清水建設江東ブルーシャークス(D2)

「エナジー」みなぎる江東BSの3番。「自分のラグビー人生においても重要な試合」と齊藤遼太

今季ディビジョン2という新たな舞台に昇格し、まだ白星がない清水建設江東ブルーシャークス。前節のホスト開幕戦では、今季初の先制トライという良い試合の入りをするものの、勝利をつかむことはできなかった。21日には、再び江東区夢の島競技場でのホストゲームを控え、次こそはなんとしても勝利が欲しい一戦となる。相手は、昨季ディビジョン2で2位の成績を収めている三重ホンダヒートである。

前節はチームとして、先手を打つ“ストライク・ファースト”を掲げ、「選手たちがそのテーマを非常に意識して体現してくれた」と大隈隆明監督は手ごたえも感じたようだ。

そのストライク・ファーストを“先制トライ”として体現したのは、2022年1月加入の齊藤遼太。浦安D-Rocks戦に続いて2戦連続トライという活躍を見せている。加入前の関西学院大学時代からフィジカル面を磨き、普段の練習から少しずつ積み上げてきたものが、プレーの手ごたえや調子の良さにもつながっているようだ。

大隈監督は齊藤について、「とてもエナジーがある選手で、試合中大きな声を出して吠えていることもあります。チームのムードを上げてくれています」とパワーを感じている。

そんな齊藤に目標を聞くと、「(ポジションが)3番なのでセットプレーの強みが必要になる。その部分を伸ばしていきたい。チームでは試合に出続けることが目標です」と力強く話してくれた。今節の三重ホンダヒート戦に向けても「ワールドクラスの選手が何人もいるチームとの試合は、自分のラグビー人生においても重要な試合になる。臆せずプレーしたい」と意気込んでいる。

試合間隔が1週間という限られた時間の中で、チームとしては、前節相手に流れを渡してしまう要因ともなった“ディシプリン”、つまり規律の部分の見直しを行った。「失うものはないので、攻撃的なディフェンスやアタック、積極的なトライへの姿勢など、80分間戦い続けたい」と大隈監督は次節への意気込みを話す。

また、クラブとしては、ホストゲームに多くのファンの方に来ていただけるよう、ホスト開幕戦前にはSNSのフォロワー5050人達成を目指す“夢の島5050”を企画し、見事達成。ファンの方への感謝の想いを込めて、試合当日には選手自ら手作りのポップコーンを無料提供し感謝を届けた。今週末のホストゲームでも、引き続き、「選手手作りの○○!」企画にてフランクフルトを提供予定。ぜひ会場に足を運んで選手からの想いを受け取っていただきたい。

ブルーに染まる江東区夢の島競技場で、今度こそファンとともに勝利をつかみたい一戦となる。

(山村燿)

清水建設江東ブルーシャークスの齊藤遼太選手。「試合に出続けることが目標です」


三重ホンダヒート(D2)

三重ホンダヒートが得た、新たなる精神的支柱

今季2試合目のホストゲームだった前節。三重ホンダヒートは、日野レッドドルフィンズの術中に、まんまとハマり苦しんだ。武器としていたラインアウトは後手に回り、ラフプレーぎりぎりの激しいディフェンスにアタック陣は分断された。ルーキーながら、ここまで3戦すべてにスターターで起用されているセンター、フレイザー・クワークも「フォワードとバックスがバラバラになってしまった。アタックするスペースを見つけられなかった」と振り返る。

日野レッドドルフィンズはペナルティから自滅し、三重ホンダヒートは劇的な逆転勝利をおさめたが、内容として満足できる試合ではなかった。しかし、そんなゲームでも勝ちにつなげる重要性を、骨の髄から知っている男が、チームを勝利へと導く陰の立役者となった。それは、現役15年目のシーズンを戦うフッカー、金井健雄である。

後半36分、相手陣奥深くでのマイボールラインアウトからモールで押し込み、その金井がトライ。コンバージョンキックも決まり、20対19と逆転した。試合時間は残り2分30秒。もうこれ以上、点は必要ない。いかに試合を終わらせるか、タイムマネジメントの勝負である。

三重ホンダヒートはフォワードを核にボールを保持し、時計の針を進めていく。一度は相手にボールが渡ったが、何とか取り返した。なかなか時間が流れていかないと皆が焦り始めたところで、日野レッドドルフィンズに対し、この日21回目のペナルティの笛が吹かれた。

難しい決断となった。残り30秒。外へ蹴り出して、後半はある程度、優位性を取り戻したラインアウトでマイボールにするか……。キャプテン古田凌を中心にリーダー陣は迷っていた。皆が金井の顔を見る。リザーブスタートだった金井は後半23分に入ってから、チームの精神的支柱になっていた。

「スクラム」。金井が即座に言った。それを聞き、古田はレフリーにスクラムを選択することを告げる。スクラムはつぶれたが、ボールを外へ蹴り出し、無事にタイムアップ。

金井は言う。「スクラムが安定しており、優位性を取れる自信はあった。時間も使えるし、変なペナルティを取られることもないと考えた。ラインアウトを選択してマイボールにできたとしても、まだ時間は残るだろうし、不確定要素が多すぎる」という金井の判断が功を奏し、チームは勝点4を得た。

リザーブの時は、チームのどこに優位性があるのか、何が足りないのか、常に考えながらゲームを見ていると言う。判断を問われれば、自分たちと相手の状況、時間、さらにレフリングの基準まで考慮して助言をする。

それこそ、今季チームが金井を加入させた理由だろう。それは本人も十分に分かっている。「これまでの経験を若いチームに伝えるのは自分の責任。チームに良い文化が根付くように助けができれば、と思う」と話す。

「歳ですから、もう走れませんよ」と笑うが、三重ホンダヒートには、すでになくてはならない選手。グラウンドに出ていてもいなくても、チームに影響を与えている金井がいることを、知っておいたほうがいい。

(小崎仁久)

両プロップを従えてスクラムに臨む15年目のベテラン、金井健雄選手


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