NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン3 第14節
2024年4月27日(土)14:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
中国電力レッドレグリオンズ 23-31 クリタウォーターガッシュ昭島
仕事もラグビーもプロフェッショナルに。
エドワード・カークが伝え続けた意識
シーズン最終戦が終わったあと、グラウンドでは選手が子どもたちと楽しそうに走り回っていた。中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)は試合後、観戦に来た選手たちの家族も一緒に記念撮影をしてシーズンを労った。家族を招く提案をしたのはチーム唯一のプロ選手であるエドワード・カーク。周囲の支えに感謝を表すためだった。
「選手たちは朝から仕事をし、終わったら練習に直行して、夜遅く帰宅する。練習、遠征、試合に多くの時間を使い、一番犠牲になっているのは彼らの家族だ。だから、僕らのラグビーのために家族が捧げてきたぶん、彼らに恩返しをしたかった」
中国RRは今季ラスト4試合の前に選手やスタッフがそれぞれ勝利への決意を刻んだフラッグを作成し、各試合でベンチに掲げていた。エドワード・カークが記したのは「プロフェッショナル・スタンダード」という言葉。中国RR唯一のプロ選手だからこそ「僕が常にプロのスタンダードを見せ続け、選手たちに少しでもプロ意識を植え付けることが重要だからだ」と説明した。
「プロ意識を植え付ける」。それはエドワード・カークが中国RRで言い続けてきた言葉でもある。試合では常に闘志あふれるプレーとリーダーシップを発揮し、練習では片言の日本語も駆使して誰よりもコミュニケーションを取り、選手やコーチングスタッフに自分の経験を還元。ほか全員が日本人社員選手というチームの中で、プロとしてのスタンダードを示してきた。
中国RRはシーズン最終戦でクリタウォーターガッシュ昭島をホームに迎えて23対31で敗れた。これで今季は1勝1分け10敗で、昨季と同じく最下位で終わった。それでも、昨季より大敗が少なく、1点差や1トライ差の接戦が増え、成長を感じたシーズンだった。個々の意識が高まり、けが人も少なく、ポジション争いも激化。これまで以上に高いモチベーションで最後まで戦い抜いた。
ジャパンラグビー リーグワン3シーズン目を終えて、エドワード・カークはチームのプロ意識が「1年目よりもかなり向上した」という手ごたえを得ている。「1点差ゲームに多くの意味があった。そこで勝てる可能性を実感したし、どうすれば勝てるかを学べた。みんなが練習場やジムでも熱心に取り組んでいるし、常に試合のことを考えて準備していた。いい試合ができたのは多くの選手がステップアップしている証拠だ」。
ただ、今季は勝ち切れない試合が多く、勝利への意欲は募るばかりだった。西川太郎共同キャプテンは、「満足している人は誰もいない。来季は勝つためにもっと自分に厳しく、お互い切磋琢磨し合える環境にしないといけないし、このままで終わるようなチームではない」と向上心を強める。エドワード・カークも「このチームのいいところは常に学ぶ姿勢があり、常に適応していること。だから次のシーズンも楽しみだ」とチームのさらなる成長を信じている。
来季は一つでも多くの勝利で恩返しできるように、中国RRは仕事もラグビーもよりプロフェッショナルに取り組んでいく。
(湊昂大)
中国電力レッドレグリオンズ
中国電力レッドレグリオンズ
岩戸博和ヘッドコーチ
「まずはクリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)のみなさま、リーグ運営関係者のみなさま、本日はありがとうございました。
アタックではエリアの取り合いのところで負けていたというのが一つと、あとはイージーなミスが多く、チームで意思統一していたアタックを継続していく部分がなかなかできなかったのが得点につながらなかった要因だと思います。ディフェンスでは、強いランナーに簡単に突破される部分もありましたが、しっかり我慢してフェーズを重ねていく中で評価できる部分はあったと思います。スコアできなかったところは、この試合だけではなく、シーズンをとおしていろんな宿題をもらったので、次のシーズンに向けてまた頑張っていきたいです」
──ハーフタイムで選手たちに話したことを教えてください。
「前半は自陣でプレーすることが多かったので、『とにかく敵陣に入ってアタックを継続しよう』と話したのと、ディフェンスでは強いランナーを勢いに乗せると、ずっとアタックされ続けるようになるので、ディフェンスラインの整備のところは話をしました。そこでうまくアタックタイムが長くなったのが後半のスコアにつながった要因だと思います。前半は点を取られ過ぎましたが、それでも3トライに抑えられたので、後半は落ち着いていけば、必ず逆転できるという話をしました。ただ、大事なところでミスをしたり、取られたくない時間帯でスコアされたりしたところが痛かったです」
──シーズン最終戦でしたが、今季を振り返ってください。
「チーム自体は本当に成長したと思います。競ったゲームを取り切れなかったのはわれわれの弱い部分が出たと思いますし、勝てなかった要因は次のシーズンへの宿題ということで、またいろいろ考えていく必要があると思います。もともと思い描いていたディフェンスのチームを作ってロースコアに持っていくというやりたいことはできました。あとは、どうやって僅差をものにできるかという経験値のところと、アタックのレベルは次のシーズンに上げていかないといけないと思います。これまでやってきたことは間違っていなかったと選手自身が証明してくれたので、次につながるシーズンでしたし、さらに成長しないといけないなと感じたシーズンでした」
中国電力レッドレグリオンズ
西川太郎 共同キャプテン
「本日はありがとうございました。ディフェンスの部分は『前に出よう』と話をして試合に臨んだとおり、できたところはありましたし、相手のいいランナーにブレイクされてもしっかり裏に帰って、試合をとおして粘り強いディフェンスはできたと思います。ただ、前半はペナルティを重ねてしまい、それが得点されてしまった要因でもあったと思います。昨シーズンと比べて自分たちの中でも成長を感じるシーズンになったので、これにまたプラスで成長して、来シーズンはしっかり勝ち切れるチームになりたいです」
──ハーフタイムでチームメートに話したことを教えてください。
「前半はブレイクダウン周りのところでペナルティを取られていたので、後半はそこをクリアにしていこうと声掛けはしました。今シーズン最後のゲームでラスト40分しかないところで、しっかりアタックマインドのプレーでトライを決めようと話をしました。最後は届かなかったですけど、来シーズンはアタックの精度をもっと上げていきたいと思います」
──シーズン最終戦でしたが、今シーズンを振り返ってください。
「結局1勝でしたが、1点差での負けが2試合あって、引き分けと5点差負けの試合もありました。そこを勝ち切れなかったのが本当にウチの弱いところ、詰めが甘いところだと思うので、そこをどうやって越えていくか。もっと毎日の練習を厳しく、周りに声を掛け合ってやっていかないといけないと思いますし、勝ちたいならもっとやらないといけないですし、外国籍選手が多いわけではないところを言い訳にもしたくないので、来シーズンは気合いを入れ直してやっていきたいです。あとは、ヘッドコーチも言っていましたが、アタックの時間が少なく、スタッツを見れば、タックル数が相手の1.5倍、2倍ぐらいあるので、アタックの時間をいかに増やすかが課題だと思います。そこを考えながら、来シーズンはファンのみなさんに勝ちを見せられるようにやっていかないといけないと思います」
クリタウォーターガッシュ昭島
クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ
「私たちとしては絶対に勝たないといけない試合で、中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)さんはシーズン最終戦ということで、両チームにとってビッグゲームでした。自分たちにフォーカスをして、気持ちのところが特に大きかったので、正直な意見交換をして取り組んできました。中国RRさんの戦う気持ちはすごく評価しているので、タフな試合になることを想定して仕上げてきました。暑い中、タフなコンディションで、中国RRさんも80分間あきらめないのは分かっていました。ベンチはフォワード4人、バックス4人にしたので、特にフォワード陣の半分は80分間パフォーマンスしてもらう必要がありましたが、そこはしっかりやってくれたと思います」
──「気持ちのところが特に大きかった」と言いましたが、この試合に向けてどんな準備をしてきましたか?
「先週の日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)戦ではゲームプラン以外の、気持ちのところでうまくいきませんでした。フィジカルゲームになると分かっていましたし、とにかく気持ちが入っていないとプランも何も関係ないので、気持ちのところを一番大事にしてきました」
──翌日に試合をする3位のマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)と日野RDの結果次第ですが、まずは勝利して入替戦進出の可能性を残しました。SA広島との最終節に向けての意気込みを聞かせてください。
「自分たちができる部分はやったので、あとは日野RDさんに頑張ってもらうしかないです。今日の課題は遂行のところと規律のところで、後半は特に規律のところで中国RRに勢いを崩された部分がありました。(次節はD2/D3)入替戦進出がかかった試合なのか、シーズン最終戦になるのかまだ分からないですけど、どちらでも同じ気持ちで臨みたいです」
クリタウォーターガッシュ昭島
中尾泰星ゲームキャプテン
「中国RRさんはディビジョン3の中でもディフェンスラインやブレイクダウンでプレッシャーを一番掛けてくるので、そこのプレッシャーで絶対に負けないようにアタックの質にこだわってやってきました。その中で、今回良かったのはアタックを継続してトライを取れたこと。フェーズを重ねながら、中国RRさんがシャットアウトしにきている中で、私たちが上回ってトライを取れたのはすごく良かったポイントだと思います。逆に最後のほうに自分たちの足が止まってしまって(中国RRに)トライを重ねられましたが、スコアリングの運び方もショットを重ねながらいい感じでやれたので、勝利につなげられたと思います」
──この試合に向けて気持ちの面でどんな準備をしてきましたか?
「この1週間はキーワードのアティチュード(姿勢)のところで、試合の入りからタックルやキャリーといった一つひとつのプレーで本当に強く当たって、前に行こうと話をしてきました。前節の前半の入りは日野RDさんにスコアを重ねられてしまったので、今日は入りからまずは自分のファーストタックル、ファーストキャリーをしていこうと話をして、そこで前に出られたので今日の試合は気持ちの部分で良かったと思います」
──翌日に試合をする3位のSA広島と日野RDの結果次第ですが、まずは勝利して入れ替え戦進出の可能性を残しました。SA広島との最終節に向けての意気込みを聞かせてください。
「長いシーズンを戦ってきて次の試合が最終戦ですが、やることは変わらないです。始動してから試合を重ねて、見つけたところを毎週改善していって、今回も規律などの課題が出たので1週間しっかり準備して、最後にSA広島さんを相手にクリタのラグビーをしていくだけです。そこのマインドセットをしっかりして、やるからには勝たないとダメですし、入替戦に行けるかどうか分からないですが、最後にホームで“クリタのラグビー”をしっかりして、ファンのみなさんの前でいい試合をしたいです」