NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1/D2入替戦 D1 12位 vs D2 1位 第1節
2024年5月18日(土)12:00 スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場) (東京都)
浦安D-Rocks vs 花園近鉄ライナーズ
浦安D-Rocks(D2)
「神様が与えてくれた」リベンジの機会。
2年分の喜怒哀楽のすべてを力に
D1/D2入替戦で昨季と同じカードが実現する。悲願のディビジョン1昇格を誓う浦安D-Rocks(以下、浦安DR)は、花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)をホストゲームで迎え撃つ。
決戦2日前の練習場には、程よい緊張感とリラックスした選手たちの表情や声が入り混じる。穏やかに流れるその空気は普段と変わらなく感じた。レギュラーシーズン中と同じく、チーム全体での動きを共有したあとに、フォワード陣とバックス陣に分かれて連係を確認。それを終えれば、各々が自主練習に励むといういつもどおりの光景があった。
入念にボールを蹴り込み、居残り練習を終えた飯沼蓮は汗が滴る姿のまま、それでも落ち着き払った表情で言葉を紡ぎ始めた。
「相手も花園Lになり、リベンジするチャンスを神様が与えてくれたと思っています。昨季はみんなが悔しい思いをしましたし、人生のどん底でした。だからこそ、同じ相手にリベンジを果たして、D1に上がるのが一番いいシナリオ。レールは敷かれていると思うのであとはやるだけですね」
レギュラーシーズンを全勝で駆け抜けた昨季とは違い、今季は開幕戦でいきなり喫した黒星もあれば、勝利をつかむも内容には納得できないゲームもあった。それでも、いろいろな壁にぶつかるたびに全員で乗り越えてきた。
「昨季は最後に苦しい状況になり、そこでチームがバラバラになってしまいました。今季はシーズン中からうまくいかないことも多かったけど、そこでコネクトすることや一つになることなど、タイトな試合の中でも“チームとして”の部分を一番意識してやってきたので、昨季とは大きく違うと思います」
浦安DRからすれば、歴史は繰り返すものではなく、塗り替えるものである。「もちろん自信はあります。すごく楽しみです。早く試合をやりたいですね」。最後にそう力強く言い切ったその目は真っすぐで清々しかった。これ以上ない舞台は整った。この2シーズン、どんなときも先頭に立ち続けてきたキャプテン・飯沼蓮が、2年分の喜怒哀楽のすべてを力に変え、ネイビーに染まるスタジアムを歓喜で包み込む。
(須賀大輔)
花園近鉄ライナーズ(D1 カンファレンスB)
未来を左右する運命の一戦へ。
花園Lは「自分たちから攻める気持ちで」
運命のいたずらというべきだろうか。2年連続でD1/D2入替戦を戦う花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)が、浦安D-Rocks(以下、浦安DR)と再び、相まみえる。
昨季のD1/D2入替戦では下馬評で不利と見られたはずの花園Lが2戦2勝。浦安DRの夢を打ち砕いた。今季もディビジョン2のレギュラーシーズンを首位で終えた浦安DRと、D1で最下位に終わった花園Lが同じ立ち位置で顔を合わせることになった。
「昨季よりもいい緊張感がありますし、選手の誰もが昨季のように(タフな試合内容を指して)うまくいかないと思っています。相手が決死の覚悟で来るのは分かっていますから」とキャプテンの野中翔平は大一番を前に、気を引き締める。
昨季同様、レギュラーシーズンで手にした勝利はわずか1勝にとどまったが、向井昭吾ヘッドコーチの下で積み上げてきたスタイルはチームの成長を示すものだった。
だからこそ、向井ヘッドコーチも言葉に力を込める。「得点する部分はある程度、上位チーム相手にも“ケンカが売れそうかな”というところまで来ています。D1に残留できれば来季はそれが発揮できると思っています。絶対にここは勝って、(D1に)残らないとダメな試合です」。
今回の入替戦は花園Lの未来を左右する今季最も重要な一戦となる。シーズン終盤に台頭してきた若い力の一人でもある河村謙尚は、この大一番でもスクラムハーフとして先発する。
「今季の集大成でもありますけど、チームには若い選手も多い。彼らにつないでいくためにも、この試合は通過点になります」(野中)
リベンジに燃える浦安DRの意気込みと地力は花園Lの誰もが理解している。
向井ヘッドコーチは戦術面や選手起用に関しても浦安DRを見据えて準備してきたが、日本代表を指揮した経験を持つ百戦錬磨の指揮官はあえて、メンタル面の重要性を口にする。
「ラグビーはここですよ、心だから」と自らの左胸を叩いたあと、「受けたらやられます。相手を受けないで、自分たちから攻める気持ちをキックオフから出したい」と攻めの姿勢を強調した。
昨季の入替戦を知る野中と、長いキャリアを通じて初めて入替戦を戦う向井ヘッドコーチ。二人は奇しくも同じ言葉を口にした。
「初戦が勝負」
“向井ライナーズ”の総決算をいまこそ示すときだ。
(下薗昌記)