2025.01.20NTTリーグワン2024-25 D1 第5節レポート(神戸S 50-22 浦安DR)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第5節(リーグ戦) カンファレンスA
2025年1月19日(日)12:05 ノエビアスタジアム神戸 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ 50-22 浦安D-Rocks

1.17への思いをつなぎ、語り継ぐ。神戸の街、人々に届けた感謝の勝利

阪神・淡路大震災から30年。コベルコ神戸スティーラーズのメモリアルマッチは、日和佐篤選手にとって通算150キャップの試合でもあった

コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)は1月19日、ノエビアスタジアム神戸で浦安D-Rocksと対戦。後半に連続トライなどで一気に突き放し、3試合ぶりの勝利を挙げた。

トップリーグ及びリーグワン通算150キャップを達成した日和佐篤が、晴れわたる爽快な空の下、ファンに言葉を届けた。トップリーグ2021リーグ戦第4節以来となるフル出場も果たし、ますます元気な37歳は心に留めていた強い気持ちを伝えた。

「30年。長い月日が経ちましたが、心の癒えない方もたくさんおられると思います。ただ、この試合、勝つことで何かメッセージを伝えられるかなと、僕を含めた選手たちは頑張ってきました。勝利を届けられて本当にうれしいです」

阪神・淡路大震災から30年。神戸Sは街や人々とともに幾多の困難を乗り越えてきた。今節は「1.17を忘れずに、記憶を語り継いでいく」ことを直視し、特別仕様のメモリアルジャージーを着用。16日や震災当日の17日には全選手やスタッフが『阪神淡路大震災1.17のつどい』に参加した。チーム最年長、山下裕史は言う。

「行かないと分からないことがある。現地の温度、人々の気持ち、そういう思いプラス、街が被災して、会社も被災した中、ラグビー部が残れて、自由にラグビーをできている環境があります。やっぱりそこに感謝する1週間、そして、この週末でしたね」

‟語り継ぐ”使命を神戸Sは受け止める。それは若手も同じだ。ハットトリックで勝利に大きく貢献した松永貫汰は「この試合に懸ける思いは強かった」と話し、デビュー戦だった船曳涼太も「来年も、これからも忘れずに頑張っていきたい」と心を強くする。共同キャプテンを務める李承信も言葉をつむいだ。

「試合前にレンズ(デイブ・レニー ヘッドコーチ)も話していました。『今日ここで結果を残さないと、 自分たちは何も街の人のためにしたことにはならない』。ラグビーをとおして結果を残すことによって、みなさんにしっかり恩返ししようという思いを強く持っていました」

思いは決して途切れない。神戸Sはつないでいく。

(小野慶太)

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ヘッドコーチ(左)、ブロディ・レタリック共同キャプテン(右)

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

「こんにちは。結果はハッピーです。(内容も)先週よりは良かったと思います。浦安D-Rocksさんのディフェンスも良かったと思いますし、得点を取るためにハードワークしないといけない状況も多かったです。その部分で我慢強くアタックできたことが良かったです。ブリン(ガットランド)が戻ってきたところに関しても、復帰まで長い時間がかかったんですけども、復帰初戦にしてはすごく良いパフォーマンスをしてくれたと思います。しっかりとハードワークしないといけないところでハードワークしてくれたと思いますし、前半の部分のキックチェイスでいくつか良くないところはありましたけど、しっかりと試合をとおしていいパフォーマンスができたかなと思います。正しいエリアでの我慢強さを持つことができたことで良い結果を得ることができたと思います」

──我慢強さを発揮できたとの話ですが、具体的にどこが良くなったと感じていますか?

「一つはスキルの精度のところが良かったと思いますし、この2週間、一番フラストレーションが溜まっていたところはチャンスを作ることができていても、ハンドリングが悪かったり、パスのクオリティーが低かったり、判断が悪かったりで、ターンオーバーを与えてしまって、チャンスがある中でスコアできないだけではなくて相手にスコアされる状況を作ってしまっていました。そこの部分の精度が(今日は)高かったと思います。オフロードパスを使った回数が今日は多かったと思いますが、成功率も良かったと思います。ディフェンスで相手がオーガナイズされていたので、そこに対して自分たちがしかけていき、結果を得るためには成功率が必要だったので、そこの精度が良かったところが成長したポイントかなと思います」

──チーム作りで「誰のために」「何のために」という点を重視しているように感じるが、いかがでしょうか。

「言われたように、誰を代表しているか、その理解は絶対に大事です。素晴らしい会社、そして素晴らしい街を代表しているんだということを忘れないようにしながら、30年前、この街がどれだけのダメージを負ったかを理解して、『阪神淡路大震災1.17のつどい』に参加した理由も、どれだけ自分たちが少しでも街のために貢献できるかを考えた上でした。30年前に亡くなった方々がいる、こういうことが起きた街だということを忘れないように、風化させないようにするために、つないでいかないといけない役割も担っていると思います。当時の革新的なモチベーションの高い方々が、こうやって街を復興することにつなげたことを選手も理解することが絶対に大事だと思います。チームの中の全員が神戸出身というわけでもないので、自分たちはどういう街を代表しているのかを理解する上でも、コネクションを感じる上でも、本当に大事な行事への参加だったと思っています」

──オーストラリア代表を指揮されたときも含め、その思いの原点は何でしょうか?

「どの場所でコーチングしていようと、自分が常に意識していることの一つではあります。代表している地域とのつながりは理解させないといけないと思っていますし、神戸のカルチャーの部分に関して、深いところまで話はしませんけど、自分たちにとって、街、人々とのつながりを常に認識できるかは大事にしています。世界中を見ても素晴らしい街だと思うので、そういう街で生活ができていることは忘れてはいけない事実かなと思っています」

──船曳涼太選手が活躍したが、彼を起用した理由と評価について教えていただけますか。

「すごく良かったと思います。もう1回、同じ状況だったら違うやり方をすべきかなというところもありますけど、本当に素晴らしいスピードを持っている選手ですし、ボールを持っていないところでもハードワークをし続けてくれます。そこの部分で彼が出せた内容に自信を得られたんじゃないかと思います。本当にエキサイティングな若い選手ですし、しっかりとファーストキャップを勝利で祝うことができて良かったです」

コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック共同キャプテン

「こんにちは。レンズ(デイブ・レニー ヘッドコーチ)が言ったことと同じ意見で、時間によっては我慢強く行かないといけないところでしっかりと我慢し続けることができたと思います。特に、前半に関してはしっかり規律を保ちながらプレーすることができたかなと。セットピースに関しても相手にプレッシャーを掛けることができたかなと思います」

──震災から30年の特別なシーズンの特別な試合だったと思うが、どのような気持ちで臨みましたか。

「もちろん、毎週が自分たちにとって大切ですが、特にこの1週間を通じてどれだけ自分たちにとって大事かを感じていました。3つのグループに分かれて、チーム全員が『阪神淡路大震災1.17のつどい』に参加することもできましたし、自分たちがチームでずっと話し続けたのが、神戸の街の人々が誇りに思えるパフォーマンスをしようということでした。その当時、この会社を復興するために社員の方々も本当にハードワークした、そういう方々へのリスペクトを忘れず戦おうという話はし続けてきました。お互いのためにどれだけハードワークできるか、助け合い続けられるか、自分たちがやるべきことをしっかりとフィールド上で行動として出していけるか。そこの部分を今日しっかり見せようと臨みました。しっかり見せられたんじゃないか、伝えられたんじゃないかと思います」

浦安D-Rocks

浦安D-Rocksのグレイグ・レイドロー ヘッドコーチ(左)、飯沼蓮キャプテン(右)

浦安D-Rocks
グレイグ・レイドロー ヘッドコーチ

「シーズン序盤のここ5試合を振り返ってもディビジョン1初参戦ということで厳しい展開を強いられていますが、できるだけ早く学んで次に備えないといけないです」

──昨季までと比べて一番壁にぶつかっていると感じるところはどこでしょうか?

「一貫性の部分ですね。80分間をとおして一貫したパフォーマンスを出すこと。あと、ラインアウトの獲得率というところが(低く)、かなりディフェンスしなければいけない時間(が長くなっていること)に影響しているので、ラインアウトの部分が一番の課題だと感じています」

──コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)の日和佐篤選手が150キャップを達成しました。10年前のラグビーワールドカップで戦った選手だと思いますが、どう見えていましたか?

「とてもいい選手で、150試合達成を本当に讃えたいと思います。神戸Sさんを支えるような存在だと思いますし、チームのDNA、特徴をよく知っている選手で、クイックにアタックするラグビーというところにおいて彼もいいプレーができていましたし、あとは神戸Sさんのラインアウトも機能していたのもあって、ハーフバックスとしてはアタックがしやすい状況だったのかなと思います」

──スコットランド代表でチームメートだったジョージ・ターナー選手と何かお話はされましたか。

「彼はベンチからの出場だったので、そこまでのプレーについてのコメントはないですが、試合の前に話しました。彼はかなりダイナミックなフッカーであり、神戸Sでは、グラスゴー・ウォリアーズでやっていたときのデイブ・レニー(ヘッドコーチ)とマイク・ブレア(アタックコーチ)とすごく良い関係性を築きながらやっていると話していたので、神戸Sでの生活を楽しんでいるとのことです」

浦安D-Rocks
飯沼蓮キャプテン

「みなさん今日はありがとうございました。後半20分くらいまでは勝ちが見えているような状況で、そこから自分たちが崩れてしまって、ペナルティを重ねて点差が離れてしまいました。80分間、細かい当たり前のところをハードワークし続けていけるようになれば自ずと勝ちが見えてくる試合だったかなと思います」

──選手の視点で改善できると思うところはありますか。

「まずはラインアウトのところです。自分たちがディフェンスで我慢して守って、ペナルティを取って、自分たちの流れが来るというところでラインアウトがうまくできず、準備していたプレーをできず、またディフェンスの時間が増えていました。ここ5試合ではキックゲームのところをうまく使っていけていて、できるだけ敵陣でプレーしようということはうまくできているんですけど、あとはトランジションのディフェンスの反応だったり、キックされたあとの戻りだったり、細かいところを一人ひとりが見てしまっているのが今日もありました。外側でキックカウンターからビッグゲインされるシーンもあったので、その二つかなと思います」

──過去2試合はリザーブでしたが、何を考えていたのでしょうか。

「昔はもっとラグビーを楽しみながらチャンスを見つけてワクワクしながら攻撃的にプレーしていたんですけど、キャプテンをやっていて、ちょっと真面目過ぎたと気づきました。常に前を向いてチャンスがあればチャレンジして、相手にいたらイヤなスクラムハーフというところ、それを若いときはできていたので、そこにもう1回立ち返って、とにかくアグレッシブにプレーしようと。あとはディフェンスのところもアタックのところもコミュニケーションをとって、本当にフォワードをたくさん動かして、指示を出して、いいプレーをするところ。あとはキックをうまく使いながらゲームコントロールすることを意識していました。アタックする時間が少なかったんですが、キックゲームのところの判断は悪くなかったと思いますし、数少ないアタックの中でもチャンスを作れたシーンもあったので、100%ではないですけど、悪くはなかったかなと思います。でもチームが勝たないと満足はできないので、しっかりと活躍してチームを勝たせる方向に進めていけたら一番良いと思います」

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