NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1 (リーグ戦) 第13節 カンファレンスB
2023年3月25日(土)14:00 レゾナックドーム大分(旧昭和電工ドーム)(大分県)
横浜キヤノンイーグルス64-12 花園近鉄ライナーズ
夢見るベストプレーヤーになるために──。
23歳の原石はハットトリックにも満足しない
セカンダリーホストエリアである大分での今季最終戦に臨んだ横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)は、開始10分までに3トライを奪取。立ち上がりから花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)を突き放すと、そのあとも効果的に加点し、終わってみれば、64対12の大勝を飾った。
前節のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦に敗れた横浜Eは3位から4位に転落。さらに花園L戦前日には東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)が勝利したため、BL東京よりも試合数が1試合少ないとはいえ、5位まで順位を落としていた。
4位返り咲きに欠かせない勝点5を奪うため、ウイングのポジションで先発出場したイノケ・ブルアは密かに闘志を燃やしていた。
「今節はトップ4に入るためにも大事な試合になる。『良い試合の入りをするぞ』と気持ちもこもっていた」
こうして試合開始からエンジン全開だったイノケ・ブルアは前半8分、内側でのチャンスメークからワイドの位置でパスを受けると、そのままスピードを生かしてトライに結びつけた。またイノケ・ブルアは直後の前半14分にも相手のミスを突き、2トライ目を奪取。さらに花園Lを突き放し、相手の戦意を削いでいった。
そして極めつけは後半18分。山菅一史、田村優がつないだボールをトライに結びつけ、イノケ・ブルアは3トライでハットトリックを達成した。
戦前に望んでいた勝点5の獲得に貢献したイノケ・ブルアは「3トライも取れてうれしいが、チームの努力の結果だと思う」とチームメートのサポートに対して、感謝の言葉を口にした。
もっとも、選手たちに求めるプレー水準が高い沢木敬介監督は、手厳しかった。
「まだまだ、ですね。今日の出来であれば、5トライぐらいは取ってもらわないと困ります」
指揮官から課せられた高いハードルを伝え聞くと、イノケ・ブルアは「ちょっと疲労が溜まって、ミスが出てしまいましたね……」と言っておどけたあと、こう言葉を続けた。
「自分自身もハードルを高く設定していますし、ベストなプレーヤーになるには、それぐらい求められるのは当たり前のことかもしれません。チャレンジできるのは良いことですから」
ベストプレーヤーを夢見る23歳の原石が、大分最終戦での勝利の原動力となった。
(郡司聡)
横浜キヤノンイーグルス
横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介 監督
「前半は良い形で自分たちのラグビーができましたが、点差が離れたあとの集中力は今日出た課題です。トップ4を目指すのであれば、残りの試合で勝ち点を重ねなければなりません。また自分たちの力でプレーオフ進出の切符をつかみ取るためには、80分をとおして、一貫性を持ったプレーをしないといけません。今日は良い部分もありましたが、改善点もまだまだあります。これからも1試合を大事に戦っていきたいと思います」
──大分での3試合を振り返っていただけますか。
「大分のみなさんが、非常に協力的で熱い応援をしてくれることに感謝を申し上げます。最後のワントライは、大分で応援してくださっているみなさんへのメッセージだと思います。普通であれば、プレーを切って終わらせるのに、そうしなかったということは、選手たちの感謝の気持ちの表れですし、トライまで取れて良かったです」
──3トライを奪ったイノケ・ブルア選手へのコメントをいただけますか。
「5トライぐらいは取れたと思います。まだまだ、ですね。5トライぐらいは取ってもらわないと困ります」
──この試合のスローガンが「遂行力」と聞きました。今日の試合では、そのスローガンをどの程度表現できたのでしょうか。
「点差こそ離れましたが、こだわってやろうと準備をしてきたことの60%ぐらいしか表現できていませんでした。ただ、望んでいるレベルが高いですし、相手もいることなので、なかなか難しいですが、自分たちが求めているレベルのハードルを下げずに、これからも遂行力を持って取り組んでいかないといけません。今日に関しては、結果的には悪くありませんが、スモールディテールという点では改善の余地があります」
──プロップの安昌豪選手は今季初先発。フレッシュな選手を起用されました。評価はいかがでしょうか。
「安ちゃんは良かったですし、後半から出た岡部(崇人)も良かったです。競争をして切磋琢磨をしながら、レベルを上げてほしいと思っています」
横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介 キャプテン
「自分たちが目指すべきラグビーの質を前半の40分は発揮できました。ただ、後半のように、自分たちでコントロールできずに、長い間、フワフワとした時間を過ごしてしまうことはチームとしての課題です。そういった反省点はこの試合の学びとして肝に銘じたいです。またセカンダリーホストエリアである大分での試合は今季最後だったので、最後の試合で勝つ姿を見せることができたのは良かったと思っています。大分のみなさん、ありがとうございました」
──後半の失速の原因は?
「前半にできていたことが後半はできなくなりました。例えば、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)に寄り過ぎたことや、スペースを見ることができなくなるなど、自分たちで自分たちにプレッシャーを掛けてしまうことが、今日の課題として出ました。そういった部分が後半の失速の原因かなと思っています」
──大分での3試合を振り返っていただけますか。
「最初の2試合は見ていて気持ちの良い試合を見せられなかったですが、今日の試合はこういうゲームを見せたいというものを見せることができたと思います。大分のみなさんには温かい応援をしていただいたので、またこの地に戻ってきたいなと感じました」
──3トライを奪ったイノケ・ブルア選手へのコメントをいただけますか。
「チームとして、良いランナーにボールを運べているということだと思います。しっかりと内側で崩して、外側の良いランナーにボールを運べていることは、チーム状態が良い証と感じています」
花園近鉄ライナーズ
花園近鉄ライナーズ
水間良武 ヘッドコーチ
「最初の10分がすべてです。気持ちが入っておらず、全然タックルに行けませんでした。ただそれだけです」
──ヴィンセント・セフォ選手が前節に続いてトライを奪いました。彼の評価は?
「ボールキャリーは見てのとおり良かったです。ディフェンスの部分は少しずつ学んでいるので、これからですね」
──前半の序盤、立て続けに3トライを奪われましたが、後半はチームのパフォーマンスが改善されました。なぜ改善されたのでしょうか。
「今日のポイントはタックルだと。そこで相手にプレッシャーを掛けていこうという話をミーティングでしていたにもかかわらず、試合の入りで気持ちが見られませんでした。ハーフタイムにはそのことを指摘しました。タックルはチームへの愛情、情熱であるから、それを見せようと、ハッパをかけました。そうすると、後半はできたわけですから、最初からその気持ちを見せてほしいという話です」
花園近鉄ライナーズ
野中翔平 キャプテン
「リーダーとして戦術的な修正点も見えましたが、チームとしては苦しい状況でした。瞬間、瞬間を制するファイティングスピリッツを出せなかったです。キックオフと同時にそういう展開に持っていけませんでした。それがすべての敗因だと思っています。まずは自分自身にフォーカスを当てて、それをチームメートに態度で示し、またチームに戦う姿勢を植え付けられるように、ゼロからやっていきたいです」