2023.12.19NTTリーグワン2023-24 D1 第2節レポート(静岡BR 26-30 神戸S)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦) 第2節 カンファレンスA
2023年12月17日(日)14:00 ヤマハスタジアム(磐田) (静岡県)
静岡ブルーレヴズ 26-30 コベルコ神戸スティーラーズ

体格や体重で上回られても押されない。
静岡BRが誇る“伝統のスクラム”の秘訣

スクラムに関しては、ジェイミー・ジョセフ前ヘッドコーチのもと日本代表スタッフとしてスクラム強化にあたってきた長谷川慎氏が、アシスタントコーチとして静岡ブルーレヴズに本格復帰

前半はコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)が主導権を握ったが、後半は一転して静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)が盛り返して一時は逆転に成功した白熱のシーソーゲーム。だが後半33分に一瞬のスキを突かれて神戸Sの松永貫汰(この日のプレイヤー・オブ・ザ・マッチ)に再逆転のトライを奪われ、静岡BRはホストゲーム開幕戦を勝利で飾ることができなかった。

終盤の勝負強さは、昨季も言われていたチームの課題だが、今回もそこがポイントになって開幕2連敗。ただ、その中でも今後につながる光明はいくつか見えた。特に大きかったのは、チームの伝統的な強みであるスクラムの進化だ。

それを象徴したのが、後半10分のクワッガ・スミスのトライシーンだった。ゴール手前での相手ボールのスクラムを押し込んでペナルティを獲得すると、迷うことなくスクラムを選択。そこで圧力を掛けた上でクワッガ・スミスが抜け出してインゴールに飛び込んだ。

「前半は(スクラムで)拮抗した場面もありましたが、ハーフタイム前ぐらいに少し修正をかけて、そこをハーフタイムに全員で話し合いました。その修正がしっかり後半に生かされたと思います。3番の具(智元)選手に対してのアプローチを少し変えて、彼の強みを出させないようなやり方をすることができて、自分たちのスクラムを組むことができるようになったので、後半は自分たちの時間帯が増えたのかなと思います」

そう、フッカーの日野剛志は分析する。

後半3分にも相手ボールのスクラムにプレッシャーを掛けてペナルティを獲得するなど、後半はスクラムで圧倒するシーンが目立ち、それが流れを変える大きな要因となった。

「試合中に(スクラムで)相手を少しずつ崩していくというのは、ウチの強みだと思います。相手が思い切り当たってきたらやっぱり強いんですけど、それを当たらせない、相手の力を7割、8割ぐらいにするというのが、レヴズ(静岡BR)のスクラムですし、組む前から結構やり合いが始まっています」

静岡BRが誇るスクラムの強さの秘密について、ロックの大戸裕矢は教えてくれた。

神戸Sのキャプテンで204cmの巨漢ロック、ブロディ・レタリックも「ヒットする前のところでプレッシャーを掛けられていた」と振り返った。

フォワード陣の体格や体重では相手に上回られることも多い静岡BRだが、スクラムでは押し勝つ。そのノウハウは「めちゃくちゃ細かいですよ」と大戸が言うように、パワー以上に技術や駆け引きで相手を上回っている。

「自分たちの流れが悪いときに立ち返るべきはスクラムやモールだと思うし、やりたいラグビーは少しずつ見えてきているのかなと思います」と語った日野は、だからこそタイムアップ後に本当に悔しそうな表情を見せた。

かつて静岡BRのスクラムの基礎を作り上げた長谷川慎コーチが今季から復帰したこともあって、チーム最大の武器がより進化していることは間違いない。そのほかにもプレースキックに大きな進化が見られる新人スタンドオフ・家村健太の成長や、バックスのアタック強化など明らかにプラス材料は増えている。

あとは最後の“勝ち切る力”。これを身に付けることで、上位進出も十分に可能なはずだ。

(前島芳雄)

静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズの藤井雄一郎監督(右)、クワッガ・スミス キャプテン

静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督

「今日は何とか勝とうということで(臨みました)。先週の試合で点数を取られ過ぎたので、ディフェンスからもう一度しっかり見直しました。そのディフェンスはかなり機能していたと思います。ただ、ちょっとソフトモーメントというか、簡単に(点を)取られたところがありました。キックオフからなど、小さい基本的な動きで取られているので、その辺をしっかり直して来週に挑みたいと思います」

──後半は大きく流れを取り返しましたが、後半に向けてどんな指示をされましたか。

「前半は若干アグレッシブさに欠けていると思ったので、後半はしっかり最初からエナジーを出していこうということで、それがうまくいった部分と、インパクトで入った選手もすごく良いパフォーマンスをしてくれたので、後半はそういう意味ではしっかりゲームを支配できたかなと思います」

──今日はもうちょっとのところで勝ち切れなかったですが、それを勝ち切れるようにしていくためには、どんなことが必要だと考えていますか。

「ベーシックのスキルをもう少ししっかり見つめ直して、小さなミスであったりとか反則であったりとか、自分たちサイドで直せることをしっかりやっていければいいかなと思います」

──キックでかなり貢献している家村健太選手の成長についてはどう感じていますか。

「試合ごとに経験を積んで、少しずつ良くなっていると思います。まだ何個か足らないところはあったと思うんですけれども、ゲームごとに良くなっていると思います」

──アタックで取り切れなかった場面がいくつかあったと思います。その点に関してはいかがでしょうか。

「中盤はうまくいくことがあるんですけども、ゴール前に行ったところで、相手に対してプレッシャーを掛けなきゃいけないのに、自分たちにプレッシャーを掛け過ぎているところがあったと思います。そこは若い選手もいますし、経験のある選手もいますけど、コンビネーションがうまくいくようになればいいと思っています」

──「トライを取らなきゃ」と意識し過ぎたのでしょうか?

「そうですね。取らなきゃいけない、という意識から、自分がいなくていい位置にいたり、いないといけないところにいなかったりというのは結構ありました。ラインアウトでも、いくつか選択ミスがあったと思っています」

──具体的に前節からディフェンスのどの部分を修正したのでしょうか?

「前回は外側を行かれてしまう場面が多かったので、おそらく今日はその部分を突いてこられると思いました。しっかり広がって守るということ(を修正しました)。今日は外側でブレイクされることもなかったので、その部分は修正できたかなと思います」

──クワッガ・スミス選手とチャールズ・ピウタウ選手のポジション変更があったと思いますが、その意図は?

「出られる外国籍選手の人数が決まっているということと、13番の選手がウチはたくさんいないので、相手うんぬんというよりも、自分たちのチームの中で考えて出したということです」

静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス キャプテン

「コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)は先週良い試合をして勝っていました。本当に難しい試合になると思って、この試合に臨みました。藤井監督が言うとおり、自分たちの中でのソフトモーメント、そういう弱い部分が出てしまい、自分たちでミスを起こして、簡単なトライを取られてしまうことが多くなってしまったと思っています。自分たちの弱い部分をしっかりと修正していくことで、来週は良い試合ができるんじゃないかと思っています」

──前半はペナルティが少し重なってしまったと思うが、後半に良くなったのはなぜだと思いますか。

「前半では自分たちのペナルティから相手に22mライン内に入られている部分が多々あったので、しっかりと自分たちが規律を良くしていかなければならないという話をして、後半に臨みました。また後半のところでは、規律のところと同時に先ほど言ったソフトモーメントの自分たちの弱い部分が出た瞬間があったところで得点を取られてしまったので、そこが相手にスキを与えてしまったというところだと思います。来週もしっかり修正していければと思います」

──ラグビーワールドカップ2023フランス大会の効果で日本国内でもラグビーファンが増えてきていると思いますが、今日のホスト開幕戦に向けての意気込みはどのようなものだったのか。そして実際にプレーしてみていかがでしたか。

「本当にたくさんのファンの方々に来てもらえたことがすごくうれしく思います。ラグビーワールドカップ2019 日本大会のあとも同じだったと思います。本当にたくさんのファンの方々が来てくれて、満員と言ってもいいぐらいのスタジアムだったと思います。そういったファンの方々にまず本当に感謝をしたいと思います。自分たちとしても本当にハードワークをしています。もちろんサポートしてくださっているファンの方々のために、自分たちはハードワークをして勝利をしたいと思っています。ファンの方々から本当にたくさんのエネルギーをもらっていますので、本当に自分たちとしても勝ちたかったんですけども、今日は残念な結果になってしまったと思っています。また引き続きサポートしていただきたいです」

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ヘッドコーチ(右)、ブロディ・レタリック共同キャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

「こんにちは。今日は予想したとおりタフな試合でした。タックル後の存在感も高い選手が静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)は多いので、そこの部分で難しくなるとは思っていました。前半に関しては自分たちが圧倒することができた部分は多かったと思います。ただ、その圧倒できていた内容を点数という形に変えられたかというと、変えられていなかったと思います。前半に関してはペナルティを3つしか与えていなかったので、そこの部分でも良かったと思います。ただ後半に関しては、自分たちのモメンタムや流れを失っている状況だったと思います。しかし、チームは今日、良いキャラクターを見せてくれました。後半には差を追いかける展開に2回ほどなりましたが、そこでファイトを続けるという姿勢を見せてくれたので、そこは良かったと思います」

──後半にモメンタムを失ったというお話でしたが、どのあたりが原因だと思いますか。

「ディシプリンのところだと思います。自分たちのミスも多かったです。静岡BRは本当に良いチームだと分かっていましたし、ホストゲームでタフに来るというのも分かっていた上で、自分たちが後半に関してはファイトできなかったところが多かったと思います。後半もプレッシャーを掛けたところでは最終的にフィニッシュまで持っていくことはできたので、来週に自分たちが修正しなければいけないところはそこであると理解した上で準備に取り組んでいきたいと思います」

──今日は崩されるシーンはすごく少なかった。昨季と比べてディフェンスがすごく良くなっていると思いましたが、どう感じていますか。

「言われたように、良い内容は多かったと思います。長いフェーズになってもディフェンスすることもできましたし、後半のペナルティの部分に関しては言ってもしょうがないところなので、そこに関しては自分たちが1m下がってオンサイドというのを明らかに見せる必要があるのかもしれないです。ただ、間違いなくディフェンスに関しては良くなっていて、それはタックル後の動きですね。ターンオーバーがとれた状況もあったと思います。タックル後でのカウンターラックや、ジャッカルでボールを取り返すという状況も多かったので、そこの部分は良くなっていると思います。相手の球出しをスローダウンさせることもできていたと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック キャプテン

「こんにちは。自分もほとんどデイブ(・レニー ヘッドコーチ)が話した内容と一緒です。前半に関しては丁寧にしっかりやり切ることができたと思いますし、チャンスをたくさん作ることができたと思います。ただ、後半に関しては自分たちのディシプリンの部分で完全に流れを失う形につながりました。来週の東芝ブレイブルーパス東京戦に向かっていく上で、そのディシプリンに関して修正しなければいけないと思っています」

──後半の展開でどういう声掛けをされていましたか。

「ディシプリンのところに関しては、後半ずっと話していましたし、ディフェンスの部分でどれだけ自分たちがハングリーさを出せるかというところを話していました。カウンターラックやボールハントのところでチャンスを狙っていこうと話していて、その部分で自分たちの思っているほうに(レフリーに笛を)吹いてもらえなかったこともありましたけど、その上で自分たちのやることを絶対に信じ続けようと伝えていました。自分たちがアタックできたときは、どれだけ1個1個丁寧にキャリーしていけるか、ボールを大事にしていきたいというところを話して、最後の方でイシ(中島イシレリ)が良いキャリーをしてくれて、そこでラック周辺にあるスペースに対して日和佐(篤)が走り込んでくれたところもすごく良かったと思います」

──後半、特に静岡BRがスクラムで圧力を掛けてきたと思いますが、それに対してどう対応しようと話していましたか。

「また見直していきますけど、ヒットの前のところでプレッシャーを掛けられているところが多かったので、そこに対応するのはすごく苦戦したと思います。前半に関しては、そこの部分で自分たちも良い形で対応できて、前に出られていました。そこでペナルティをもらえなかったところが何回かありましたけど、後半はすごいプレッシャーを受けたと思っています。そこに関しては静岡BRが昨季にペナルティを一番獲得しているチームで、そのバトルが難しくなるというのは分かっていました。ただ、自分たちとしては来週に向かっていく上で、そこのレベルは確実に上げていかなければならないと感じています」

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