NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第6節
2024年2月24日(土)13:00 白波スタジアム (鹿児島県)
九州電力キューデンヴォルテクス 8-12 NECグリーンロケッツ東葛
7シーズン目で積み重ねたマリティノ・ネマニの
50キャップは、ファンへの感謝とともに
鹿児島でのビジターゲームに臨んだNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)は、ホストである九州電力キューデンヴォルテクスとの激闘を乗り越え、勝ち点4を手にした。会場となった白波スタジアムには、雨模様の肌寒い気温の中、2,279人(昨年の同会場開催時は2,228人)の観客が詰めかけた。
この試合でチーム50キャップ(ジャパンラグビー トップリーグ時代を含めた公式戦の出場試合数)を達成したのがGR東葛のマリティノ・ネマニ。2017年にNECグリーンロケッツ(当時)に加入し、7年目のシーズンを迎えるフィジー出身の32歳は、かつてなく充実のシーズンを過ごしている。第6節を終えた時点で、ディビジョン2の個人ランキングのうち、ボールキャリー、ゲインメーター、ラインブレイク、ディフェンス突破の4部門でトップの数字を叩き出した。いまのGR東葛のアタックを支えるキープレーヤーと言っていい。
この日は、自身の50キャップを祝うトライでもあり、結果的にはチームを救う貴重なトライを取った。それから、「カードコレクター」だった若いころ(ジャパンラグビー トップリーグ時代の2018-2019シーズンにはイエローカードの累積により、追加的処分を受けている)を思い出させるような、あるいは、これも祝福の形だったか、ひさしぶりにイエローカードももらった。「ローラーコースターのような試合」と、ロッカールームで飲み干したビール缶を手にしたティノ(マリティノ・ネマニの愛称)はしみじみとしていた。
「これまでにたくさんのヘッドコーチ、スタッフ、選手たちと一緒にラグビーをしてきて、いろいろなことが変わりました。チームが苦しい時期もありました。アップダウンも激しかった。それでも、いつも変わらずに応援してくれたファンのみなさんには感謝しかありません。その思いに応えるためにも、ベストを尽くして、ディビジョン1に復帰したいと思います」
個人的に目指すところはどこか。この日の出場でチーム157キャップとなった瀧澤直の名前を挙げると、こう言った。
「いや、それは、本当に……難しい(笑)。でも、100キャップは目指したい。それが次のチャレンジです」
(平野有希/Rugby Cafe)
九州電力キューデンヴォルテクス
九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ代行
「素晴らしいグラウンドと、たくさんの観客に来ていただいてありがとうございました。みなさんに勝利を届けられなかったことは残念だが、シーズン前半で出た課題を選手たちが真摯に受け止めて、チームはいい方向に向かっていると感じられる試合だった。たくさんあったチャンスで取り切れなかった点を課題として、次に向けていい準備をしたい」
──選手に向けて、「もう3%の努力をしよう」と話していた。その言葉の意図を聞かせてください。
「九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)はプロ選手と社員選手が混じっているチームで、練習時間も限られている。その中でも勝つためには、いまより10%とは言わなくても、3%の、本当にちょっとの努力を全員が積み上げることが大きな力になる、という話をした。選手はそこを意識して、しっかり準備してくれた。ただ、現実として勝てなかったのは、試合中のプレッシャーで(自分たちのプランを)遂行できなかったことが理由だと思う。今後の練習の強度や内容を工夫しながら、より試合に近い状況下でスキルを磨くことが必要だと感じた。今日、勝たせてやれなかったのは(コーチ陣や)スタッフの反省です」
九州電力キューデンヴォルテクス
ウォーカー アレックス拓也キャプテン
「素晴らしいグラウンドで試合ができたことに感謝します。シーズン後半戦の最初の試合ということで、勝ちたい気持ちが強かったのですが、自分たちのミスで試合を落としてしまって悔しいです。まだ試合は続くので、改善していきたいと思います」
──スクラムやモールなど、フォワードが健闘していたが、その要因は?
「この1カ月、ユニット練習でディテールを詰めていくこと、一人ひとりの役割を明確にすることを意識してきました。今日の試合で、そこの部分は結果がついてきたと思うし、自分たちの持っているものを出し切れたと思います。これからの試合に向けての自信になりました」
NECグリーンロケッツ東葛
NECグリーンロケッツ東葛
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ
「試合が進むにつれてけが人が出て、イエローカードも出て、いろいろなことが起きた中で勝ち点4を取れたことは、正直満足している。われわれはスピードを持ってプレーしたいが、九州KVがスローボールにして、ペナルティを稼いでいたことはフラストレーションだった。選手たちは(ブレイクダウンでの)自分の重心をマネジメントする必要があると感じている」
──後半戦に入るが、チームの成長度合いや課題についてどう見ているか?
「いまも戦術を練り続けているが、特にスピードと正確さは引き続きの課題だ。スコッド(試合登録選手)も同様に練り続けている。あと数週間のうちにトップスコッドを固めて、大一番である豊田自動織機シャトルズ愛知と浦安D-Rocksとの試合を迎えるというプランだ。まだまだやるべきことはあるし、日によってはベストな結果が得られないこともあるが、今日のように僅差であっても勝ち点を持ち帰ることができればいいと思う」
NECグリーンロケッツ東葛
瀧澤直ゲームキャプテン
「素晴らしい環境で気持ちよく試合に臨むことができました。この試合に関わってくださったみなさんに感謝したいです。試合の内容としては、九州KVのプレッシャーを受ける場面もありましたが、全員が簡単にあきらめることなく、ハードワークしたことを誇りに思います」
──NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)で長くプレーしてきた瀧澤選手は、いまのチームの雰囲気や戦い方をどう感じているか?
「リーグワンが始まって、ジャージーも変わって、新しいコーチ陣になって、会社の体制も変わって、そういう意味では(チームの)外側はまったく違っています。でも、内側は、GR東葛らしく、選手同士のつながりが強くて、勝っても負けても一丸となれるチームであることは変わっていないと思います。いまはディビジョン1に昇格するという明確な目標があるので、そこに向けて、選手はもちろん、スタッフ、バックオフィスのみんなが一つになってチームを盛り上げようとしていて。そういう気持ちが、もしかしたら、今日の試合を4点差で勝ち切る力になったのかもしれませんね」