2024.03.05NTTリーグワン2023-24 D1 第8節レポート(S東京ベイ 28-34 相模原DB)
NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第8節
2024年3月3日(日)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 28-34 三菱重工相模原ダイナボアーズ
上昇気流のぶつかり合い。ベン・ポルトリッジの
活躍で相模原DBがさらなる風をつかむ
秩父宮ラグビー場で繰り広げられたのは、お互いにノーガードで顔面を殴り合うかのような、そんな無骨な戦いだった。上昇気流をつかんだチーム同士の注目の対決。得点を奪い合う中、最後の最後に相手を突き放して勝利をモノにしたのは、前節で静岡ブルーレヴズを下し、大きな勢いを手にした三菱重工相模原ダイナボアーズのほうだった。
自軍に流れを一気に引き寄せたのはベン・ポルトリッジ。前半40分にはクロスキックで木田晴斗に向けられたボールをまるで猛禽類の巨大な鳥が獲物を奪うかのごとくかっさらい、そのままトライ。ジェームス・グレイソンのコンバージョンキックも決まり、同点に追いついて前半を折り返した。後半33分には自身この日2度目のトライ。1点差で追うS東京ベイを振り切ってみせた。
一方のS東京ベイは、一度狂った歯車が最後まで噛み合わず。昨季はフェアプレー賞を受賞したものの、この試合でのペナルティ数は相手チームを上回り、ノックアウトを狙いたい局面でパンチが打てないというような、もどかしい戦いを強いられた。
開幕から苦戦したものの、スランプを脱して前節の時点で4位まで浮上。“さあこれからだ”、という矢先での重たい敗戦。勝たなければいけない重要な一戦で、思わぬぬかるみに足を取られてしまったS東京ベイ。好調を維持していたリカス・プレトリアスの無尽蔵のスタミナも、頭脳派・岸岡智樹のIQも、勝利の呼び水にはならなかった。
「私は毎試合毎試合、反省と成長の連続にしていきたいと思っています。ですが、今回の試合に関しては、キャッチング、キック、パスなどベーシックなところを見直さなければいけないと感じました」(リカス・プレトリアス)
「いわゆる『ゲームコントロール』がうまくできなかったのは僕自身の反省点です。(試合が)ちょっと緊迫していたと言いますか、流れが来なかったのでフラストレーションが溜まると言いますか。もしかしたら、冷静さを欠いていたかもしれません」(岸岡)
今季を最後に引退を表明している杉本博昭は試合当日の夜、X(旧ツイッター)に「希望は忘れません」とポストした。結果を受け入れ、明日また生きよう。何度でも、立ち上がろう。
(藤本かずまさ)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「すごい戦いでした。お互いに『勝ちたい!』というチーム同士がぶつかり合って、出し切った試合だと思います。私たちにもいいプレーはあったのですが、スコア後に締め切れない、試合を決め切れないようなところがありました。例えばリスタートなど、試合を振り返ってそうした要点を見つけて修正をしていきたいと思います。来週はショートウィークなので、そういったところをしっかりと分析していきたいと思います」
──好調な三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)との試合に向けてどんな準備をしてきたのでしょうか?
「一つの見方としては、毎週改善を重ねていき、良くなってきたチームが増えて、リーグ全体の質が上がったということが言えるかもしれません。私たちとしては自分自身にフォーカスして取り組んできて、この試合に向けてのプランもしっかりと持っていました。プランが遂行できたときはトライが取れていましたが、プレッシャーが掛かった場面でペナルティを重ねてしまい、やりたいラグビーができずに自滅していきました。相模原DBさんが勝つべくして勝った試合だと思います」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン
「フラン(・ルディケ)ヘッドコーチが言ったことが大半なのですが、ゲームをやりながら同じように考えていました。スコアしたあとのリスタートもそうですし、ペナルティを取ったあとのリスタートも、なかなか簡単に脱出できずに自陣にいる時間が長くなって、相手ペースの時間が長かったのかなと思います。相模原DBさんのプレッシャーもありましたし、すごくタフな戦いの中で自分たちのミスも多かったですし、波に乗れない原因を自分たちで作ってしまったと思います。
次からショートウィークでタフな試合が続いていくので、先を見過ぎずに、目の前の試合に向けて集中してしっかりとやっていくことが大事だと思います。この敗戦をしっかりと受け入れて、次に向けた学びにしていきたいです」
──ペナルティの多さが目立つ試合になりました。
「ペナルティに関して言うと、やはりレフリーとしっかりとコミュニケーションを取らないといけないですし、そこはお互いに公平な部分だと思うので、自分たちでもう少しアジャストしていくのも大事だったと思います。その中で何度も何度も同じようなペナルティを重ねてイエローカードが出てしまうと、こういった試合で勝ち切れないのかなと思います」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ
「23人の選手だけではなく、頑張ってきたクラブのみんなを誇りに思います。もちろん完璧な試合などありませんが、相手が(前年度)チャンピオンのチームでした。僕たちもそこに到達したいチームではありますが、いつもより20%~30%高いパフォーマンスを発揮しなければいけないということが分かった上で、ミスもある中でもみんながいいパフォーマンスを発揮して、今日という日をいい1日にしてくれました。本当に誇りに思います」
── 4勝4敗でリーグ戦を折り返し、入替戦なしで残留できる順位に着けています。後半戦に向けての意気込みを教えてください。
「私たちは遠い未来のことはあまり見ていません。常に一番いいラグビーチームになれるように、毎日集中しているだけです。今日も自分たちのミスがありましたし、成長できるところや精度を上げられるところはあると思います。自分たちが得意なことをやり続けながら精度を上げ続けると、今日のように勝つチャンスが生まれてくると思います。勝てば結果はついてきますが、それよりも私たちはどうやってラグビーをしているのか、どういうプレーをしているのか、どういうラグビーチームなのかというところに集中しています」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン
「まずは前年度のチャンピオンチームに勝利できたことをすごくうれしく思います。ただ、チームとしてはまだ完璧ではなくて、自分たちのミスで相手にスコアされてしまったところがあったので、そういったところはしっかりと改善しながら成長していければ、もっといいチームになるのかなと思います。そこを目指して頑張っていきたいです。ただ、今日に関してはチームのみんなと勝利の余韻に浸りたいと思います」
── 4勝4敗でリーグ戦を折り返し、入替戦なしで残留できる順位に着けています。後半戦に向けての意気込みを教えてください。
「(グレン・ディレーニー)ヘッドコーチと同じで1試合1試合、次の試合に向けて1週間いい準備をしていく。その繰り返しだと思います。最終的に残留やそういった結果が残せればうれしいですが、あとのことは考えずに、次はコベルコ神戸スティーラーズとの試合になりますのでまた明日休んで……(ここでグレン・ディレーニー ヘッドコーチが『明日は休み!?』とツッコむ)。たぶん、明日は休みだと思うんですけど(苦笑)、次の試合に向けていい準備していきたいです」
──昨季よりも進化している部分はどこでしょうか?
「全員がどれだけ同じ絵を見るか。週の初めにアタックコーチから『この相手にはこういったアタックをしていく』といった情報がチームで共有されて、全員がしっかりとそれを練習して、遂行していく。それを週末の試合で出していく。その結果がこのシーズンのスコアとして表れてきているのかなと思います。
昨季はずっとディフェンスするという苦しい展開が多かったのですが、昨シーズンに比べるとアタックの機会が増えたので、アタックで相手にプレッシャーを掛けられるようになりました。(自身が50キャップというのは)あまり気にしてなかったのですが、こういう節目の試合で勝てたのはすごくうれしいです」