クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
「世界の偉業のほとんどは、絶望的な状況でもあきらめなかった者たちによって成し遂げられている」
アメリカの作家、デール・カーネギーが残したこの言葉を、闘いの中で表現し続けるラグビーチームがここにいる。
それは2023年5月、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)は創部45年目にして初めて、国内最高峰リーグの王座に座った。振り返ると、そこにあるのは苦難の轍である。リーグワンの前身・トップリーグが創設される以前、S東京ベイは下位リーグの4部、つまり当時の関東社会人リーグの最下層で奮戦。そこから3部、2部、1部、そして上位リーグ昇格と時間をかけてはい上がり、時に足踏みし、時に泥だらけになり、時に悔し涙を流しながら、ただひたすらまだ見ぬ頂点に向かい走り続けた。
かつてはトップ争いに絡むなど夢のまた夢だった。しかし、人は進むべき方向を間違えなければ、いつか必ず目的地にたどりつける。なぜなら、「栄光」は、一部のエリートたちだけのものではないからである。2022-23シーズンの優勝劇から、そんなメッセージを読み取ったファンは少なくないだろう。
ディフェンディング王者として挑んだ昨季は6位に甘んじたものの、シーズンをとおして新世代の選手たちが台頭。さらに選手層の厚みが増した感がある。また、多くの選手、関係者がS東京ベイの特色として挙げるのが温かいクラブの雰囲気と、高いファミリー意識。そうした中で育まれた絆の強さが、チームを躍進へと導く。昨季入団した大型ルーキー、江良颯が語る。
「苦しい展開が続いていても、みんなで『勝とう!』という思いを共有して、ハードワークを続ける。試合でも練習でも、しんどいときこそ、そういった光景が見られるんです。本当に良いチームだと感じました」
だからS東京ベイの試合には心に響く魅力がある、明日への活力となるエネルギーがある。今季のテーマはもちろん『王座奪還』。歴史をさらに前に進めるために、いま再び頂を目指す。
(藤本かずまさ)
●注目選手 HO 江良颯
昨シーズン、帝京大学在学中に入団し、デビュー後すぐに頭角を現した新鋭。強靭な肉体でスクラムの最前線を担う。このオフには負傷箇所の手術を決断するも、11月のプレシーズンマッチで試合復帰。開幕を前に「手術を言い訳にしたくなく、本当に強くなって帰ってこようと思っていた。いまのコンディションは120%」と力強いコメントを残した。2シーズン目となり、チームにもさらにフィット。今季は新人賞レースにも名を連ねることになりそうだ。
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