NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第12節 カンファレンスA
2024年4月7日(日)14:30 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ 27-36 東京サントリーサンゴリアス
いまも進化を続ける流大。
見据えるは、愛するチームの優勝のみ
前節終了時点で、勝ち点差「5」の3位4位対決、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)対コベルコ神戸スティーラーズの一戦は、36対27で3位の東京SGが勝利。プレーオフトーナメント進出に向けて大きな1勝を挙げた。
この大事な一戦で「サンゴリアス公式戦100キャップ」の節目を迎えたのがスクラムハーフの流大だ。試合後、「幼いころから憧れたチームで100キャップを取れたのはうれしい」と語った流にとって、このチームはまさに家族そのもの。オフの日でもチームメートと食事や遊びの時間をともに過ごし、リフレッシュすることが日々の活力になっていると明かす。だからこそ、東京SGのチームメートも、「ユタカさんのために」がこの試合の大きなモチベーションになっていた。
長らく日本代表で活躍し、昨年のラグビーワールドカップ2023フランス大会を区切りに代表引退を表明した流。だが、31歳を迎えたいまも「進化し続けている」と語るのは東京SGの田中澄憲監督だ。
「スピードや体脂肪といったデータ面でも過去最高の数値を叩き出しています。存在感も含め、チームにとって必要不可欠な選手ですね」
実際、この試合でも流の熟練の技が光る場面が何度もあった。たとえば、3点を追いかける前半11分、ゴールライン手前中央でボールを持った流は、右サイドに絶妙なキックパスを送り、尾﨑晟也のトライを演出した。
このキックについて「適当に蹴っただけ」とまずは煙に巻いた流だったが、さらに掘り下げると「(尾﨑晟也をマークしていた)山中さん(山中亮平)の体の向き的にいけるかなと思って蹴りました」と、深い洞察力によって生まれたプレーだったことを明かす。
その戦術眼とパスセンスを武器に狙うのは、もちろん東京SGの優勝。日本代表を勇退したいま、流が現役を続ける最大のモチベーションだ。2015年に入団した翌年の2016-2017、2017-2018シーズンに当時のトップリーグで連覇して以降、東京SGは日本一の栄冠に届いていない。
「若いときにしか優勝できていないので、残り少ない現役生活の中でやり残したことがあるとすれば、もう優勝することだけです」
進化し続ける偉大なスクラムハームの目には、頂点しか見えていない。
(オグマナオト)
コベルコ神戸スティーラーズ
コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ
「自分たちにとって本当に大事な、大一番の試合でしたが、本来あるべきパフォーマンスが出せなかったことが本当に残念です。特に前半は自分たちが(相手に)与えたかったプレッシャーは何も与えられませんでした。守備に関して、前半はスクランブルの状況にもしっかり対応することができて、点差としては近いまま耐えしのぐことができていましたが、後半は耐え切れずに簡単なトライを許してしまいました」
── 残り4節、チームの課題は何でしょうか?
「残りの4試合をしっかりと勝ち切ることできれば、他チームの結果に頼らなければならない状況ではありますが、まだプレーオフトーナメントに行ける可能性はあると思います。ただ、何かを変えなければいけないというわけではありません。今季はいいラグビーができている時間帯もありますし、今日の試合でも残り20分は自分たちがいいチャンスを作った場面もありました。では、なぜそれが最初の60分はできないのか。そういったところを突き詰めていくべきだと思っています。
ディフェンスに関しても、ここ数週間はとてもいいディフェンスができている時間帯は多かったです。ただ、今日はそれができず、簡単なトライを許してしまった。そういった部分を修正して、しっかりと自分たちのやるべきことを高いレベルで丁寧にやり続ける。そこに尽きると思います」
コベルコ神戸スティーラーズ
山下楽平 共同キャプテン
「とても残念な気持ちです。規律の部分でイエローカードが2枚も出てしまい、人数が少ない中で削られた体力の差が後半で出てしまった面はあると思います。あとはマインドセットの部分ですね。目の前の敵をどれだけ圧倒できるか。そういう部分がちょっと足りなかったと思います」
──残り4試合に向けた意気込みをお願いします。
「(デイブ・レニー)ヘッドコーチが言ったとおり、自分たちがやっているラグビーが間違っていると思っていません。その精度をどれだけ高められるか。ディフェンスの部分ではここ最近はうまくいっていたのに、なぜ今日はそれが出せなかったのか。なぜ簡単なトライを許してしまったのかをしっかり振り返って、より精度の高いプレーを来週以降は出せるように頑張っていきたいと思います」
東京サントリーサンゴリアス
東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督
「私自身、兵庫県出身なので、地元に帰ってきてこういうゲームをできたことは非常にうれしいです。また、今日は流大にとって(サンゴリアス公式戦)100キャップというメモリアルゲームでした。そこで勝てたことをチームとしてうれしく思います。
今日の試合は細かいゲームプランもありましたが、選手たちが『ステイハングリー』というテーマを掲げ、『流を勝たせる』といった思いの一つひとつがプレーに出たゲームだったと思っています。プレーオフトーナメントに向けて(今節を含めて)残り5戦の内の1戦が終わったばかりで、引き続き負けてはいけない試合ばかりですので、プレーオフトーナメントを目指してベストを尽くしていきます」
東京サントリーサンゴリアス
堀越康介キャプテン
「今日の試合は、5連戦の最初のゲームであり、とくに両チームともプレーオフトーナメント進出に向けて負けられない一戦でしたが、『本当に勝ちたい気持ちを出せるか』、ということを掲げて1週間準備してきました。
その試合に、ユタカ(流大)さんの(サンゴリアス公式戦)100キャップが重なりました。府中に残ったメンバーも抱いている『ユタカさんのためにも』という思いも含め、グラウンドで体現できるのはメンバーに選ばれた僕たちだけ。細かいスキルや激しさを一つずつ出せたことが今日の結果になったかなと思います。
ただ、ラストワンプレーでトライを奪われてしまったのは僕らの甘さです。そのせいでボーナスポイントも消えてしまいました。僕自身、もっと厳しい目を持ってチームをリードしていきたいと思います」
──今日の試合に向けて、どのような準備をしてきましたか?
「前節、横浜キヤノンイーグルスに対してああいう負け方(最大25点差がありながら、ラストワンプレーでの逆転負け)をしてから、僕もそうですけど、チームとしても落ち込んでいました。ただ、幸いにもバイウィークで見直す時間があったので、スタッフも選手も一緒になって、『どうやって自分たちの甘さを無くしていこうか』と話し合いを重ねてグラウンドでも準備してきました。僕からも『練習でやったことしか試合では出ないよね』という話をして、みんなが納得して練習を重ねてきた結果、今日も練習でやってきたことを発揮して勝つことができたのは良かったと思います」