清水建設江東ブルーシャークス(D2)

すべてはD2残留のために。
同じ目的とベクトルで戦う“ラスト2試合”

フルバックで出場する清水建設江東ブルーシャークスの尾﨑達洋選手。「今季まだトライがないので、トライを決めたい」

不戦勝を除き、NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2で清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)が、今季唯一の勝利をつかんだ相手が釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)。その釜石SW相手に臨んだ順位決定戦は、10対38で敗れる悔しい結果となり、最終順位は5位に終わった。

「正直なところ、この(釜石SW戦の)負けはチームにとって非常に痛かった」と振り返った大隈隆明監督であったが、選手たちには、「下を向いてはいられない」と声を掛けた。

今季昇格したディビジョン2では、なかなか勝利を得られなかった。そんな状況でも選手たちは勝利を目指し、前向きにモチベーションを維持していたが、時にはそれぞれの意見がぶつかることもあったという。

順位決定戦を終え、大隈監督は、選手たちに問題提起をした。

「このチーム、みんなの目的は何か?」

思いや意見がぶつかることはあっても、それはチームを思っているからこそであり、最終的な目的は“ディビジョン2に残ること”。全員が同じ思いだと再確認した。

「同じ目的、同じベクトルで残りの2戦を戦おう」と選手たちに話した大隈監督は、「選手たちに助けられている」とも口にする。リーダー陣がチームを引っ張り、サラリーマンラガーマンとして残業時間を調整し、練習時間を確保。勝つために一人ひとりが工夫を凝らしている。

順位決定戦でチームMVPに選ばれた尾﨑達洋は、ピンチを防ぐタックルや思い切りの良いランニング、ハードワークなどでチームに貢献。大隈監督は尾﨑について、「プレーの安定感が増してきている。キャプテン経験もあり、チームを引っ張ってくれて非常に心強い。メンタル面も強く、さらに成長すれば今後トッププレーヤーになれる選手」と期待を寄せている。本職はフルバックだが、順位決定戦ではウイングで起用された。「ウイングとして絶対に相手に抜かれないことを徹底した。ただ、アタックでもう少しボールも持ちたかった。今季まだトライがないので、トライを決めたい」と、尾﨑は入替戦に意気込んでいる。

5月5日に控える入替戦第1戦は、ホストスタジアムである江東区夢の島競技場に、ディビジョン3・2位の九州電力キューデンヴォルテスク(以下、九州KV)を迎える。昨季の対戦成績は1勝1敗。九州KVを大隈監督は「非常にタフで80分間集中が切れないチーム。勝利への執念がプレーに表れているチーム」と分析している。

江東BSは“ファンと近い”ことが特徴。スタジアムに行くと、試合開始前からノンメンバーが、ブースの設営と運営をしている。選手自らがグッズを販売したり、体験ブースを運営して子供たちに声を掛けたり、ファンにとっては試合以外でも選手との特別な体験となる。そんなファンに勝利を届けたい入替戦。ディビジョン2に残るべく、負けられない一戦となる。

(山村耀)


九州電力キューデンヴォルテクス(D3)

「この緊張から逃げませんよ」。
九州KVのキャプテンは、笑顔で必勝を誓う

チームの先頭に立つ高井迪郎キャプテン。「良い意味でみんなを信頼して、チョックに助けてもらって入替戦の2週間を過ごそうかなと思います」

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3を2位で終えた九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)は目標達成への挑戦権を得た。5日14時30分から江東区夢の島競技場で清水建設江東ブルーシャークスとのディビジョン2/ディビジョン3入替戦第1戦に臨む。

自分たちの運命を決める重要な2週間。キャプテンの高井迪郎はナーバスになっていた。「いつも緊張はするけど、だいたいが試合前日か当日。それが(試合)3日前のいま、緊張しているんです」。通常よりも早いタイミングで訪れる緊張。それだけ入替戦という舞台が大きいものであることの表れだが、冷静になって自分自身と向き合うと緊張の理由が見え始める。

「自分も在籍が長いので、良かった時期とめちゃくちゃ苦しかった時期を知っている。その苦しかった時期を一緒に乗り越えた、同じ年代の選手たちがいまもチームに残っている。いま、ラグビーが楽しくなってきているし、少しずつですけどチームが良くなっているのを自分たちが一番分かっている。だからこそ、ここで結果を残すことが大事だという思いから(緊張が)来ているのかもしれない」

2012年に九州KVに入団したが、当時、チームはトップキュウシュウ所属。「若いから何でも言えていたのもあって、同期たちと『俺たちでトップリーグに昇格させようぜ』という話をしていました。でも、いざ、入社する直前にトップリーグ昇格を決めて。『上がっちゃったね』って笑い合ったのを覚えています」。怖いもの知らずの青年はいま、キャプテンとなり、その立場で3季目を迎えている。

在籍年数、キャプテンとして過ごす時間。それに比例してチームへの思い、責任感は増した。

「トップリーグを2年経験させてもらいましたけど、負けて結果はついてこなかったとしても下部リーグにいるのと日本最高峰にいるのとではまったく違った。それを経験しているからこそ若い選手たちにその雰囲気や経験を味わわせてあげたい。その時代を知っている選手が残っているからこそ、入替戦で勝つことに価値があるんじゃないかなと思っています」

1日の練習中、ゼイン・ヒルトン ヘッドコーチから声を掛けられた。「僕が緊張していたのがバレていたみたいで」と笑い、高井は続けた。「でも、おかげで『いつもどおり』が大事だなって、すっきりしました。良い意味でみんなを信頼して、チョック(ゼイン・ヒルトン ヘッドコーチの愛称)に助けてもらって入替戦の2週間を過ごそうかなと思います」。

「この緊張から逃げませんよ」。笑顔を見せる高井の言葉にはキャプテンとしての頼もしさが宿っていた。

(杉山文宣)

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