豊田自動織機シャトルズ愛知(D2)
夢を叶えるために──。頼れる大先輩と臨む大一番
4日、S愛知は所属選手1名が4月22日に、酒席において同じ飲食店にいた方にけがを負わせるという事案の発生を発表した。今週末と来週末に行われる入替戦については、参加辞退も考えたが、新たな決意で挑むS愛知をファンに見てもらうことの意義や、被害者の方の意向を踏まえて出場を希望し、リーグ側も通常どおり開催する判断を下した。
2018-2019シーズン後に当時のジャパンラグビー トップリーグからトップチャレンジリーグに降格して以降、初めて訪れたトップカテゴリー昇格のチャンス。S愛知にとって、この一戦は待望の瞬間だったと言っていい。入替戦が開催されなかったり、リーグワン初年度であった昨季はディビジョン3で戦うことになったりと、ディビジョン1昇格の機会をつかむことすらできていなかった。「降格してからの4シーズン、この日を待ちに待っていた。」と徳野洋一ヘッドコーチは語る。
大事な初戦を戦うメンバーの中に名を連ねたのが、ティアン・トーマスウィーラー。3月に加入し、順位決定戦第1節の浦安D-Rocks戦でデビュー。続く三重ホンダヒート戦にも出場したウェールズ出身の23歳だ。「派手さはないかもしれないが、安定したプレーができる」と徳野ヘッドコーチは評する。
「このチームが本当に好きです。地球の反対から来た私に対して、チームメートやスタッフの方々に良くしていただいて、新しいホームのような心地がしています」とティアン・トーマスウィーラー。特に、週末の試合にスタンドオフで先発するジョシュ・マタヴェシは、ウェールズのクラブに所属していたときのチームメート。当時16歳のティアン・トーマスウィーラーを熱心に指導してくれたといい、そんな頼れる先輩と勝負の一戦に臨む。
「このような、チームの命運を左右する重要な試合はキャリアで初めてです。緊張はしますが、チームのために自分の持っているものを出し切りたいと思います」
この日のために、日本にやってきたと言っても過言ではない。S愛知の夢を叶えるために、ティアン・トーマスウィーラーは全力を尽くす。
(齋藤弦)
三菱重工相模原ダイナボアーズ(D1)
さあ、“Leave Your Mark”.浮き沈みがあったシーズンのラストスパート
「入替戦はプレーオフと同じ。あと2試合できる特権だと考えています」。三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)の岩村昂太キャプテンは、こう口にする。
今季初めてNTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1を戦った相模原DBの総決算になる最後の戦い。ここにたどり着くまで、チームは好不調の波を経験した。
「シーズンの序盤は結果が残せてポジティブでした。中盤は疲労に加えて、違うことを出そうとしてハードルを上げてしまい、自らプレッシャーを掛けてしまいました」(岩村)
第5節以降は1勝しか手にできなかったが、岩村は「あらためて本来の自分たちに立ち返り、もう一度成長していける手ごたえが見えました。次につながるような終盤の数試合でした。パフォーマンスをシーズン中に一貫して出し続けられるメンタルと体、マインドセットが大事だと学びました」と終盤戦を振り返る。
「1回上がって、落ちて、また上がりかけていると感じている」(岩村)。その中で迎える入替戦。岩村の「いいマインドで練習できていますし、ミーティングでは家族のムービーをみんなで観たりして、『なんのためにラグビーをしているのか』を再確認させてもらっています」という言葉からも、チームのポジティブな様子がうかがえる。
ディビジョン1残留を懸けた、ディビジョン2を3位で終えた豊田自動織機シャトルズ愛知との第1戦はビジターゲーム。「入替戦は特別ではありません。今季、やってきたことを高いクオリティーで出せるようにフォーカスしています」と岩村。
欠場したレギュラーシーズンの最終節は、相模原ギオンスタジアムのスタンドで試合を観戦した岩村は、「ファンと触れ合う機会も持てました。グラウンドレベルに伝わる応援とは違う形で、多くの人に支えられていると感じました。しっかりと勝って恩返しをしたいという気持ちが強くなりました」と力を込める。
シーズンが終わればチームを去る選手もいる。「毎年、この時期は寂しくなります。私も移籍した経験があるので、気持ちが分かります。ただ、プロのラグビー選手である以上、この感情は避けられません。だから、今ある時間をしっかりと大事にみんなと過ごしたいと思います」。
今季、各選手のロッカーには“Leave Your Mark”(足跡を残せ)という言葉が掲げられてきた。ディビジョン1にこれからも足跡を残すため、猪軍団はラストスパートをかける。
(宮本隆介)