2025.05.25NTTリーグワン2024-25 D1/D2入替戦[D1 11位 vs D2 2位]第1戦レポート(花園L 25-29 三重H)

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
D1/D2入替戦[D1 11位 vs D2 2位]第1戦
2025年5月24日(土)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ 25-29 三重ホンダヒート


ホーン3秒前に鳴ったペナルティの笛。先の読めない入替戦の結末は“第二幕”に

後半25分、トップスピードでゲニア選手からのパスを受け一気に抜け出してトライ、花園近鉄ライナーズの木村朋也選手

D1/D2入替戦が持つ重みを、花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)と三重ホンダヒート(以下、三重H)の熱戦が雄弁に語ってくれた。

5,108人の観衆が見守った東大阪市花園ラグビー場で待っていた結果は、あまりにもドラマチックだった。

花園Lは残り3秒の時点で25対22とリードしていたが、ペナルティを与えると、直後に後半40分を告げるホーンが鳴った。その後、後半43分に逆転トライを献上。この試合の勝ち名乗りを受けたのは三重Hだった。

公式戦では実に3月1日の清水建設江東ブルーシャークス戦以来の敗戦だったが、試合後の指揮官と選手たちの口ぶりにショックや動揺はなかった。

「相手に対するリスペクトがないような言い方はあまりしたくはないですが、われわれのほうが強いです。なので、来週やり返します」。ゲームキャプテンとして会見に挑んだウィル・ゲニアは短い時間の中で「われわれのほうが強かった」という言葉を何度も口にした。

後半25分に木村朋也が決めたトライのあと、一時は22対12で優位に立っていた。「今日のアタックもすべて、シーズン中にやってきたことをただ、やっているだけです。次も自分たちがやってきたことを追求すれば勝てる」と木村も力を込めた。

ディビジョン2のレギュラーシーズンではシーズン終盤、破竹の7連勝で2位に食い込んだ花園L。それでもD1の修羅場を潜ってきた三重Hは、今季初めて対峙する上位カテゴリーの相手だった。しかし、花園Lは向井昭吾ヘッドコーチの下で積み上げてきたスタイルで真っ向勝負を挑み、堂々と渡り合っていた。

「D1との差はあまり感じなかったし、むしろしっかりと通用した。この負けはポジティブに捉えています」と木村はすでに一週間後に待つリターンマッチを見据えていた。

一方で、D1では苦しみながらも、瀬戸際で地力と意地を見せた三重Hの勝利に対する執念も見事だった。「最後の最後までは相手のペースで試合を運ぶことになってしまいました」とキアラン・クローリー ヘッドコーチは敵を称えた一方で、「しばらく勝利から遠ざかっていたのでこの勝利で自信を付けることもできます」と劇的な勝利がもたらした意味をかみ締めた。

敗戦の中にも光明を見出した花園Lと、D1残留に向けて大きな勝利を手にした三重Hの入替戦はいわば“前半”が終わったばかり。気まぐれな軌道を描くラグビーボールさながらの、先の読めない戦いには第二幕が用意されている。

(下薗昌記)

花園近鉄ライナーズ(D2)

花園近鉄ライナーズの向井昭吾ヘッドコーチ(左)、ウィル・ゲニア ゲームキャプテン

花園近鉄ライナーズ
向井昭吾ヘッドコーチ

「ありがとうございました。後半39分までは試合を作れましたが、最後のところで自分たちがミスをしてしまいました。一番信頼しているプレーヤーを出したので、そこでミスをしてしまったのはしょうがないと思っています。最後のところでトライラインを破らせてしまったディフェンスについては、みんながフェーズを重ねて頑張ってくれたんですが、あそこを止められるようにしたいです。幸いにしてもう1試合がありますので、得失点差がマイナス4点ということなんですけど、そこにフォーカスして次は自分たちのいいところをもっと出してディビジョン1に行けるように頑張りたいと思います」

──最後の最後に勝利を逃した形になりましたが、D1のチーム相手にうまくいった手ごたえもあったと思います。2戦目に向けて修正したい点を教えてください。

「今日は風もあって、ラインアウトでマイボールにするところなど、セットピースで『こうやって攻めたい』というときに(相手が想定どおりに)来なかった。あとは相手のここを突けばいい、というようなところは分かったので、そのあたりを修正して次に向かいたいと思います」

──次の試合が今季最終戦になります。意気込みとたくさんのファンに向けてのメッセージをいただけますか。

「ギリギリのゲーム(チーム状況)になってから、私がずっと言っているとおり、一戦必勝ということ。今日のゲームというのは、選手にはテストマッチだと言いました。テストマッチというのはだいたい2回あるのが普通なので、次のテストマッチは必ず勝ちたいと思います」

花園近鉄ライナーズ
ウィル・ゲニア ゲームキャプテン

「非常に残念です。試合の大部分の時間帯でわれわれのほうが勝っていたので、最後の最後のミスであのような結果になってしまって非常に残念です。セットピースなど修正しなければいけないところもありますけど、やっぱりあのような負け方はつらいです。ただわれわれは、われわれのことを信じていますし、仲間のことも信じています。相手に対するリスペクトがないような言い方はあまりしたくはないですが、われわれのほうが強いです。来週やり返します」

──最後の最後に勝利を逃した形になりましたが、D1のチーム相手にうまくいった手ごたえもあったと思います。2戦目に向けて修正したい点を教えてください。

「先ほども申し上げたとおり、大部分ではわれわれのほうが勝っていました。相手の戦い方も見られましたし、われわれはきっちり対応できました。なので、課題となる部分はプレッシャーが掛かる場面でミスをしないこと、特にセットピースです。そこに関しては、選手個人がこの1週間しっかり取り組んで、修正してもらいたいと思います。

やはり、個々の力が集まってチームの力となるので、個人が課題を考えて、それを1週間取り組んで修正してほしいと思います」

──次の試合が今季の最終戦になります。意気込みとたくさんのファンに向けたメッセージをいただけますか。

「やはり、自分たちがやっていることを楽しんでやっていきたいです。戦術的な部分以外では、チームは本当に固まってきました。チームになりつつあります。練習も本当に楽しくできていますし、この仲間でやっていることを本当に楽しんでいます。先ほど申し上げたとおり、多くの時間帯ではわれわれのほうが強かったです。一つのペナルティでこのような結果になってしまっただけなので、月曜日から本当にポジティブな雰囲気をもって、ハードワークして勝ちをもぎ取りたいと思います」

三重ホンダヒート(D1)

三重ホンダヒートのキアラン・クローリー ヘッドコーチ(右)、パブロ・マテーラ ゲームキャプテン

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「試合に最終的に勝てたのは良かった部分で、来週の試合に向けて自分たちがポイントをもった上で戦えるというのは、すごく大きなことであります。花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)さんのパフォーマンスがとても良くて自分たちは苦しめられました。

私は相手がすごいと思ったのですが、特にスクラムでプレッシャーを掛けられ、ラインアウトもプレッシャーを掛けられて、最後の最後まで自分たちは相手のペースで試合を運ぶことになってしまいました。最後の20分ぐらいから最後の瞬間まで、自分たちがやらないといけない仕事を選手たちがこなしてくれたというところは、とても良くできたと思っています。ただ、来週もまた大きなゲームになるので、ハードワークして準備を整えて試合に向かいたいと思います」

──今日は郡司健吾選手が(昨季・今季を通じて)初のメンバー入りから後半の早い時間に投入されてトライも取りました。その起用の決断の理由を教えてください。

「正直なところを言いますと、そのポジションでけが人が多いので今日は郡司を起用することになりましたが、郡司に関して言うと、10番、12番、15番ができるので、カバーできるエリアが多いという理由でメンバーに入っていました。

ヤンコ・スワナポールを入れたいと思ったタイミングのときにどうしても外国人(カテゴリBの選手)を一人抜かないといけないことになったので、ダーヴィッド・ケラーマンを抜いてそこに郡司を入れることになりました。郡司は今季、『Dゲーム』(主力以外のゲーム)に主に出ていてあまりこのレベルの試合に出ていなかったにもかかわらず、とてもいいパフォーマンスをしてくれたので自分的にもとても満足しています」

──リーグ戦とはまったく違う入替戦に向けた準備で、フォーカスしたことを教えてください。

「ラグビーはラグビーなので自分たちが特に意識したものはないんですが、ただ、コントロールできるものにフォーカスを置いてコントロールし続けようという話をしました。コントロールできるものでいうと、自分たちのパフォーマンスはコントロールできるものだと思っています。ただ天気や、レフリーのディシジョンメイキングのことは自分たちがどうしようもないので、自分たちができることをし続けるというふうに進めてきました。

そしてアタックのプランという部分も、自分たちが今までリーグ戦でやってきたのと同様に組み立てていきました。

良かった部分で言うと、勝てたということ。しばらく勝利から遠ざかっていたので、この勝利で自信を付けることもできますし、相手は7連勝をしていたので、自分たちが勝ったことで次のゲームは優位に運べるかなと思っています」

三重ホンダヒート
パブロ・マテーラ ゲームキャプテン

「今日の試合に関しては、けっこうタフな試合になったと感じています。フィジカル面も花園Lさんが上げてきて、自分たちもフィジカリティーを出そうという話をしていたんですが、相手にもフィジカリティーがあるという印象を受けました。完璧ではなかったですけど、最終的に勝利をたぐり寄せることができたのは、自分たちにとっては良かったと思います。ただ、実際に喜ぶのは早いと思っていて、160分の試合の半分がまだ終わったところという感覚なので、勝ったのはもちろんよかったですが、まだまだ来週も試合があります。最後に鈴鹿でできる試合を特別なものにしたいという思いがあるので、そこまで準備をしていきたいと思います」

──ヘッドコーチからけが人の話が出ましたが、レメキ ロマノ ラヴァ選手がこのタイミングで戻ってきて、パブロ・マテーラ選手もスタメンで戻ってきました。チームにけが人が戻ってきたことでどういう変化があると感じていますか。

「ラグビーをしているとやはりけがが付き物で、それは自分たちがコントロールできないものなのでどうしようもないのですが、自分たちができることとしては、そこに順応して自分たちができる限りのことをするだけだと思っています。ただ、けがをしたタイミングでいうとほかの選手たちの(出場)機会にもなるので、今日でいうと、郡司というのは常に自分の出場機会を探して頑張っていた選手の一人で、実際に試合に出ることになったんですが、そういう選手が出るときは、やっぱり自信をもってほしい。自分はそういうことをゲーム中に伝えています。

もちろん、完璧な試合運びではなかったものの、天気の関係もありましたし、その中でも自分たちが勝利をつかめたというのは良かったです。

レメキが帰ってきたのは本当にチームには大きいことで、本人のパフォーマンス自体も今日は良かったと思いますし、自分的にも帰ってきてくれてうれしいと感じています。今日は勝ちを喜びますが、また来週、明日からしっかりとリカバリーして練習に取り組んでいきたいと思います」


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