2024.05.24NTTリーグワン2023-24 D1/D2入替戦 第2戦 GR東葛 vs BR東京-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1/D2入替戦 D1 10位 vs D2 3位 第2戦
2024年5月25日(土)14:30 相模原ギオンスタジアム (神奈川県)
リコーブラックラムズ東京 vs NECグリーンロケッツ東葛

リコーブラックラムズ東京(D1 カンファレンスB)

未来をつかみ取るために。
大一番で初のメンバー入りを果たした男は恐れずに前へと進む

今季からリコーブラックラムズ東京に加入したフッカーの大内真選手(写真中央)。けが等があり、最後の最後にメンバー入り。16番からBR東京としての初出場をうかがう

NECグリーンロケッツ東葛とのD1/D2入替戦第2戦を迎えるリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)。

第1戦では前半19分に武井日向が渾身の先制トライを決めたが、その代償はあまりにも大きかった。

右足を負傷し、そのまま途中交替。それでも、ピッチに立つ15人はキャプテンの背中に触発され、その後、5トライを重ねると40対21で勝利を収めた。

ゆえに第2戦では、武井の出場が叶わない。あとを託されたフッカーは、小池一宏と大内真。大内はこれがBR東京での初のメンバー入りとなった。

大内はいささか不思議な経歴を有する。

広島で生まれ育ちながら、高校は山梨の公立校へ進学。高校卒業後はニュージーランドへ渡り、現在もワイカト大学の学生である(現在休学中)。プロ選手として日本のチームと初めて契約を結んだのは2019年のこと。ところが、頸椎に大けがを負い、公式戦に出場することなくチームを去った。トップリーグ初出場をつかんだのは2021年、東芝ブレイブルーパス(当時)でのこと。その間、引っ越しや宅配便のアルバイト生活を1年以上続けた。

一方で実家は1190年代に創建した由緒正しき寺であり、父(大内寛文)は元ラグビー日本代表のナンバーエイトにして僧侶。自らも、近い将来にはそのあとを受け継ぐ予定だ。

今季、東芝ブレイブルーパス東京から移籍すると、好調なプレシーズンを過ごした。だが、開幕直前に行われた合宿で足を負傷し、苦しいシーズンが始まった。

治っても足を引きずってしまい、思うような練習に取り組めない日々は続く。

そんなときに思い出すのは、高校の恩師に言われた「泥は食べられる」という言葉だった。

体が動かないのは、しんどいからではない。頭の中で“しんどい”と思い込んでいるからだ。

だから、まだまだやれる。

愚直にリハビリを重ねた大内は、シーズン最終戦の大一番でメンバー入りを果たした。

高校時代から互いにキャプテンとして対戦してきた同い年の武井は、グラウンド練習時、さりげなく側に寄り添った。「大丈夫、おまえなら絶対できる」、「ナイススロー」と声を掛け続ける。

武井は言う。「一番応援しています」

実家の長善寺には、『進者往生極楽 退者無間地獄』と記された旗がある。天正4年(1576年)、石山合戦で織田軍に包囲された石山本願寺へ船で物資を届けるときに、舳先へ掲げたものだ。

「このまま待っていたら、永遠に支配される地獄が待っている。進まなければ未来は見えない」という意味がある、と大内は説明した。

奇しくも似通う、現在の状況。

待っているのではない。チームとして、そして、“大内真”として未来をつかみ取るため、恐れずに進むとき。

来季もD1で戦うために。

5月25日(土)14時30分に、相模原ギオンスタジアムでラストホイッスルは鳴る。

(原田友莉子)

NECグリーンロケッツ東葛(D2)

困難な状況に追い込まれようとも。
GR東葛の名手二人が説く勝利へのポイント

「第2戦ではGR東葛らしい戦い方が前半からできれば勝機は見えてくる」とは、今季限りで引退となるNECグリーンロケッツ東葛の田中史朗選手。田中選手にとっては5月18日のD1/D2入替戦 第1戦がラストゲームとなった

1週間前の5月18日に行われたD1/D2入替戦第1戦で、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)はリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)に21対40で敗れた。第1戦を終えた直後、GR東葛のウェイン・ピヴァック ヘッドコーチは冷静に敗因を分析しながら、課題を1週間掛けて修正することで「勝つ可能性はある」と第2戦への意気込みを語った。

その「勝つ可能性」を探るため、百戦錬磨の経験を持つ二人の名手に、第2戦のポイントを聞いた。

日本代表75キャップ、3度のラグビーワールドカップに出場した経験をもつ田中史朗は第1戦を振り返り、「後半の内容には、みんなが手ごたえをつかんだと思います。すごく良い状態でチームが動いていました」と話した。

そして、「それには私も同意します。後半はかなりの好機がありました」と賛同するのが、2015年と2019年のラグビーワールドカップにウェールズ代表として出場したジェイク・ボールだ。

第1戦の後半、GR東葛は二つのトライを決めて猛追を見せた。さらに、パスが正確にとおってさえいれば、トライが決まってもおかしくはないビッグチャンスも幾度となく作り出した。二人が第2戦のポイントに挙げたのは、そのときのパフォーマンスだった。

「第1戦では僕たちのやりたいラグビーをBR東京にやられてしまいました。相手が蹴ったボールに対してこちらがミスをしてしまったけど、第2戦ではGR東葛らしい戦い方が前半からできれば勝機は見えてくると思います。また我慢比べになるとは思いますけど、良いラインブレイクもありました。それが前半からできれば、メンタルの強い選手がいるので問題ないと思います」(田中)

さらにジェイク・ボールは、この逆境をはね除けるためには何が必要か、それを次のように説く。

ジェイク・ボール選手は5番で先発出場予定。「ハードにプレーして、あとは自信をもって、仲間を信じることが大事」

「まずはしっかりと自分たちの役割を遂行すること。そして、自分たちが得意とすることをやり切ること。消極的にならず、自分たちのすべてを表現する。自分たちに何ができるかは、すでに全員が分かっていると思う。最後のゲームなのでハードにプレーして、あとは自信をもって、仲間を信じることが大事です」

ボーナスポイントを取られての19点差での敗戦。GR東葛が苦しい状況にあるのは間違いない。しかし、勝負は最後の最後まで何が起こるか分からない。数々の修羅場をくぐり抜け、勝利を手繰り寄せてきた二人の名手の言葉を信じ、GR東葛は勝利を目指して戦い抜く。

(鈴木潤)


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