2023.05.07NTTリーグワン2022-23 D2/D3入替戦 第1戦レポート(江東BS 0-48 九州KV)
NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン 2/ディビジョン 3 入替戦 第1戦
2023年5月5日(金)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス 0-48 九州電力キューデンヴォルテクス
自分たちの強みを出せずに落とした第1戦。
第2戦は思いと覚悟が問われる80分に
江東区夢の島競技場に九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)を迎えての入替戦第1戦。清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)にとって今季最後のホストゲームでもあった。
九州KVは、今季のディビジョン3で2位の成績を収め、最終節のマツダスカイアクティブズ広島戦では、40対7で勝利。その勢いのままこの試合にも臨むと、前半から押し込む時間帯が増え、主導権を握る。後半もその勢いは止まらず、48対0でノーサイド。江東BSにとっては非常に悔しい結果となった。
過去3試合の対戦成績(昨シーズンの2試合と、2019年のトップチャレンジリーグ1試合)は、いずれも7点差以内の決着となっていたが、今日完敗となってしまった要因について、「ペナルティの部分で自分たちの強みが出せなかったことが一番です」と大隈隆明監督は振り返る。
あえて風下を取った江東BSは前半が厳しい時間帯になることは分かっていた。ただ、風上に立った後半にもなかなか自分たちのリズムを作れずにいた。80分をとおして相手に押し込まれる厳しい展開の中、決してあきらめずにリーダー陣がチームを引っ張る姿があった。キャプテンの髙橋広大は、苦しい時間帯には「もう少し我慢しよう」と声を掛け統率を図り、ペナルティが多く自分たちの流れにもっていけない時間帯には、「ブレイクダウンのペナルティを減らしていこう」と常に的確な声を掛けていた。
また、今季はゲームキャプテンを務めることが多く、チームに欠かせない存在でもあるマーフィー・タラマイは、“基本をどれだけできるかが大切”というメッセージをチームに落とし込み、「それぞれが自分たちの役割を信じてやろう」と声を掛け引っ張っていた。個人としては、ディフェンスラックに入った回数でディビジョン2最多の87回とチームに貢献していたが、「ディフェンスを意識してきた中でも、相手がゲインラインを取ってきて、プレッシャーを掛けられ、いつものような上がるディフェンスを見せられなかった」とこの日は自身の強みを発揮できなかったと悔んだ。
来週に控える第2戦についてはチームへの信頼を強調。「チームを信じているので、次の試合では必ず切り替えて、もう一度勝ちに向かっていきたい」。今季最後の試合への意気込みを力強く話した。
“夢の島”には、青いものを身に付けた多くのファンが詰めかける光景が開幕戦から変わらずにあった。なかなか勝利がない中でも応援してくれる姿も不変だ。その状況にキャプテンの髙橋は「今季はファンの方々の期待に応えられていないことに対して本当に申し訳ない気持ちです」と責任も感じていた。
入替戦第2戦は1週間後に控えている。ディビジョン2残留を決める重要な最終戦。“来季もこの舞台でプレーしたい”。その強い思いを胸に覚悟を決めて九州の地へ降り立つ。
(山村耀)
清水建設江東ブルーシャークス(D2)
清水建設江東ブルーシャークス
大隈隆明監督
「結果のとおり、われわれの力負けでした。良い準備をして、自信を持って今日の試合に臨んだが、ペナルティやセットピースのところなど、なかなか自分たちのリズムに乗れないまま試合が終わってしまった印象です。ただ、もう1試合やれるチャンスがあるので、切り替えてやっていきたいです」
──力を発揮できなかったのはどんなところに要因があるか?
「ペナルティが一番大きいと思います。また、相手の勝利への執念が強かったと思います。自分たちは今季ここまで負けてきた試合が多いのに対して、九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)さんは勝利してきたチームで、その勢いに呑まれた感じがありました。この1年間、九州KVさんはこの入替戦を目指して準備されてきたと思いますが、自分たちはディビジョン2でより上を目指していた中で、この舞台で戦う準備はしてきていなかったので、その準備の差が出たのかもしれないとも思います」
──前半に風下を選んだことについて、どのようなゲームプランだったのか?
「自分たちの強みであるボールをスペースに運んで動かすラグビーをしたかったので、前半に風下を選んでボールを展開してどんどんアタックしていこうというプランでした。ただ、ブレイクダウンでスローテンポになってしまったり、ペナルティをしてしまったり、なかなかボールの継続ができず、テンポも出なくて、相手が優位になってしまう展開になってしまいました」
清水建設江東ブルーシャークス
髙橋広大キャプテン
「この試合に向けての準備は良い感覚でできていて、自信を持って臨みました。ただ、ペナルティや相手のジャッカルで取られてしまうことが多く、アタックも準備してきたものが出し切れないことでテンポも生まれず、相手の理想どおりにゲームが進んでしまった印象です。試合の流れを断ち切れなかったことは、自分に責任も感じます。ただ、チーム全体でも振り返って、残り少ない日数で切り替えて次の試合に臨みたいです。シーズン最後の試合になるので、自分たちのプライドのためにも戦い切るところを体現したいと思います」
──攻めているときのブレイクダウンが多く起きていたが、どういった経緯があったのか?
「ジャッカルの強い相手選手が集まっているポイントで、自分たちの攻撃が単調で、ボールを持った選手が簡単に倒されてしまい、相手がきれいにジャッカルに入れるシーンが多くなってしまった印象でした。アタックのオプションを増やすことや、ボールを持った選手の二人目の動きや寄りなど修正できるポイントはたくさんあるので、もう一度映像を見ながら振り返っていきたいです」
九州電力キューデンヴォルテクス(D3)
九州電力キューデンヴォルテクス
ゼイン・ヒルトン ヘッドコーチ
「今日の選手たちのプレーに満足しています。風が強いところをコントロールして得点できたことが素晴らしく、チーム全員を誇りに思います。今日のゲームは、チームにとって本当に大きな意味のある勝利となりました。ただ、今日で終わりではなく来週にも重要な試合があり、清水建設江東ブルーシャークスは強くなって九州にくると思うので、リセットしてやらないといけないと考えています」
──もともと強いディフェンス面がチームの文化だと思いますが、その文化を色付けるためにヘッドコーチとしてはどのように取り組みをされてきたのか?
「まずは、今日、4年間作り上げてきたチームの文化を選手たちが表現してくれました。
良いディフェンスをするためには全員がタックルしていかないといけないと考えていて、そのために、個人のタックルテクニックにかなりの時間を費やして取り組んできました。また、システムにも時間を掛けてやってきて、ここまで来るのに長い時間が掛かりましたが、その文化を選手たちが表現してくれていると感じています。何より、ディフェンスでチームを守りたいという気持ち、九州の人のために成功したいという気持ちが一番大切で、それがチームの大きな目的だと伝えてきました」
九州電力キューデンヴォルテクス
高井迪郎キャプテン
「キャプテンを任されて3シーズン目で、やっとこの舞台まで来れたという気持ちと、これまで培ってきたものが少しずつ形になっていることを実感できた試合でした。ただ、来週も試合があり、相手は49点以上取ろうと入ってくると思うので、反省すべき点は反省しながらも今日の勢いは必ず来週にもつなげていきたいです」
──挑戦者として臨む中で、大勝できた要因は?
「ここに向けて4年間やってきて、今日のような良いパフォーマンスができるイメージができていました。試合前には、『準備してきたことを遂行しよう』と選手間で話して、それを表現でき、うまくいかないときもすぐに切り替えることができました。何より準備してきたものができたことが一番の勝因です。また、フィジカルで勝てないとディビジョン2には行けないという思いで、フォワードのタックルをはじめとするコンタクトプレーなど厳しい練習に取り組んできました。フィジカルの部分は、“自分たちのチームをどれだけ守ろうとしているか”、その気持ちを大事にして、ここまでノンメンバーを含めて、チームの精度を高めてこれたこと、全体で取り組んできたことが要因だと思います」
──九州のために戦うチームとして、この試合に臨むにあたって周りからはどんな言葉やサポートがあったのか?
「サラリーマンが多い中で、まずは九州電力の会社の後押しが大きかったです。さらにファンの方々が『一緒にディビジョン2にいこう』と言葉を掛けてくれて、『WE ARE KYUSHU』を掲げてラグビーをできたことを非常にありがたく思っています」