2023.03.16第11節九州KV vs WG昭島-見どころ

九州電力キューデンヴォルテクス（D3）

地元に凱旋する山田章仁。
“九州のラスボス”がドラマをおこす

NTTジャパンラグビーリーグワン2022-23 ディビジョン3の戦いはいよいよ、第3クールへ突入。首位奪還を目指す九州電力キューデンヴォルテクス（以下、九州KV）はクリタウォーターガッシュ昭島とのホストゲームに挑む。舞台はミクニワールドスタジアム北九州。3月18日15時キックオフだ。

今季初の北九州開催。となれば、この男に触れないわけにはいかない。北九州市出身、山田章仁だ。北九州が輩出した日本ラグビー界のスターが地元に凱旋する。

「世界を経験してそこで培ってきたプレーを見せたいし、地元のちびっ子たちには世界に目を向けてもらいたい。僕自身もきっかけがあって世界を意識するようになって、人生がすごく広がった。ラグビー選手として、そんなふうにみんなのきっかけになれたらうれしい。それが日本代表や海外チームを経験して地元に帰ってくる醍醐味だと思っているんですよ」

福岡県をホストエリアとするチームに所属して迎える、故郷での一戦。経験を重ねたこのタイミングだからこそ、自らが伝えられる価値をそう語る。

今季は主に後半から出場し、“ゲームチェンジャー”の役割を担う山田章仁だが、「楽しい」と話す。途中交代で山田章仁の名前がコールされるとスタジアムの雰囲気が変わる。そのスター性に地元のファンは強い期待を寄せているからだ。沸き上がる歓声と拍手は劣勢のときにはチームに勢いを生み、リードしている場面ではその勢いをさらに加速させる。山田章仁も「その雰囲気って相手チームにも伝わっていると思うんですよ。それはみなさんが作り上げてくれて、九州KVとしてそういう雰囲気を作れている。『山田章仁が投入されると勢いが出る』とか『九州KVは後半に強い』、『インパクトメンバーがすごい』。そういうふうに相手のマインドに入り込みたい」。チームメート、ファンとともに作り上げてきた雰囲気は九州KVの武器となっている。だからこそ、そこに楽しさも覚えているようだ。

また、その楽しさをより深いものにしてくれる存在がいる。それが「仲のいい“ラスボス”こと堀江翔太（埼玉パナソニックワイルドナイツ）」だ。「インパクトメンバーとしてのスキルもあるし、直接、話を聞いて学ばせてもらっている」とやり取りを明かしてくれた。さらに堀江から暖簾分けされたものもあるという。「九州のラスボスという異名(笑)。これはもう堀江にOKをもらっています。九州のラスボスこと山田章仁です(笑)」と“本家ラスボス”から使用認定を受けたそうだ。

ジャパンラグビートップリーグからの通算100トライまであと3つで迎える凱旋試合。山田章仁は「狙って取れるものじゃないから狙わない」と話したが、ミクニワールドスタジアム北九州での初トライは山田章仁だ（2017年開催のサンウルブズ対トップリーグ選抜）。地元で力を発揮する北九州のヒーローには“ドラマ”を期待せずにはいられない。“九州のラスボス”がピッチに姿を見せたとき、大いに沸くファンの姿は山田章仁に奇跡を起こさせる大きな力を与えるはずだ。

（杉山文宣）

明るいキャラクターで人気の九州電力キューデンヴォルテクス山田章仁選手。「これはもう堀江にOKをもらっています。九州のラスボスこと山田章仁です(笑)」

クリタウォーターガッシュ昭島（D3）

得意なプレーでビジターゲーム初勝利へ。
カギを握る二人とは──

NTTジャパンラグビーリーグワン2022-23 ディビジョン3 第11節、クリタウォーターガッシュ昭島（以下、WG昭島）はミクニワールドスタジアム北九州で九州電力キューデンヴォルテクス（以下、九州KV）と対戦する。

現在ディビジョン3の2位につけている九州KVとの対戦を前に、石井洋介キャプテンは、「やることは変わらない。スクラムで圧倒して、ラインアウトモールからチャンスを作る。自分たちの得意とするプレーで勝てない限り、九州KVに勝つことはできない」と、ビジターゲームでの初勝利に向けて緊張感を漂わせる。

今節の注目は、「まさか選ばれるとは思っていなかった」と、うれしい誤算？の渋谷圭と杉原駿。これまで出場機会の少なかった二人が、チームにフレッシュなエナジーを注入してくれるはずだ。

渋谷の強みはスクラムでの仕事ぶりだ。「ここ数週間は練習でとても良いスクラムを組んでいた」（山村亮フォワードコーチ）と評価も高い。「スクラムは練習中でも押されていない。そこは自信をもってプレーしたい」と胸を張る。「ここ数試合は得点したあと、すぐに相手に取り返される展開が多かったので、九州KVにペースを譲らず、自分たちのペースでプレーすることを意識したい」と渋谷。スクラムから相手を圧倒し続ける姿が見られるか、注目だ。

一方、今季初スタメンとなる杉原駿は、「九州KVはディフェンスのチーム。そこに対して自分たちのランニングラグビーでテンポよくアタックをしていきたい。自分の強みとしては、一人でトライまでもっていけるところだと思います。WG昭島でまだトライを取れていないので、なんとしてもトライを取りたい」と、意気込む。杉原の帝京大学の先輩で、「尊敬する選手」という流大（東京サントリーサンゴリアス）のような強気なプレーでチームを引っ張ってほしい。

WG昭島のビジターゲーム初勝利なるか、そしてディビジョン3の3位争いの行方は──。リーグ後半戦、注目の一戦が迫る。

（匂坂俊之／Rugby Cafe）