NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第1節
2024年12月22日(日)12:00 久留米総合スポーツセンター陸上競技場 (福岡県)
ルリーロ福岡 17-25 ヤクルトレビンズ戸田
リーグワンに「ただいま」。
そして、努力が報われる日を信じて
リーグワン新規参入クラブ同士の対戦は、ヤクルトレビンズ戸田に軍配が上がった。ルリーロ福岡(以下、LR福岡)は17対25で惜敗し、初勝利こそ逃したものの、2,418人のファンの声援に背中を押され、新たな歴史の第一歩を踏み出した。
後半37分、10対25の厳しい状況下で訪れた見せ場。LR福岡の八文字雅和は途中出場の元日本代表カーン・ヘスケスからパスを受け、右隅へ鮮やかなトライを決めた。その瞬間、スタジアムが大きく沸き上がった。八文字が見せたのは「数的優位を生かせた」という冷静な判断力。練習どおりではなかったものの、「みんなが走ってつないだ結果、形にすることができた」と、チーム全体への感謝を口にした。
かつてコカ・コーラレッドスパークスでトップリーグに出場し、その後宗像サニックスブルース(以下、宗像SB)に移籍した八文字。宗像SBの活動休止を受けてLR福岡に加入した彼にとって、この試合は特別な意味を持つ。「リーグワンに戻った大事な一戦。『ただいま』という気持ちだった」と振り返り、深い感慨に浸る姿が印象的だった。
普段は不動産会社の営業職として働く八文字は、9時から17時まで仕事をして、その後1時間掛けて練習場に通う。仕事と練習を両立する日々の中、選手たちがそれぞれ異なる背景を持ちながらも「文句を言わず努力を続けている」と語る。
この試合は、地域リーグからスタートしたチームにとって歴史的な一戦でもあった。「2年前にゼロからスタートし、この舞台に立てたことが本当にうれしい」と話し、短期間での準備の中で浮き彫りになった課題も受け止め、さらなる成長を誓った。
LR福岡の成長を支える地域の声援は、選手たちにとって大きな力となっている。「有料試合にもかかわらず、こんなにも多くの方々が応援に来てくれたことが本当にうれしい」と八文字。地域の期待に応えるべく、「環境に恵まれたチームには負けない。自分たちの努力が報われると信じている」と力を込める。
次戦では、さらに一段階成長したチームと、八文字の新たな活躍に注目が集まるだろう。ファンへの感謝を胸に力強く言葉を締めくくった。「次こそは勝利を届けられるよう、一生懸命頑張ります」。
(柚野真也)
ルリーロ福岡
ルリーロ福岡
豊田将万ヘッドコーチ
「自分たちのできる最大限を出せたと思います。ただ、リーグワンの壁というか、やはり強豪チームと比べると課題が浮き彫りになりました。われわれは自分たちのペースで試合を展開できず、それが次への大きな課題となりました。それでも、多くの方々がスタジアムに足を運んで選手たちを後押ししてくれたことは、チームにとって非常に励みとなりました。福岡県筑後エリアを拠点に活動していますが、地元の方々に頑張っている姿を見せられたのは、次の一歩につながる大きな収穫だと感じています。これからも支えてくれる方々の数を減らさないように、むしろ増やしていけるよう努力していきます」
──開幕戦に臨むにあたって、ポイントとしていたことや今回の収穫と課題を教えてください。
「試合前に重視していことは、周囲との連係と状況判断でした。試合展開が大きく動くことを想定し、それに柔軟に対応することを選手たちに伝えていました。特にラインアウトやモールの場面がポイントになると考え、フォワード陣にしっかりとした準備を促していました。収穫としては、今季加入した若い選手たちが期待以上の活躍を見せてくれた点です。例えば、上田健太は技術と冷静さを兼ね備えたプレーをしてくれました。一方で、ペナルティが試合展開を左右する結果となり、次回に向けた改善点として取り組んでいきたいと考えています」
──ハーフタイムにはどのような指示を出しましたか?
「主にペナルティを減らすこと、そして後半に入る選手たちがエナジーを保ちながら試合を修正することを求めました。選手たち自身が話し合い、試合の流れを修正していく姿勢を持つように伝えました。また、交代して入る選手にはチーム全体の勢いを落とさないよう指示しました」
──フォワード陣が押し込まれる場面が多かったですが、それについてどのようにお考えですか?
「フォワードが常に劣勢だったわけではありませんが、ペナルティにより相手の強みを引き出す場面が多く、試合の主導権を握られる結果となりました。特にゴール前のペナルティが試合の流れに影響を与えたと感じています」
──チームを立て直す上で注入したいマインドセットや改善すべき点は何ですか?
「このチームの強みは、一人ひとりの選手が覚悟を持ってプレーに臨んでいる点です。しかし、ほかのチームと比べると、練習時間に制約があります。選手たちは仕事を終えてから限られた時間で練習しています。その中で最大限のパフォーマンスを引き出すには、状況判断や自立したプレーがカギとなります」
──練習環境など整っていない中で、ヘッドコーチを引き受けた理由は何でしょうか?
「学生時代から縁のある仲間たちが、このチームに懸ける情熱を目の当たりにし、私もその一員として力を尽くさなければならないと感じました。ラグビーを通じて地域に貢献し、このチームを次のステージへ引き上げたいという思いで引き受けました」
──次節以降に向けての抱負をお聞かせください。
「いまいる選手たちで最善を尽くし、状況判断をさらに磨いていきます。特に、ペナルティを減らすことやボールを持っていないときの粘り強さを重視していきたいと思います。一試合一試合を大切にし、成長を続けるチームを目指していきます」
ルリーロ福岡
三股久典キャプテン
「新規参入チーム同士の対戦で、初戦がホームで行われました。選手たちは100%の準備をして勝利を目指しましたが、惜しくも敗れてしまいました。昨季の3地域社会人リーグ順位決定戦にて1点差で敗れた相手だったので、そのリベンジに燃えていました。しかし、勝ち切れなかったことは悔しいです。次に向けて修正を重ね、チームとしてさらに成長していきたいと思います」
──初戦で2400人以上の観客が来場しましたが、応援はどのように感じましたか?
「試合中も多くの応援が聞こえてきて、自分たちの力になりました。多くの方々がグラウンドに足を運んでくれたことに驚きました。勝利を届けられなかったのは悔しいですが、今後も成長を続け、全員で勝利を目指していきたいです」
──チームがここまで成長した理由をどのように考えていますか?
「チームの成り立ちを理解した選手が一人ひとり覚悟を持って入団してくれたことが大きいと思います。また、地域密着の活動を続けてきたことや地域のみなさん、スポンサー、家族の支えがあったからこそ、ここまで成長できたと感じています」
──試合前に、キャプテンとしてチームに伝えたことはありますか?
「これまで地域の方々の支えがあったからこそ、この舞台に立てていることを忘れず、とにかく戦い抜こうと伝えました」
──今後の課題や目標について教えてください。
「今日は勝利を届けられませんでしたが、次節に向けて練習してきたことを100%出し切れるように準備して臨むつもりです。次の試合まで少し時間が空くので、相手チームをしっかり分析し、戦略を練ることでさらにチームを強化していきます。また、規律を守りながらチームとして一体感を持って戦いたいと思います」
ヤクルトレビンズ戸田
ヤクルトレビンズ戸田
河野嵩史ヘッドコーチ
「今日の開催に関し、準備していただいたみなさんに本当に感謝したいです。最高の環境で試合ができました。試合においては、序盤からルリーロ福岡(以下、LR福岡)さんのコンタクトエリアでハイプレッシャーを感じながら、われわれの選手たちが体を張ってくれたことが勝利につながったと思います。相手の能力の高い選手を警戒し、準備してきた中で、われわれのベンチ入りできなかった選手をタフマンズと呼んでいるのですが、そのタフマンズが仮想LR福岡のようなアタックをしてくれたことで、いい準備ができました。プレシーズンは勝てない試合が続きましたが、この勝利で悪い流れを断ち切ることができました。今後のシーズンに向けて、いい収穫になりました」
──開幕戦に向けたチームとして取り組んできたことと、発揮できた部分は何でしょうか?
「一番大事にしているのは、全員が当たり前のことを当たり前にやることです。具体的には、全員が走り、コンタクトに勝ち続け、体を張り続けること。これを徹底した結果、試合でもその姿勢を発揮できたと感じています」
──フォワードの圧力で上回っていたように思いますが、その評価は?
「モールからのトライが多かったのは、これまで強化してきた成果だと思います。そこでトライを取れたことは大きな収穫です」
ヤクルトレビンズ戸田
多田潤平 共同キャプテン
「非常にタイトな展開が続きましたが、選手たちはこれまでともに戦ってきた仲間たちの思いを背負い、自分たちの強みを発揮することができました。プレシーズンで苦しい試合が続きましたが、この勝利で流れを変えることができると思います」
──リーグワン初参戦同士の対決となった開幕戦、どのような思いがありましたか?
「昨季、3地域社会人リーグ順位決定戦でLR福岡さんと対戦した際、1点差で勝利した経験が非常に印象深かったです。今回の試合でもその経験を生かし、自分たちの強みや課題を改善しながら臨むことができました。初陣というプレッシャーよりも、LR福岡さんへの対策に集中できた結果だと思います」
──開幕戦の雰囲気は、いかがでしたか?
「このリーグは、ずっと目指してきた舞台です。選手として非常に楽しむことができました。観客のみなさんや試合を盛り上げてくださる方々のおかげで、自分たちも全力で挑むことができました。課題も多く残りましたが、喜びや気持ちを試合で表現できたと思います」