2023.12.15NTTリーグワン2023-24 第2節 三重H vs S東京ベイ-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦) 第2節 カンファレンスA
2023年12月16日(土)12:10 三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 (三重県)
三重ホンダヒート vs クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

三重ホンダヒート(D1カンファレンスA)

ヒートに注ぎ込む、ラグビーワールドカップを連覇した選手としての誇り

三重ホンダヒートのフランコ・モスタート選手は、ラグビーワールドカップ2023フランス大会で南アフリカ代表2連覇を達成した

待ちに待ったホストゲーム開幕戦だ。今季念願のディビジョン1に昇格した三重ホンダヒート(以下、三重H)が、三重交通G スポーツの杜 鈴鹿に昨季王者のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)を迎える。

ジャパンラグビー リーグワンがスタートした2022シーズン。三重HはD2からのスタートだった。その年は入替戦に進出したもののD1の壁を破れず、昨季ようやく昇格を果たした。ファンも待ち望んだ国内最高峰の舞台である。

しかし、開幕戦はほろ苦い結果となった。各国代表選手がそろうコベルコ神戸スティーラーズに12トライを許すなど大敗。それでも選手たちに悲壮感はなく、この試合に向けて準備を進めている。

ラグビーワールドカップ2023フランス大会で2連覇を達成した南アフリカ代表のフランコ・モスタートは、2020年から三重Hでプレーしている。三重を「私の家」だと言う大型ロックは、当然のように地元ファンの期待を背負ってラグビーワールドカップ決勝の大舞台に立った。前回大会で世界一を経験しているとはいえ、襲ってくる緊張感。加えて決勝トーナメントはすべて1点差の大激戦だった。

「全部がタフなゲームだったけど、優勝できた一番の要因は母国のサポートや、ファンのみなさんからの大きな期待があったこと。チームの歴史を含めて、勝たないといけないプレッシャーの中でしっかり準備ができたことが大きな理由だったと思います」

世界のトップ・オブ・トップと戦い、強烈なプレッシャーの中で多くの学びを得て、さらに成長したフランコ・モスタート。次の使命はこのホーム開幕戦で三重Hを輝かせることである。

「間違いなくS東京ベイはベストなチーム。われわれにとって最大のチャレンジになります。タフなゲームになるのは当然ですけど、しっかりと良い準備をして自分たちの能力を発揮できるように頑張りたい。ファンのみなさんをハッピーにしたいし、僕たちが楽しんでラグビーをしているところを見てほしい」

ファンの期待が高まれば高まるほどチームは強くなり、プレッシャーをはね除けられる。フランコ・モスタートはラグビーワールドカップ優勝メンバーの誇りをヒートに注ぎ込む。

(斎藤孝一)

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスA)

人生初、待ちに待った兄弟対決で根塚洸雅が負けられない理由

クボタスピアーズ船橋・東京ベイの根塚洸雅(こうが)選手。16日の試合は14番で先発。一方、三重ホンダヒートの兄の根塚聖冴(しょうご)選手は21番でリザーブから出場をうかがう

「もう毎日のように取っ組み合いをしていて、テレビ台に突っ込んで、頭にガラスの破片が刺さったこともありました」

大日本プロレスのデスマッチではない。とある家族の兄弟ゲンカの話である。

根塚洸雅と、2学年上の兄の根塚聖冴。洸雅が幼稚園の年中組のころなので、年齢は4歳くらい。聖冴と一緒に自宅の壁を登って遊んでいたところ、その運動神経を見抜いたのか、カギの修理のために訪れていた業者の男性が勧めた競技がラグビーだった。奇しくも、自宅から近い場所に練習拠点を構えていた尼崎ラグビースクールの校長と根塚の父親が旧知の間柄にあったこともあり、二人はともにスクールに通うようになる。ラグビーとの出会いは偶然と言えば偶然だし、必然だと言われればそのようにも思える。ただ、このころの記憶は至極あいまいで、洸雅本人は「気が付いたらラグビーをやっていた」感覚なのだという。

以後、二人はスクールの中学部まで、同じラグビー空間を共有。ともに負けん気が強く、「ラグビーではお互いに自分のほうが目立ちたいという気持ちがあったと思います」。日常でも、少しでも衝突しようものなら一歩も引かない。結果、小さいころからケンカが絶えず、時には流血沙汰にも発展。当時に負った傷は、いまも顔に刻まれている。きれいな言葉でまとめると、身近なライバルが常に家庭内にいた、ということになる。

しかしながら、洸雅と聖冴が敵味方の関係に分かれてグラウンドで向き合ったことは過去に一度もない。中学卒業後、聖冴は京都成章高校に、その2年後に洸雅は東海大学付属大阪仰星高校に進学。高校時代はすれ違いで、“花園”での対戦は実現せず。大学はともに法政大学に進み、ここでは同じチームに。2019年、聖冴は三重ホンダヒート(以下、三重H)に加入。洸雅の目に兄弟対決という対立構造のおぼろげな輪郭が見え始めたのはこのころだ。

「大学に入った時点から(ジャパンラグビー リーグワンの前身の)トップリーグでやりたいという思いはありました。兄貴が三重Hに行くことが決まったとき、僕は大学2年生で、自分もその道に進みたいと強く思いました。そして、その翌年くらいから少しずつ(複数のチームから)声を掛けていただけるようになったのですが、あらためて振り返ってみると『兄貴とは違うチームに行きたい』『別々のチームに分かれて戦ったほうが面白いんじゃないか』といった意識があったように思います」

2021年、洸雅はクボタスピアーズ船橋・東京ベイに加入。チームが悲願の初優勝を遂げた昨季、三重Hはディビジョン2からディビジョン1に昇格。そして12月16日、両チームはトップリーグのラストシーズン以来、2年9カ月ぶりに公式戦のグラウンドで対峙する。そのときが、ついにやってきた。

「楽しみです。これまで敵として向き合ったことがないので、僕は戦うことを楽しみにしています」

根塚家初の兄弟対決なるか。負けたくない、負けられない理由がともにある。

(藤本かずまさ)


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