NTTリーグワン2024-25 見どころ&注目選手
[DIVISION 1]CONFERENCE B

苦しい展開でも続けるハードワーク。その姿は心に響く

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

「世界の偉業のほとんどは、絶望的な状況でもあきらめなかった者たちによって成し遂げられている」

アメリカの作家、デール・カーネギーが残したこの言葉を、闘いの中で表現し続けるラグビーチームがここにいる。

それは2023年5月、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)は創部45年目にして初めて、国内最高峰リーグの王座に座った。振り返ると、そこにあるのは苦難の轍である。リーグワンの前身・トップリーグが創設される以前、S東京ベイは下位リーグの4部、つまり当時の関東社会人リーグの最下層で奮戦。そこから3部、2部、1部、そして上位リーグ昇格と時間をかけてはい上がり、時に足踏みし、時に泥だらけになり、時に悔し涙を流しながら、ただひたすらまだ見ぬ頂点に向かい走り続けた。

かつてはトップ争いに絡むなど夢のまた夢だった。しかし、人は進むべき方向を間違えなければ、いつか必ず目的地にたどりつける。なぜなら、「栄光」は、一部のエリートたちだけのものではないからである。2022-23シーズンの優勝劇から、そんなメッセージを読み取ったファンは少なくないだろう。

ディフェンディング王者として挑んだ昨季は6位に甘んじたものの、シーズンをとおして新世代の選手たちが台頭。さらに選手層の厚みが増した感がある。また、多くの選手、関係者がS東京ベイの特色として挙げるのが温かいクラブの雰囲気と、高いファミリー意識。そうした中で育まれた絆の強さが、チームを躍進へと導く。昨季入団した大型ルーキー、江良颯が語る。

「苦しい展開が続いていても、みんなで『勝とう!』という思いを共有して、ハードワークを続ける。試合でも練習でも、しんどいときこそ、そういった光景が見られるんです。本当に良いチームだと感じました」

だからS東京ベイの試合には心に響く魅力がある、明日への活力となるエネルギーがある。今季のテーマはもちろん『王座奪還』。歴史をさらに前に進めるために、いま再び頂を目指す。

(藤本かずまさ)

●注目選手 HO 江良颯

昨シーズン、帝京大学在学中に入団し、デビュー後すぐに頭角を現した新鋭。強靭な肉体でスクラムの最前線を担う。このオフには負傷箇所の手術を決断するも、11月のプレシーズンマッチで試合復帰。開幕を前に「手術を言い訳にしたくなく、本当に強くなって帰ってこようと思っていた。いまのコンディションは120%」と力強いコメントを残した。2シーズン目となり、チームにもさらにフィット。今季は新人賞レースにも名を連ねることになりそうだ。

HO 江良颯

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野武士軍団、3シーズンぶりの王者へ。「やるべきことは変わらない」

埼玉パナソニックワイルドナイツ

王者に返り咲くことがミッションだ。埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)はリーグワン初年度の2022年にプレーオフトーナメントを制し初代王者となった。だが、連覇を狙った2022-23シーズンは決勝でクボタスピアーズ船橋・東京ベイに敗れ、「王座奪還」を掲げた昨季は決勝で東芝ブレイブルーパス東京に屈した。

その決勝のあと、ロビー・ディーンズ監督は「勝つことはできなかったがこのチームを誇りに思う。もう一度、ここに戻ってくる」とタフに戦い続けた選手たちを称えた。チームを長く支えてきた堀江翔太、内田啓介は昨シーズン限りで現役を引退、さらに松田力也がトヨタヴェルブリッツに移籍した。坂手淳史キャプテンは、堀江から「また新しいチームを作っていかなければあかんなぁ」と決勝のあとにエールを送られたという。

過去2年で惜しくもタイトルを逃したチームは、3年ぶりの王座に就くために新たな一歩を踏み出した。埼玉WKが目指すべき場所、そして強度と規律を重視した戦いは変わらない。

新シーズン開幕を前に士気上がる野武士軍団は、攻守の精神的支柱であるキャプテンの坂手、稲垣啓太を筆頭に国内外のタレントがそろう。“熊谷ファンタジスタ”の異名を持つ山沢拓也、走攻守そろった次世代の司令塔である小山大輝、速さと強さを見せるラインブレイカーのディラン・ライリー、いまやチームに欠かせない存在となった長田智希、さらにはオールラウンダーのジャック・コーネルセン、パワフルなベン・ガンターや福井翔大ら日本代表勢が屋台骨を支える。

世界的なプレーヤーも健在だ。南アフリカ代表での経験も豊富なダミアン・デアレンデとルード・デヤハー、オーストラリア代表のマリカ・コロインベテらワールドクラスの戦士が臨戦態勢。山沢京平、エセイ・ハアンガナ、齊藤誉哉も急激な成長を遂げている。山沢拓也が「2年連続、決勝で負けた悔しさを忘れてはいけない」と話せば、福井は「何人かの選手が抜けても、自分たちがやるべきことは変わらない。目標は、絶対優勝だ」と力を込める。代表組が合流したチームは開幕前に宮崎合宿を行い、12月21日の開幕戦に照準を合わせていく。

(伊藤寿学)

●注目選手 FL 福井翔大

球際の戦いで攻撃の芽を摘んで反撃のスイッチ役となる25歳の日本代表フランカー。ボールを持てば、的確な読みとダイナミックなランでチームにモメンタムを生み出す。ドレッドヘアは、昨季限りで引退した堀江翔太の魂を引き継いだ。「今季の目標は絶対優勝。個人的なことよりもチームの勝利のためにプレーするだけ」。王座奪還のキーマンだ。

FL 福井翔大

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目指す7年ぶりの頂点。前回優勝時の10番がヘッドコーチ就任

東京サントリーサンゴリアス

リーグワンでの過去3シーズン、すべてでトップ4入りしながら、まだ頂点をつかめていない東京サントリーサンゴリアス。トップリーグ時代の2017-2018シーズン以来の覇権奪還を目指す今季は、前回優勝時に10番としてチームを支えた小野晃征が新ヘッドコーチに就任。新体制のもと必勝を期すシーズンだ。

小野ヘッドコーチが自ら掲げた今季スローガンは『WIN THE ONE』。優勝という唯一の目標に向け、選手個々が目の前の一つひとつのプレーや事象に対して打ち勝っていくことを目指している。その「目の前の勝負」は試合だけに限らない。堀越康介キャプテンが今季の変化を語る。

「普段のトレーニングから、対人でバチバチやり合う練習が増えました。また、選手とコーチが一対一で意見交換する機会も増えています。コーチ陣は常にオープンマインドなので話を聞きやすいですし、チームが目指すものと自分がしたいこと、その小さなズレをなくす作業を繰り返すことで、いい準備のもとシーズンに入れます」

実際、プレシーズンマッチは7戦全勝。ケガのため、過去2シーズン連続で“全休”していた元オーストラリア代表、ショーン・マクマーンも実戦復帰しており、選手個々の仕上がり具合も順調だ。さらに、チームのDNAともいうべき指針『アグレッシブ・アタッキング・ラグビー』もさらなる進化を見せている。

「今季は、アグレッシブ・アタッキング・『ボディ』とアグレッシブ・アタッキング・『マインド』、その両軸の徹底を目指しています。体が仕上がっても戦う気持ちがなければいいラグビーはできないし、その逆もまた然り。『ボディ』も『マインド』もどちらも高いレベルを目指すことは大変ですが、少しずつ形になり、それが自分たちの自信にもつながっています」

トライ王経験のある尾﨑晟也や『ワールドラグビーアワード2024』でドリームチーム(ベスト15)入りを果たしたチェスリン・コルビらタレント豊富なバックス陣に加え、「今季はフォワード陣の仕上がりにも自信があります。自分もここ数年で最高のコンディションです」と語る堀越キャプテン。7シーズンぶりの頂点へ、準備は万端だ。

(オグマナオト)

●注目選手SO 髙本幹也

昨季はルーキーながらスタンドオフ(以下、SO)で全試合先発出場した髙本幹也。正確無比の左足キックを武器に得点ランクでもリーグ3位につけ、文句なしで新人賞を受賞した。「チームの若手代表として引っ張ってくれているのが幹也です。誰よりも最後まで練習していますし、昨季とはまた違った責任感が生まれ、それがプレーにも反映されています」と語るのは堀越康介キャプテン。元日本代表SOだった小野晃征ヘッドコーチの薫陶を受け、リーグNo.1のSOを目指すシーズンとなる。

SO 髙本幹也

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世界を制した強力タッグが復活。松田力也と姫野和樹の同級生コンビも共闘へ

トヨタヴェルブリッツ

リーグワンが誕生してから、5位、6位、7位と順位を落としている一方で、クオリティーの高い選手がそろっていると言われ続けてきたトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)。今季こそリーグの主役に躍り出そうな予感がする。

理由は大きく二つ。一つ目は、日本最高の司令塔とも評される松田力也が、常勝軍団の埼玉パナソニックワイルドナイツから加入したこと。髙橋汰地は「力也さんはキックパスの精度が高く、アタックのオプションが広がった」と、早くもコンビネーションに好感触を得た模様。帝京大学の同期でもあり日本代表としてともに世界と戦ってきた姫野和樹は、「ゲームメーク、ゲームマネジメントが日本で一番うまい。強くて重くてデカいフォワードを前に進めてくれるし、トヨタVのスタンドオフに一番フィットする」と、大きな期待を寄せている。

もう一つは首脳陣。2019年度にディレクターオブラグビーに就任していたスティーブ・ハンセンが今季はヘッドコーチとして最初から現場に。そこに共同コーチとしてイアン・フォスターが加わった。二人はニュージーランド代表(オールブラックス)でも共闘し、ラグビーワールドカップ優勝など数々の栄光をつかみ獲ったコンビ。世界最強のタッグが復活したと言っていいだろう。

最高峰の首脳陣を得た姫野は「めちゃくちゃ面白いラグビーになっています。自由度も高くて自分たちのスキルを生かしながらプレーしていく感じですね。やるべきことがすべてオーガナイズされていてクリアになった」と、すでにチーム内に大きな変化が起きていると語る。

その二人の目標は、「リーグワンはすべてにおいて世界トップのタフなリーグだが、チームには才能がそろっている。もちろんわれわれは優勝を目指す」とコメントも一致。ラグビーを知り尽くした世界一の頭脳が、どうトヨタVを変化させるのか興味深い。

さらに、今季はキャプテン姫野の後継者と期待される奥井章仁など新人も実力派ぞろい。チーム内競争が激化し戦力は格段にアップするはずだ。これまでブレイクできそうでできなかったトヨタVが、リーグワンの台風の目になる。

(斎藤孝一)

●注目選手 FL 姫野和樹

「ひさしぶりにラグビーが楽しかった」と、日本代表のヨーロッパ遠征を終えた姫野。今回はキャプテンという肩書きが外れ、ヘッドコーチからも「自分にフォーカスをしてほしい」と言われたことで、自分の時間を増やすことができたようだ。そこで発見したのが、多くのものを背負い過ぎていた自分の姿。チームに戻ると再びそのキャプテンという肩書きが加わるが、楽しむ感覚を取り戻したこと、そして盟友・松田力也との共闘で、パワーアップした姫野が見られるはずだ。

FL 姫野和樹

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大幅入れ替えを敢行。トップ6入り、そして三重のために

三重ホンダヒート

2026-27シーズンから栃木県宇都宮市への移転を9月に発表した三重ホンダヒート(以下、三重H)。1961年に発足して以来、三重県鈴鹿市で63年間を過ごしたが「継続的、発展的に力を発揮するため」(前田芳人GM)、新たな地へと旅立つ。

ターゲットは「3年後の日本一」。“故郷”で戦う残りの2年間は、栄光を手にするための助走でもある。

ルーキーながら“バックスリーダー”に指名された北條拓郎は「トップ6という目標を掲げている中で半分以上の選手が入れ替わり、とても大きなシーズンになる。僕たちのエキサイティングなラグビーを見てほしい」と展望を語った。

昨季は世界的名将のキアラン・クローリー ヘッドコーチを迎えて挑んだ初のディビジョン1だったが、結果は1勝15敗の15位。得失点差は-502と最下位で、ホストゲームでは一度も勝てなかった。しかし入替戦で残留。再びD1の壁に挑むことができる。

移転の動きについては、選手たちはまだ実感が湧いていないという。だが「応援してくれた三重の方々に恩返しがしたい。目標達成のためにもホームで全勝することが必要になりますし、昨季のトップ6の相手に勝たなければいけない。今季はそれができると思います」と、北條はホストエリアへの思いを口にした。

目標に向かって進む三重Hの中で、“バックスリーダー”として彼が任されたものとは何なのか。「一緒にやっているレメキさん(レメキ ロマノ ラヴァ)は明るい性格なので、チームを盛り上げてくれます。僕はゲームをコントロールし、試合中に声をかけるのが役割。若手や同期の意見を取り入れながら新しい風を吹き込んで、いい影響を与えたい。それが自分の成長にもつながります」(北條)。

4年ぶりに復帰したレメキ ロマノ ラヴァとともに、ルーキー&最年長の“バックスリーダーコンビ”を組む。それがベテランと若手の間の潤滑油となり、チームをより一層加速させる。三重Hでのファイナルラップに向け、新生ホンダヒートのエンジンは十分に温まった。

(籠信明)

●注目選手 NO8 パブロ・マテーラ

『開幕前メディアカンファレンス』に登壇した北條は、注目選手を聞かれ「自分も見てもらいたいんですが…パブロ・マテーラです!」と答えた。「力強いキャリーが魅力的で、練習中でもみんな『パブロとは当たりたくない』と言うくらい筋肉量がすごい。岩みたいに硬いんです」。アルゼンチン代表のナンバーエイトはラグビーワールドカップ2023の日本代表戦で負った負傷のため昨季は8カ月を治療に費やしたが、4月に復帰してD1残留に貢献。今季は躍進のためにその圧倒的なパワーを発揮してくれるはずだ。

NO8 パブロ・マテーラ

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ヘッドコーチと世界的プレーヤーの加入で、よりエキサイティングに

リコーブラックラムズ東京

2024-25シーズン、新生・リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)が見られることを約束しよう。

タンバイ・マットソンを新ヘッドコーチに迎え、チームは「再起動」の意味を持つ『Reboot(リブート)』をスローガンに掲げた。

「組織を動かすことが上手な、頼りがいのあるヘッドコーチ」と話すは、再びの日本代表入りが待ち望まれるメイン平。指揮官自ら選手たちとコミュニケーションを取る姿勢が、チームに新しい風をもたらしているのだという。

そんな、選手たちからの信頼をすでに勝ち取ったタンバイ・マットソン ヘッドコーチが期待を寄せるのは、テストマッチの舞台を退いたばかりのTJ・ペレナラ。「チームにとって、パズルの最後のピース」と全幅の信頼を置くオールブラックス(ニュージーランド代表)89キャッパーは、高い競争心とプロフェッショナルな姿勢が最大の魅力。指揮官は「間違いなくインパクトを残してくれる。ほかの選手たちが学ぶこともある」と相乗効果を期待する。

2024年の日本代表活動にはファカタヴァ アマトをはじめ、若き司令塔の中楠一期に伊藤耕太郎、池田悠希が帯同した。桜のエンブレムを目前にしたエネルギーにも、要注目だ。

そしてこの一角に割って入ろうと強い気持ちを見せるのは、大ケガから復帰したばかりのメイン平。昨シーズン開幕直前に右膝を負傷し、丸1年間表舞台から退いた。今季のプレシーズンマッチでは、新たなポジションであるスタンドオフにも挑戦し、幅を広げたメイン。「自分のポジションでしっかり試合に出続けられれば、代表も不可能じゃない」と強い言葉を残す。

歴史と伝統を積み重ねてきたBR東京。昨季の反省から、ブレイクダウンの質にこだわり、より良い判断をするための練習も積み重ねてきた。新たなスタートラインに立つ準備は、整った。

「全部のスタンダードが高くなっている。今シーズンはボールを動かして、面白いラグビーをしたい。もう一回スイッチを入れ直して、チームとしてレベルアップします」

キャプテン4季目の武井日向は、主将として「グラウンドに立ち続け、先頭に立って行動で示したい」と覚悟を覗かせた。

(原田友莉子)

●注目選手 SH TJ・ペレナラ

ニュージーランド代表89キャップ、スーパーラグビー・ハリケーンズ史上最多163キャップを有する世界的スクラムハーフが新天地に選んだのは、黒衣チームだった。TJ・ペレナラがBR東京にやってきた。「まずはこのチームがどういうプレーをしたいのか理解したい。そしてみなさんに誇りに思ってもらえるような、エキサイティングなプレーでプラスのインパクトを与えたい」と話す、183cm/90kgのファイター。世界屈指の『アグレッシブなスクラムハーフ』が織りなすラグビーに、心躍らせよう。

SH TJ・ペレナラ

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Teams

DIVISION 1

  • 浦安D-Rocks
  • クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
  • コベルコ神戸スティーラーズ
  • 埼玉ワイルドナイツ
  • 静岡ブルーレヴズ
  • 東京サンゴリアス
  • 東芝ブレイブルーパス東京
  • トヨタヴェルブリッツ
  • 三重ホンダヒート
  • 三菱重工相模原ダイナボアーズ
  • 横浜キヤノンイーグルス
  • リコーブラックラムズ東京

DIVISION 2

  • グリーンロケッツ東葛
  • 九州電力キューデンヴォルテクス
  • 清水建設江東ブルーシャークス
  • 豊田自動織機シャトルズ愛知
  • 日本製鉄釜石シーウェイブス
  • 花園近鉄ライナーズ
  • 日野レッドドルフィンズ
  • レッドハリケーンズ大阪

DIVISION 3

  • クリタウォーターガッシュ昭島
  • 狭山セコムラガッツ
  • 中国電力レッドレグリオンズ
  • スカイアクティブズ広島
  • ヤクルトレビンズ戸田
  • ルリーロ福岡
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