NTTリーグワン2024-25 見どころ&注目選手
[DIVISION 1]CONFERENCE A

ついに到達したD1の舞台。率いるはスコットランドの英雄

浦安D-Rocks

ようやくトップカテゴリーにたどり着いた。今年5月、聖地・東大阪市花園ラグビー場でディビジョン1昇格を決めたときも、8月に開かれたグレイグ・レイドロー ヘッドコーチの就任会見の場でも、キャプテンの飯沼蓮は「やっとスタートラインに立てた」と浮かれた様子は見せなかった。選手個々ではD1を知る選手も少なくないが、創設から三度目のシーズンに臨むチームにとっては初の挑戦。2024-25シーズンは、浦安D-Rocksの新たな旅の始まりとなる。

新シーズンに向けて、チームは大きな決断を下した。それはヘッドコーチの交代。過去2シーズン指揮を執ったヨハン・アッカーマン氏から、スコットランドの英雄であるグレイグ・レイドロー氏がその任を引き継いだ。選手としてもアシスタントコーチとしてもこのクラブを知る39歳の若き指揮官は、「スマートに戦う」と決意を述べ、プレーオフトーナメント進出ラインである「トップ6」を目標に掲げた。

グレイグ・レイドローHCの選手時代もコーチ時代も知る竹内柊平は「選手主体のチーム作りをしてくれている」とその印象を語り、初のD1挑戦に対しては「強気な姿勢も大事だけど、まずは自分たちの現状を見て、強いチームを作っていくための基盤を作るのが今季だと思っている。まずは上位チームに食い込めるように、もっと言えばトップ6のプレーオフに行けるような強いチーム作りをして、しっかりと何年後かに優勝するための準備をしていきたい」とD1初年度を見据えている。

田村煕や石井魁、サム・ケレビなど昨季の主力は多く残り、そこに南アフリカ代表のヤスパー・ヴィーセを獲得。日本代表としてラグビーワールドカップにも出場したヘル ウヴェがクボタスピアーズ船橋・東京ベイから、同じくツイ ヘンドリックが東京サントリーサンゴリアスから加入。選手層の厚みは増した。昨季、圧倒的な力を見せD2を駆け抜けた浦安DRがどんなインパクトを残せるか。チームフィロソフィーの『コネクト』を合言葉に、新生・浦安D-RocksはD1に殴り込む。

(須賀大輔)

●注目選手 PR 竹内柊平

クラブ史上初のD1での戦いのけん引役として期待されるのが、竹内柊平だ。昨季のD2制覇、D1昇格に大きく貢献したプロップは、このプレシーズンには桜のジャージーを身にまとい、多くの強豪国と対戦しワールドスタンダードを肌で体感。その世界基準をチームへ還元すると約束する。目標は「日本一の3番になること」。待ちわびた舞台に向けて「めちゃくちゃワクワクしています。ワクワクしかないですね」と心を躍らせている27歳が、熱く激しく泥臭く、D1初挑戦のチームを引っ張っていく。

PR 竹内柊平

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大震災から30年を迎えるシーズン。「神戸のために優勝したい」

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)の昨シーズンは結果こそ5位に終わったが、就任1年目だったデイブ・レニー ヘッドコーチ体制のコンセプトは着実にチームに根付いた。共同キャプテンを務めるニュージーランド代表で109キャップの世界的プレーヤー、ブロディ・レタリックは言う。

「まったくの新しいものを作るというよりも、判断のところを修正し、精度を高め、積み重ねることを特に意識している」

昨シーズンとは、世界的指揮官による‟学びの舞台”。デイブ・レニー ヘッドコーチはあらためてチームのスタイルに言及する。

「自分たちは展開するラグビーをしたいと思っている。相手がついてこられない状況を作りたい。その上でバランスもとらないといけないことも理解している」

昨季はミスで重要なゲームに敗れることも見られた。指揮官は試合の流れ、勝機を手繰り寄せる力を高めることにも注力しているという。

「リスクなしに蹴っていこうというチームにはならない。なので、ミスは必ず起きる。そのミスをどれだけ最小限に抑えられるか」

精度はプレーヤーが向き合い続ける課題。その課題をクリアし、向上を実現すれば、デイブ・レニー ヘッドコーチに限らず、チームの誰もが頂点をつかめると信じている。ブロディ・レタリックは「自分たちが学んだことを積み重ねて、形にすることで今季はいいシーズンにできる。成長を続けることをやめないようにしたい」と意気込んだ。

そして、今季は神戸Sにとって特別なシーズンでもある。来年の1月17日、阪神・淡路大震災から30年を迎える。共同キャプテンに就任した神戸出身の李承信は言葉に覚悟を込めた。

「いま自由にラグビーができているのも当時の方々のおかげ。優勝することでスティーラーズやラグビーを知ってもらえる。今シーズンは特に神戸のために優勝したい思いが強い」

スコットランド代表で45キャップを数えるジョージ・ターナーら新たな選手も加わり、代表デビューを飾った濱野隼大ら若手も育つ。神戸Sのラグビーは、常に攻守ともにアグレッシブが信条だ。多くの思いを背負い、勇敢に頂点を目指す。

(小野慶太)

●注目選手 FB 松永貫汰

「狙えるならトライも多く取りたいし、ラインブレイクも昨季同様にランキングに食い込んでいけたら」。そう話すのは松永貫汰。昨季チーム唯一の全試合フル出場を遂げ、ゲインメーターで2位、ラインブレイクやディフェンス突破でリーグ4位に入った注目株だ。俊敏なフットワークや加速力などに秀でる彼をデイブ・レニー ヘッドコーチは「すごくエキサイティングなラグビーができる選手」と評する。代表合宿でも研鑽を積んだ3年目の新鋭、その躍動するアタックは見逃せない。

FB 松永貫汰

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観て楽しく、勝って楽しい。「どこが相手でも勝てる」チームに

静岡ブルーレヴズ

1984年創部のヤマハ発動機ラグビー部を母体とする老舗クラブ。リーグワンでは初年度からディビジョン1に所属して3シーズン連続で8位に終わっているが、今季は「プレーオフが目標じゃなくて、1位を目指してチーム力で勝っていきたい」と就任2年目の藤井雄一郎監督は自信を見せる。

今季のラグビーは、昨季からの継続と進化が基本。伝統的なセットピースの強さに加えて、トライを取り切る攻撃と、粘り強い守備の強化に力を注いでいる。プレシーズンでは、守備の細かいコミュニケーションによる意思統一をしてスキをなくし、ゴール前での我慢強さも対外試合の中で表現できている。昨季は22mラインに入った際のトライ獲得率が低いという課題があったため、ジェイミー・ジョセフ前日本代表ヘッドコーチを強化合宿に招くなどして、攻撃オプションを増やしてきた。

戦力面では大型補強が目立つわけではないが、主力選手がほぼ残り、将来性豊かな若手も多く加わっている。また「カテゴリAの選手が増えたのはすごく大きい」と藤井監督が言うように、マリー・ダグラス、サム・グリーン、シルビアン・マフーザ、ヴェティ・トゥポウ、ショーン・ヴェーテーが今季からカテゴリAに変わり、試合登録枠・出場枠をあまり気にせずメンバーを組めるようになった。これは実質的に大きな補強と言える。

若手のヴェティ・トゥポウとショーン・ヴェーテーはパワフルさが抜群で、新加入センターのダミアン・マーカスはチーム内では「チェスリン・コルビっぽい」と評判で、突破力が楽しみな期待の21歳だ。

今季もスクラムの軸となるベテラン日野剛志は「かつてベスト4の常連だった時代に近いセットピースの強さとディフェンスの粘り強さが出てきて、アタックでも藤井さんの新しいエッセンスが浸透して盛り上がるトライが増えてくると思います。それらがかみ合って、ペナルティやミスが減ってくれば、どこが相手でも勝てるチームになれると思います」と手ごたえを口にする。

観て楽しく、勝って楽しいラグビーを実現するための準備は、着実に整いつつある。

(前島芳雄)

●注目選手 SO 家村健太

京都産業大学出身で、今季はバイスキャプテンに任命された23歳のスタンドオフ。攻撃時の素早い判断やパス、キックなどの持ち味に加えてクレバーさも光り、「彼が成長することがチームの成長にもつながる。若いけどリーダーシップがあるし、もっともっと良くなる選手」と藤井監督も大きな期待を寄せる。本人も「10番としてもっと信頼されて、もっとチームを率いられるように、ワールドクラスの選手のような安定感を身に付けていきたいです」と強い覚悟で3季目に臨む。

SO 家村健太

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王者ではなく、チャレンジャー。けん引するのはリーチ マイケル

東芝ブレイブルーパス東京

昨季、リーグワン初優勝を達成した東芝ブレイブルーパス東京。トップリーグ時代を含めて14年ぶりに頂点にたどり着いたが、トッド・ブラックアダー ヘッドコーチは「いまだに優勝を振り返っている選手は一人もいません。まだまだ成長できます」と、チームをさらに強くすることに集中している。

2年連続でキャプテンを務めるリーチ マイケルも「『連覇』という言葉は使いません。チャレンジャーとして追いかけたほうが力は出ます」と語る。新しいシーズンに向けて、チームとして伸びている部分については「若手で戦力になる選手が増えています。また、少し変わったアタックも入れているので、昨季とは違ったラグビーになると思います。楽しみにしていてください」と笑顔を見せた。

昨季の優勝に大きく貢献した元ニュージーランド代表のリッチー・モウンガとシャノン・フリゼルは、ラグビーワールドカップがあった昨季よりも早くチームに合流。プレシーズンマッチから元気な姿を見せていて、よりチームにフィットした状態で開幕を迎えられそうだ。

日本代表の原田衛、ワーナー・ディアンズ、ジョネ・ナイカブラ、松永拓朗は国際舞台でタフに戦い、貴重な経験を積んだ。また、日本代表に近づいている選手たちも充実の時を迎えている。チームの中心選手に成長し、確かな自信をつかんだフランカーの佐々木剛、センターの森勇登、ウイングの桑山淳生は、今季も相手チームにとって脅威となるだろう。

新戦力に個性豊かな選手がそろったことも、今季のチームの特徴となっている。明治大学出身の池戸将太郎は身長180cmの大型SHとしてポジション争いに挑む。力強さが光るプロップのヴェア・タモエフォラウや、長身ロックの亀井茜風らも初出場を目指している。

移籍組ではクボタスピアーズ船橋・東京ベイから金秀隆ら3選手が加わった。2021年にトップリーグ新人賞を獲得している金のスピードあるランは、チームの新たな魅力になりそうだ。

(安実剛士)

●注目選手 NO8/FL リーチ マイケル

日本代表87キャップを誇る“レジェンド”、リーチ マイケルが今季も主将を務める。昨季は悲願のリーグワン初優勝を果たしたが、「連覇」という言葉は封印し、目の前の試合に集中。「先を見ずに1試合、1試合戦います。どんな天候でも、どんなメンバーでも絶対に勝つ。結果がすべてなので」。36歳となって迎える新シーズンに向けて、闘将は「ワークレートを磨きたい。開幕戦、フルパワーでできると思います」と熱く燃えている。

NO8/FL リーチ マイケル

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スター選手を加えてパワーアップ。さらなる“インパクト”を

三菱重工相模原ダイナボアーズ

リーグワン初年度にディビジョン1昇格。D1初参戦の2022-23シーズンは入替戦を制して残留。そして昨シーズンは入替戦を回避する9位でフィニッシュした。チームが目標に掲げる『2027年の戴冠』達成へ、三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)は着実な歩みを見せてきた。

チームの代名詞ともいえるプレシーズンの早期始動は今季も同様。若手選手のトレーニングを皮切りに7月から猛練習を重ねてきた。主な課題は、「試合をとおしてパフォーマンスの一貫性を持ち続ける」ことだ。

攻撃を担当するジョー・マドック アシスタントコーチが昨シーズンから加わり、得点力が向上。そして今季、新たに加わったのがフィジカルとフィットネスを強化するヘッドオブアスレティックパフォーマンスのアンドレ・クインだ。

彼の指導でより実戦的になったという練習内容をバイスキャプテンの鶴谷昌隆はこう表現する。

「筋トレに次ぐ筋トレ、そのあとにフルコン(体のぶつかり合い)、ワットバイク(トレーニング用の自転車)。キツい状態から、さらにどれだけできるか。最大値を上げていくようなトレーニング方法です」

その成果は、一回り大きくなった選手たちの体を見れば明らかだ。グレン・ディレーニー ヘッドコーチも「アンドレ・クインさんが新たなスタンダードを選手にもたらす」と盟友の招へいに胸を張る。

また、横浜キヤノンイーグルスから移籍加入したフロントローの安昌豪と津嘉山廉人、三重ホンダヒートから加わった李承爀がスクラムに経験値をもたらしている。カテゴリAのチャーリー・ローレンスがトヨタヴェルブリッツから加わったことも心強い。

リーグ全体でも今季の目玉補強の一つと言えるのが、南アフリカ代表で24キャップを持つカートリー・アレンゼ。ラグビーワールドカップ2023では5試合で2トライをマークし、2連覇に貢献した快足プレーヤーだ。

チームに加わったスター選手について、鶴谷は「チームに合流して間もないですが、しっかり準備して練習に臨むところはプロアスリートだと感じます。そういうところがチームに還元されていると思います」と評した。

今季のチームスローガンは、『心燃える瞬間を -DYNA IMPACT-』。これまで以上のインパクトをリーグにもたらすべく、一戦一戦をしっかりと戦い、次のステージへの道を拓く。

「今季のダイナボアーズがどこまで行けるのか、皆さんの期待に応えられるように頑張っていきたい。まだまだ成長していくダイナボアーズを楽しみにしてほしい」(グレン・ディレーニー ヘッドコーチ)

(宮本隆介)

●注目選手 WTB/FB カートリー・アレンゼ

南アフリカ代表の28歳。ポジションはWTB/FB。ニックネームは「カート」で、ヘッドキャップがトレードマークだ。12月7日のリコーブラックラムズ東京との練習試合にFBで先発出場した。その試合でのプレーについて鶴谷は「キックカウンターやパスを受けたあとが速く、ゲインラインはだいぶ越えていたと思う。走るだけじゃなくてスキルも高い」と評価した。ウォルト・スティーンカンプとはブルズ(南アフリカ)時代のチームメート。

WTB/FB カートリー・アレンゼ

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ともに歴史を塗り替える。ターゲットは「トップ」

横浜キヤノンイーグルス

2シーズン連続でプレーオフトーナメントに進出している横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)が、新シーズンに掲げるターゲットは「トップ」(梶村祐介)。就任5年目を迎える知将、沢木敬介監督の下、横浜Eはチームの歴史を塗り替えるために結束している。

今季のチームは“アタッキング・ラグビー”をプレシーズンにブラッシュアップ。日本代表の活動からチームに合流した3季目のキャプテンを務める梶村は、ボールの動かし方の変化に目を見張る。

また例年の課題であるディフェンス面も強化中。CJ・ファンデル・リンデ アシスタントコーチの下、ディフェンス面の改善に努めている今季のチームは「ディフェンス面が強みになるかもしれない」(梶村)。近年はタックルを筆頭に、ディフェンス面のスキルアップが目覚ましい梶村は「ターンオーバーからのアタックを増やしていきたい」と意欲的に語った。

もちろん、リーグワンでトップに君臨することは至難の業。昨季の横浜Eは僅差のスコアで競り負ける試合もあったため、チームリーダーの梶村は「接戦を制することでシーズンの結果につながるし、目の前の試合に集中していきたい」と気を引き締める。

プレシーズンではスタンドオフの武藤ゆらぎやセブンズ日本代表の石田吉平ら、若手選手がハイパフォーマンスを発揮。チームに新風が吹き込んでいるため、シーズン中のさらなるスケールアップも望める状況だ。特に“絶対的10番”田村優の後継者的存在と目される武藤に対するチーム内の期待値は高く、「これまで10番は優さん頼みだったが、ゆらぎの存在でもっとチームのテンポが上がるかもしれません。違うラグビーができるかも」と梶村は期待を寄せる。

『共に超える』をシーズンテーマに掲げた2024-25シーズン。梶村は言う。

「これまでは優勝を『したいしたい』と思っていてもイメージはできていませんでしたが、いまはイメージできる組織になってきた」

新生・横浜Eの挑戦は必見だ。

(郡司聡)

●注目選手 WTB 石田吉平

『開幕前メディアカンファレンス』の壇上に立った梶村祐介が、名指しで注目の選手に挙げたセブンズ日本代表の新星。梶村いわく、石田のストロングポイントは「アタックに目がいきがちな中、ディフェンスで力強いタックルができるし、ワークレート(仕事量)が高い選手」。特に「アタックの爆発力が出る」(梶村)パワーは、リーグワンを席巻するかもしれない。「15人制でも日本代表のポテンシャルはある」と日本代表の梶村も太鼓判。

WTB 石田吉平

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Teams

DIVISION 1

  • 浦安D-Rocks
  • クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
  • コベルコ神戸スティーラーズ
  • 埼玉ワイルドナイツ
  • 静岡ブルーレヴズ
  • 東京サンゴリアス
  • 東芝ブレイブルーパス東京
  • トヨタヴェルブリッツ
  • 三重ホンダヒート
  • 三菱重工相模原ダイナボアーズ
  • 横浜キヤノンイーグルス
  • リコーブラックラムズ東京

DIVISION 2

  • グリーンロケッツ東葛
  • 九州電力キューデンヴォルテクス
  • 清水建設江東ブルーシャークス
  • 豊田自動織機シャトルズ愛知
  • 日本製鉄釜石シーウェイブス
  • 花園近鉄ライナーズ
  • 日野レッドドルフィンズ
  • レッドハリケーンズ大阪

DIVISION 3

  • クリタウォーターガッシュ昭島
  • 狭山セコムラガッツ
  • 中国電力レッドレグリオンズ
  • スカイアクティブズ広島
  • ヤクルトレビンズ戸田
  • ルリーロ福岡
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