NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第8節
2024年3月3日(日)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs 三菱重工相模原ダイナボアーズ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスA)
目標は桜のジャージー。
S東京ベイが誇る韋駄天の勝利への全力疾走を見逃すな
ボールを手にすると「何かやってくれるんじゃないか」と、観る者にそんな期待を抱かせる男がいる。南アフリカ共和国からやってきた新鋭、リカス・プレトリアスである。
「私が大切にしているのは、まずはラグビーを楽しむこと。そして、100%のパフォーマンスを発揮できるように毎試合毎試合にフォーカスしてチームに貢献することです」
昨季にクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)に入団したばかりの25歳。チームでは同期となる、同じく南アフリカ出身のスカルク・エラスマスは17歳のころから友人で、ストーマーズでは一緒にプレーしていた間柄。ちなみに、ピーター・ラピース・ラブスカフニは高校の先輩にあたる。そこにスカルク・エラスマスとピーター・ラピース・ラブスカフニがいたのはまったくの偶然だったものの、S東京ベイはリカス・プレトリアスにとってはフィットしやすい環境にあった。
「私にとってこの二人の存在はとても大きかったのですが、私はチームメート全員のことを大切に思っています。若手選手からも先輩選手からも、さまざまなことを学べます。また、スタッフを含め、チームの一体感がとても素晴らしいです」
ラグビープレーヤーとしてのあなたの強みは? この問いにリカス・プレトリアスは「ワークレートとアタッキングマインド」と答える。試合では縦横無尽にピッチを駆け回り、高い闘争心を持って敵陣に切り込んでいく。もともと足は速いほうだったが、日本のスピーディーなラグビーに対応すべく、来日に向けて体を絞ってきたという。
中でも圧巻だったのが、1勝3敗と苦戦を強いられる中で迎えた1月14日の第5節・コベルコ神戸スティーラーズ戦。後半残り時間1分、33対34とS東京ベイが1点差を追う展開の中、ボールをキャッチしたリカス・プレトリアスは敵陣10mラインから爆走。往年の元プロレスラージャンボ鶴田ばりの無尽蔵のスタミナでゴールまで走り抜き、チームに逆転勝利をもたらした。それは、S東京ベイが昨年までの勢いを取り戻した瞬間でもあった。
「仲間たちのおかげで、(トライの)チャンスを得ることができました。ゴールに向かって走っていたあの瞬間は、とても気持ちよかったです」
まさに“走り出したら止まらない男”。昨季の日本デビュー以降、一気に頭角を現してレギュラーメンバーに定着。現在はカテゴリB(日本代表資格獲得見込み)ながら、将来の目標として桜のジャージーを掲げる。
「日本代表になるという目標が、試合における大きなモチベーションになっています。だからこそ、一つひとつの試合にフォーカスし、ベストを尽くしていこうと思っています」
神戸S戦以降、チームは勝利を重ねてランキングも4位まで浮上。今節は、こちらも上り調子にある三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)と対戦。果たすべき使命は、リカス・プレトリアスの中では明確になっている。
「これまで同様、先のことは考えずに、いまは相模原DB戦だけにフォーカスしています。チームのために、頑張ります」
リカス・プレトリアスが見せる勝利への全力疾走。その俊足は、オレンジアーミーの期待を裏切らない。
(藤本かずまさ)
三菱重工相模原ダイナボアーズ(D1 カンファレンスB)
日本を、チームを愛する男が仲間に寄せる信頼。
自信を胸に昨年度王者に挑む
グレン・ディレーニー ヘッドコーチいわく「過去一番」というハードトレーニングの成果を前節の結果で示した三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)。ついに昨季の王者、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)に挑むときがきた。
昨季の交流戦は38点差をつけられる大敗。「前回対戦のことは忘れているので、緊張することなく、自分たちのゲームプランで勝つために準備しています」と話すのは、相模原DBのアライアサ 空ローランド、愛称“ローリー”だ。
ラグビーワールドカップ2015イングランド大会において日本代表が南アフリカ代表に勝利した“ブライトンの奇跡”。当時の日本代表メンバーで従兄弟のマレ・サウの影響で、日本でプレーすることを選んだニュージーランド出身のアライアサ 空ローランド。立正大学から2018年、相模原DBに加入して6シーズン目を迎える。コーチ陣が信頼を寄せるプレーの安定感に加えて、若い選手をサポートするサブリーダーの役割も担う、外国人枠の制約を受けないカテゴリA登録のバックスだ。
2021年末、日本国籍を取得した。ミドルネームの「空」は、サモア語のミドルネームの意味を翻訳したものだという。日本を愛し、「日本で結婚し、子どもが生まれました。ラグビー選手を辞めたあとも日本に残り、大学に戻って恩返しをしたいです」と口にする。
今季はけがの影響でやや出遅れたが、直近5試合はウイングとフルバックで出場している。「大学時代から両方のポジションをやっているので、交代出場でも自信がありますし、ポジションチェンジしても連係に問題ありません」と頼もしい。
ジャパンラグビー トップリーグ時代からのチーム状況を知る。「ここ数年で起きたチームの大きな変化は“自信”です。以前ならひるんでいた手強い相手でも、チームメートを信用して勝ちにいける気がします」。
勝てばイノシシ軍団のさらなる躍進につながりそうな一戦。青空の下の練習グラウンドで、“ローリー”は「チームがより上の順位でフィニッシュできるようにするために、けがをしないように、自分ができることに全力を尽くします」と誓う。
(宮本隆介)