで在籍したチームだからこそ、三重Hのことは誰よりも理解している。「ディフェンスをすごく大事にしているチームなので、いかにそのディフェンスを崩していくかがキーポイント。外国人も含めて強い選手もそろっている」と尾又は警戒を強めた。

相手のディフェンスを破る上でも、尾又が「大きかった」と話すのが、NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1第16節の花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)戦の勝利である。この試合でGR東葛は、今季最多の43得点を挙げてリーグの最終戦を締めくくった。尾又が決めた逆転のトライを「みんながつないできてくれた理想的な形」と言うように、攻撃の良いイメージを持って入替戦を迎える。

そして何よりも尾又が強調したのが、チームが示した成長だ。

「昨季は最下位で終わったので、『一つでも順位を上げて成長した姿を見せよう』と、みんなで話していました。入替戦に進むことは、シーズン最初に望んでいた結果ではなかったですけど、最終戦で負けて最下位になってしまったら昨季と変わらない。勝っても負けても入替戦に行くことはもう決まっていましたけど、順位にこだわらないとファンの方にも申し訳ないし、チームでやってきたこともブレてしまう。リーグ最終戦では、チームの成長を見せられたと思います」

花園L戦の逆転トライだけでなく、第9節・三菱重工相模原ダイナボアーズ戦でも試合終了間際に勝利を手繰り寄せたのは尾又のトライだった。昨季は最下位に終わったGR東葛に、今季から加わった尾又は、チームに推進力と爆発力をもたらした。

その姿を、かつてのホームグラウンドで古巣にぶつける。GR東葛のディビジョン1残留のために。

(鈴木潤)

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