NTTリーグワン2024-25 見どころ&注目選手
[DIVISION 3]

「誰よりも体を張る」。同じ職場で働く二人のキャプテンがけん引役

クリタウォーターガッシュ昭島

昨シーズンの入替戦は、2年連続で日本製鉄釜石シーウェイブスとの戦いに。だが2試合とも勝点を得られず、再びディビジョン2昇格のチャンスを逃した。今季は新キャプテンに加入4シーズン目の中尾泰星、新バイスキャプテンに同5シーズン目を迎える北條耕太を据えて、3度目の正直をつかみにいく。

中尾と北條。ラグビーでも仕事でも同じ“職場”で働く二人は、ともに過ごす時間が長く結束は強い。そんな若いリーダーを支えるのが、デーモン・レエスアス、ピアーズ・フランシス、横田大輝、杉森健太郎の『リーダーズサポート』だ。また、このオフシーズンにはスーパーラグビーの強豪ブルーズとパートナーシップ契約を締結。さっそく若手のレオ・ゴードンとキング・マックスウェルが加入し、チームに新しい風を送り込んでいる。

今季のクラブスローガンは『PASSION(情熱)』。選手間での対話を通じて導きだしたスローガンの下、プレーシーズンマッチではD1、D2との格上の相手と対戦し、チーム力をアップさせてきた。中尾キャプテンは言う。「(格上との)試合の内容には満足していないが、一つでも勝ったことは大きい。アタックもディフェンスも今季からシステムが変わりましたが、スクラムとセットピースの強みが出せて、自信になりました」。

新シーズン開幕を前にして、「1試合1試合、どんな状況でも自分たちの100%を出し切ってプレーすれば、勝てると思います。そこまでやって負けたら仕方がない。そういう気持ちをもって、一つひとつ出し切る。まずは僕自身が率先して、体現していきたい」と、熱い気持ちを前面に出す。これは中尾の最大の魅力だ。

北條バイスキャプテンも負けてはいない。「キャプテンよりも体を張りたい。キャプテンとバイスキャプテンは誰よりも体を張ってラグビーと仕事をします」と、さらに強い覚悟を口にする。

念願のD2昇格へ。クリタウォーターガッシュ昭島の新たなシーズンが幕を開ける。

(匂坂俊之/Rugby Cafe)

●注目選手 SO ピアーズ・フランシス

現日本代表ヘッドコーチを務めるエディー・ジョーンズの薫陶を受け、ラグビーワールドカップ2019日本大会にも出場した元イングランド代表。昨季は加入1年目でディビジョン3のベストキッカー賞を受賞した。今季はバックス陣のリーダーも務める。昨季のキック成功率は82.2%だったが、今季は「93%が目標」と、細かい数字に本気度がうかがえる。2015年から毎年アメリカのアリゾナでNFLのキックトレーニングを続けてきた努力家が、念願のD2昇格に向けてチームを引っ張る。

SO ピアーズ・フランシス

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闘志あふれる集団たれ。参入初年度、新たな歴史を刻むとき

狭山セコムラガッツ

『ジャパンラグビー トップリーグ』創立メンバーに名を連ねた狭山セコムラガッツが、ついに『NTTジャパンラグビー リーグワン』の舞台で新たな歴史を刻むときがきた。チームの愛称に込められた「セコムらしく、闘志あふれる集団たれ」という思いを胸に、2023年はトップイーストリーグ準優勝。そして2024年1月の3地域社会人リーグ順位決定戦で優勝を成し遂げ、全国有数のチームがひしめくリーグへと駆け上がってきた。

かつての輝きを知る社員も多く、選手たちには大きな期待が寄せられている。チームの主将・飯田光紀は、「たくさんの人に声をかけてもらえるようになった。期待の声はもちろんですが、ここからが新たなスタートと言ってくれる方もいるので、そこは忘れることなくやっていければと思う」と意気込む。

多彩な展開から試合のリズムを作っていくのが、チームの特長。「セットピースは最大の強み。フォワードのモールだったり、スクラムだったりと、いろいろな場面で強さを発揮できればいいと思います。それに、長いシーズンの中でディフェンスはキーになるので、しっかりと力を上げていきたい」。そう述べたのはチーム統括兼スクラムコーチの山賀敦之。選手からの信頼も厚く、チームに欠かせない存在の一人だ。

また、今シーズンから加入したチェイス・ティアティア、トロイ・カレンダーの二人には期待が集まっている。ニュージーランドで実績を積んだチェイス・ティアティアは、鋭いカウンターが武器。一方のトロイ・カレンダーはハードワークに定評があり、どこにでも顔を出すプレーが期待されている。

飯田は、参入1年目のシーズンを前に、「タフなシーズンになると思う。固定したメンバーで戦うことは難しいので、どの選手が試合に出ても、力を発揮できるようにしなければいけない。徐々にチームの総合力は上がってきているので、いい状態で開幕戦を迎えたい」と語った。

今シーズンの目標は、来シーズンをディビジョン2で戦うための結果を残すこと。つまりは昇格だ。支配する、圧倒するという意味を持つ『DOMINATE』をスローガンに、参入初年度から強さを見せられるか。

(松野友克)

●注目選手 FL 飯田光紀

愛くるしい笑顔からは想像できない、強烈なタックルが武器の主将。趣味はコーヒーづくりと繊細さも兼ね備えている点が皆に愛される理由だろう。経験豊富な外国籍選手が加入し、期待も集まるが「ウチの強みはチーム力」と飯田は言い切った。「とにかくチーム力を上げなければ、長いシーズンは戦えない」と、一丸で戦う大切さを口にした。そして「プレシーズンマッチで、まだ足りない部分も見えてきた。そこを開幕までに強みに変えていければ、いいスタートが切れるはず」とも語る。新たなスタートを切るチームにとって、責任感が強く、信頼も厚い主将の存在は頼もしい限りだ。

FL 飯田光紀

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外国籍選手が過去最多に。今季取り組むのは攻撃面の強化

中国電力レッドレグリオンズ

中国電力レッドレグリオンズの今季のスローガンは『Execute(実行)』。「言い訳なしにチームの進化のために、とにかく実行あるのみ」という意味が込められている。

昨季は1勝1分10敗で2年連続の最下位(5位)に終わったが、その中でも接戦の試合が増えたことで、戦える手ごたえと勝ち切れない悔しさが残ったシーズンとなった。昨季のディビジョン3で総失点数は3番目に少ないが、総得点数が最下位。敵陣深くに入ってトライを取り切れない課題が、勝利を逃した要因の一つだった。

新シーズンに向けては、持ち前の粘り強いディフェンスをベースにしつつ、勝ち切るために新たにアタック面の強化に取り組んできた。就任して4シーズン目を迎える岩戸博和ヘッドコーチは、「みんなが課題を明確にして、そこにフォーカスして取り組んでくれているので昨季とは全然違う。まだ細かいコミュニケーションの課題はあるけど、昨季よりも得点力は上がってきている」とプレシーズンでの手ごたえを口にする。

今季は新たに3チームが参入するためD3の環境が変わる。岩戸ヘッドコーチは、「リーグ自体が活性化するし、フレッシュだし、面白くなる。でも、そこで前からやっている僕らが負けてられないし、勝って僕らのチームの価値を高めていきたい」と意気込む。

試合数は15試合に増えるため、さらにチーム力が問われるシーズンになる。共同主将の西川太郎は、「チーム力を上げないとシーズンを戦い抜くことは難しいので、それぞれが自分の課題にフォーカスして修正して、強い個の集まりとなってチーム力を上げていこうと話しています」と明かした。

今季は新たに28歳のコナー・アンダーソンと20歳のセバスチャン・シアラウが加入。チームの支柱であるエドワード・カークだけだった外国籍選手は、中国RR史上最多の3人に増えた。4月に入った大卒新人の宮田悠暉、岩井陸、西濱悠太、森山迅都のフォワード選手4名など若手の突き上げも欠かせない。

今季の目標は「昨季よりも多くの勝ち星をつかむこと」(岩戸ヘッドコーチ)。選手それぞれがいかに考えてチームのために行動できるかが重要になる。一つでも多くの勝利のために、実行あるのみだ。

(湊昂大)

●注目選手 CTB/SO セバスチャン・シアラウ

若さあふれる期待の新加入選手。チーム最年少で、スタンドオフやセンターでもプレー。オーストラリアのメルボルン・レベルズでディベロップメント契約の実績があり、過去2シーズンは花園近鉄ライナーズに在籍したが、リーグワン出場経験はまだない。エドワード・カークと行動をともにする時間が多く「選手としても人としても多く学んでいる」。今季の目標については「チームとして成功したい。勝つこともそうだし、負けてもそこから学ぶことが重要だ」と話す。21歳の誕生日の翌日にある開幕戦で最高のスタートを目指す。

CTB/SO セバスチャン・シアラウ

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変わったのはチームの雰囲気。熱意ある新指揮官と、ただ上だけを見る

マツダスカイアクティブズ広島

マツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)に新しい風が吹いている。

新ヘッドコーチにダミアン・カラウナが就任。男子セブンズ日本代表のヘッドコーチや宗像サニックスブルースのヘッドコーチを歴任したニュージーランド出身のヘッドコーチは、「皆さんが温かく迎えてくれた。日々少しずつでも学んで前へ進むことができるようになっているので、すごくうれしい。人々との関わりが非常に重要で、文化を育んでいくことも重要です。ここで育まれている文化に自分も寄り添って、選手たちと一緒に戦っていきたい」と言い、早速チームを熱くけん引している。

キャプテンに就任した芦田朋輝も、変化を感じている。

「人間味ある方のほうが僕もやりやすいし、本当に熱意があるのでチームの雰囲気も変わったと思います。まず変化したのは練習に取り組む姿勢。僕たちも熱意をもって練習することができています」

プレー面でもより細かく、よりダイナミックなラグビーを見せてくれそうだ。

「例年よりもさまざまな戦術があり、サインもいろいろと準備しています。昨シーズンよりもアグレッシブなラグビーができそうです。外国籍選手も増えて身長の高い選手も入ってきました。セットプレーを起点にして多彩なラグビーを展開していきたい」(芦田)

新たに外国籍選手が3選手、ルーキーも6選手が加わった。昨シーズンがルーキーイヤーだった前田翔哉や田中康平ら、ケガをして力を存分に発揮できなかったタレントたちを含めた若い選手たちの突き上げによって、チームも良いムードで練習を続けることができている。

だからこそ、今シーズンは上だけを見つめてスタートを切る。

「全勝でディビジョン3を優勝して、入替戦に勝ってD2昇格。もうこれしか考えていないです」(芦田)

熱くチームを引っ張るヘッドコーチの下、芦田キャプテンは明確に目標を定めて走り出した。

(寺田弘幸)

●注目選手 SO 井上陽公

23年度の大学選手権優勝メンバー。ゲームメークが特長で、「10番として、どういうプランをもってチームを勝利に導くかを強く意識しています。勝利にこだわってプレーしていきたいです」というそのプレーは必見だ。ダミアン・カラウナ ヘッドコーチも「ラグビーに対してすごく前向きで活力がある」と期待を寄せている。同ポジションのボーディン・ワッカと競いながらチームにフレッシュな風を吹かせてくれるはずだ。

SO 井上陽公

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泥臭く、愚直に。憧れ続けた夢の舞台でも示す一体感

ヤクルトレビンズ戸田

昨季のトップイーストリーグAグループで優勝を飾り、チーム史上初となるリーグワン参入を決めたヤクルトレビンズ戸田(以下、L戸田)。今季は、勢いそのままにリーグワンのディビジョン3でも優勝を狙う。

チームに脈々と流れる最大の強みは、泥臭さであり、愚直さだ。苦しいときも一体感を持って、全員がつながりながら相手に立ち向かう組織力でここまで駆け上がってきた。プロップの石井清は「特に強みとするのはディフェンスです。ひたむきなタックルなどのしつこさこそが僕たちの最大の強みだと思います」と胸を張る。

今季のL戸田は、ステージアップする舞台でこれまでの強みに加えて新たな試みにチャレンジする。それがシーズンスローガンとして掲げる『クイック アタッキング ラグビー』だ。持ち前の屈強なディフェンスに加え、攻撃時には人もボールも素早く動くラグビーを展開しようと目論む。

共同キャプテンの多田潤平は「今までよりもワンランク上のラグビーに取り組んでいます。一人ひとりが考え抜き、チームの戦術に擦り合わせることができていけば、間違いなく質の高いラグビーが展開できると思っています」と語り、プレシーズンにおける少しの手ごたえも口にした。スクラムハーフとしては「球出しのところで素早くバックスにいいボールを供給できれば」と意気込んでいる。

これまでと環境も様変わりし、初めて全国を舞台に駆け回ることになる。多田は「プレーのフィジカル面に加え、移動などの負荷も上がります。試合数も15試合に増えるので、よりチーム一丸で乗り越えていく力が問われると思います」と展望する。

積み上げてきた自分たちのラグビーがリーグワンの舞台でどれだけ通用するのか。多田が「ワクワクしています」と語るように、多田も含めて、メンバーのほとんどがリーグワンの舞台に初めて立てる喜びを感じている。

“新生レビンズ”はこれまでどおり泥臭く、愚直に戦うことを胸に秘め、憧れ続けた舞台へ乗り込んでいく。

(鈴木康浩)

●注目選手 SO ニック・イブミー

チーム加入9年目のスタンドオフであり、チームの精神的支柱だ。昨季のトップイーストリーグAグループでは主軸として活躍し、1位フィニッシュの原動力となった。チーム加入12年目となるスクラムハーフの多田潤平も「長い間、相棒のように一緒に戦ってきた選手だし、すごく信頼している」と語る、レビンズになくてはならない存在だ。チームが強みとするディフェンスもしっかりと体現する精神性も含め、周りから絶大な信頼を勝ち得ているリーダーである。

SO ニック・イブミー

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「日本ラグビーに新たな価値を」。個性派そろう地域クラブの初挑戦

ルリーロ福岡

今季からリーグワンに初参戦するルリーロ福岡は何もかもが“異色”だ──。2022年に福岡県うきは市を拠点に、母体を持たない“地域クラブ”として誕生し、独自のチーム作りを進めてきた。2022、2023年に地域リーグのトップキュウシュウAリーグを連覇し、ディビジョン3の参入が決まった。

メンバーは、福岡県内のラグビーチームで活動が休止、終了した『宗像サニックスブルース』や『コカ・コーラレッドスパークス』出身の選手らに加え、リーグワン経験者らの新規加入もあり、所属選手が約70人と“リーグNo.1の大所帯”となった。ほとんどの選手が木材製材所や果樹園、不動産会社など地域の企業にフルタイムで働き、仕事後に練習している。その練習場も地元の浮羽究真館高校の“土のグラウンド”を借り、自前のクラブハウスもない。

選手の待遇も練習環境も決して恵まれているとはいえないが、クラブ全体に悲壮感はまったくない。誰もがラグビーができることに感謝し、ラグビーで地域を盛り上げたいとの思いが強い。クラブ設立当初から在籍するフランカーの西村光太は、「いろいろな背景を持った選手が集まったからこそ、一つのスタイルにハマらない多様性がある」とポジティブ。今季の目標を聞くと「ディビジョン2への昇格と日本ラグビーに新たな価値を作る」と一切迷いのない口調で返ってきた。

個性派集団をまとめる豊田将万ヘッドコーチは、選手の気持ちを奮い立たせる熱血漢。選手からの信頼は厚く、西村は「ヘッドコーチのおかげでチームが同じ気持ちで戦えている。ベースとなる守備は安定しているので、あとは個の力をチームにどのように色付けるかだと思う」と語った。プレシーズンマッチの回数は少なく、戦力は未知数であるが、大きな白いキャンバスに完成のイメージは膨らんでいる。それぞれの持っている能力を発揮し、個性をつなげ、鮮やかな絵を描きはじめた。シーズンが終わったときに壮大な作品が仕上がっているはずだ。

(柚野真也)

●注目選手 FL 西村光太

かつてコカ・コーラレッドスパークスでプレーし、チーム結成当初に集まった3人のうちの1人。昼間はうきは市地域おこし協力隊として、チームの広報部隊として活動する。ファンやスポンサーと接触する機会が多いせいか、どの選手よりも物腰は柔らかい。プレーはフィジカルスタンダードが高く、激しいコンタクトプレーでボールキャリーを得意とする。チームの“オリジナル3”はピッチ内外で存在感を放ち、ルリーロ福岡の顔となっている。

FL 西村光太

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Teams

DIVISION 1

  • 浦安D-Rocks
  • クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
  • コベルコ神戸スティーラーズ
  • 埼玉ワイルドナイツ
  • 静岡ブルーレヴズ
  • 東京サンゴリアス
  • 東芝ブレイブルーパス東京
  • トヨタヴェルブリッツ
  • 三重ホンダヒート
  • 三菱重工相模原ダイナボアーズ
  • 横浜キヤノンイーグルス
  • リコーブラックラムズ東京

DIVISION 2

  • グリーンロケッツ東葛
  • 九州電力キューデンヴォルテクス
  • 清水建設江東ブルーシャークス
  • 豊田自動織機シャトルズ愛知
  • 日本製鉄釜石シーウェイブス
  • 花園近鉄ライナーズ
  • 日野レッドドルフィンズ
  • レッドハリケーンズ大阪

DIVISION 3

  • クリタウォーターガッシュ昭島
  • 狭山セコムラガッツ
  • 中国電力レッドレグリオンズ
  • スカイアクティブズ広島
  • ヤクルトレビンズ戸田
  • ルリーロ福岡
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