NECグリーンロケッツ東葛
今季のNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)は、チームスローガンに『PLAY WITH PRIDE, FLY TO GLORY』(誇り高くプレーし、栄光に向かって翔べ)を掲げる。そこには、昨シーズン果たせなかった「ディビジョン1昇格という栄光に向かって翔ぶ」という意味が込められている。
バイスキャプテンを務める山本耕生は「ここまでの感触は良い」とプレシーズンを振り返る。田中史朗が昨シーズン限りで現役を引退し、レメキ ロマノ ラヴァもチームを離れた。一見すると大幅な戦力ダウンとも取れるが、「昨シーズンまではマノさん(レメキ)の力に頼ってしまっていたけど、今シーズンは一人ひとりの自責の念が芽生えた」(山本)と、国内トップクラスの実力を誇る選手の引退と移籍は、新チームにプラスの作用をもたらした。「誰かに頼るのではなく、自分がなんとかしなければいけない」。そんな責任感が増した選手たちは、グラウンド内外を問わず積極的にコミュニケーションを図り、プレー面の要求は格段に増えた。
昨シーズンに続き、チームを率いるのはウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ。かつてはウェールズ代表ヘッドコーチとして、2021年のシックスネーションズチャンピオンシップを制した指揮官は、幅を使ったスピーディーなラグビーをGR東葛に植え付けた。2シーズン目を迎えたピヴァック体制の継続もまた、チームの強みとなるだろう。
そしてそこに加わるのが、多彩な顔ぶれの新戦力たちだ。リース・パッチェルはラグビーワールドカップ2019に出場したウェールズ代表のスタンドオフであり、キックとランを駆使してチームのアタックを加速させる。さらに、ラインアウトやスクラムで抜群の存在感を示すパリパリ・パーキンソン、セブンズ日本代表のスピードスター・髙井良成といった個性豊かな選手が加わった。山本も「アタックのバリエーションは昨シーズンよりも広がっている」と新チームの仕上がりには自信を覗かせている。
ただD1に昇格することが目標ではない。D1でも勝てる強いチームを目指して、GR東葛の新たな挑戦が始まる。
(鈴木潤)
●注目選手 SH ニック・フィップス
オーストラリア代表72キャップを誇る、ラグビーワールドカップ2015準優勝メンバーの一人。巧みなハンドリングとスピーディーなパスで攻撃を組み立てるだけでなく、勇猛果敢なディフェンスでチームを引っ張るスクラムハーフだ。今シーズンは新キャプテンに就任し「自分の経験とラグビーへの熱意を生かし、チームをリードできるよう全力を尽くします」と意気込みを口にする。グラウンドでは常に熱くチームを鼓舞するリーダーは、同時に周囲へのリスペクトを抱く人格者でもある。