2024.02.02NTTリーグワン2023-24 第5節 GR東葛 vs 釜石SW-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第5節
2024年2月4日(日)14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 vs 日本製鉄釜石シーウェイブス

NECグリーンロケッツ東葛(D2)

圧倒的経験値をもつ元オーストラリア代表が語る、
昨季からの3つの変化

オーストラリア代表(ワラビーズ)72キャップを誇る、NECグリーンロケッツ東葛のニック・フィップス選手。「チームの将来を考えると、若いプレーヤーには出てきてほしい。でも簡単には渡さないよ」

2月4日、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)は、柏の葉公園総合競技場で行われる日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)との試合に臨む。

ここまで4試合を終えて3勝1敗の3位。第2節の豊田自動織機シャトルズ愛知戦こそ敗れたものの、新たに就任したウェイン・ピヴァック ヘッドコーチのもと、チーム全体が目標へ向かって前進している印象を受ける。

では、昨季との変化は何か。オーストラリア代表72キャップ、この圧倒的経験値を持つニック・フィップスに話を聞くと、彼は3つのポイントを挙げた。

まずはディフェンスにフォーカスした戦術面の整備である。

「世界的に見て、どんな強いチームでもディフェンスには力を注いでいる。選手たちはウェインを信じてハードにやっている。システムも良く、仲間のために戦うという選手間の信頼感も良くなった」

二つ目がメンタリティーの変化。1月28日、GR東葛は東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)と練習試合を行なった。後半立ち上がりの3連続トライで一時は逆転を許したが、それでもチームは怯むことなく、54対26で勝ち切った。昨季のチームであれば、後半の連続トライを機に一気に崩れていたのではないか。その問いにニック・フィップスも「そのとおりだと思う」と深く頷いたあとに、言葉を続けた。

「昨シーズンは強いチームを相手に戦っていたので、こちらのメンタルが後ろ向きになっていた。今シーズンはメンタリティーを固められていることが大きい。ディビジョン2だからこそ、それを再構築することができている」

3つ目がポジション争いの激化だ。

「ウェインが求めていることに対して、選手一人ひとりが高みを目指している。それでポジションごとの競争が激しくなった。毎試合、同じ15人が固定されるのではなく、選手同士が競争して、誰を起用するか悩む環境にできていることは理想的だと思う」

実際に、BL東京との練習試合で好パフォーマンスを見せた東恩納寛太と宮島裕之が、今節の釜石SW戦の先発に抜擢されていることが、チーム内の競争が活性化されている何よりの証だろう。

ニック・フィップスのスクラムハーフのポジションもまた、藤井達哉、丸尾祐資という若い力の台頭が目立つが「私自身、競争が激しいということを楽しみながらやっている。チームの将来を考えると、若いプレーヤーには出てきてほしい。でも簡単には渡さないよ」と彼は笑顔を見せた。

そして最後に、重要なポイントとしてニック・フィップスがチームの方向性をも明言する。

「いまのチームはまだ完成形ではなく、磨き続けている段階。われわれが目指す基準は、高いところに設定しなければいけない」

GR東葛の目標はディビジョン1復帰だ。ただ復帰するのではなく、より強いチームになって戻ること。それこそが、ニック・フィップスの言葉の真意だ。

今節はGR東葛にとっては、昨年12月23日以来となるホストゲーム。きっとファンも待ちわびていたことだろう。ホストスタジアムに駆けつける多くのファンたちの前で、前回から成長した姿を示したい。

(鈴木潤)

日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)

釜石SWは「一番あきらめてはいけないチーム」。
古巣戦でも見せる“釜石愛”

今節は19番で出場予定の山田龍之介選手。「コンディション調整のために何かを新しく取り入れたわけではないんです。記事にしづらくてすみません(笑)」

日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)にとっては1月6日に行われた第4節から約1カ月の期間を空けて行われる今節。3位のNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)との一戦を心身ともにフレッシュな状態で臨む。昨季ディビジョン1に所属していたチームを相手に粘りを見せて、6位からの巻き返しに転じたい。

釜石SWの山田龍之介は、立教大学を卒業後、NECグリーンロケッツ(現・GR東葛)に所属。そこから5シーズン在籍した古巣との対戦になる。

「当時のチームメートが所属しているので、彼らとの対戦が楽しみではありますけど、特別な意識はそこまでありません」

落ち着いた表情で、あくまで自然体で今節に臨む山田龍之介。自身にとっての昨季はけがによるコンディション不良が続いてコンスタントに出場機会をつかめず、悔しい終わり方となった。

しかし、今季はここまでの4試合すべてに出場。力強いプレーには好調さがにじみ出る。

「コンディション調整のために何かを新しく取り入れたわけではないんです。記事にしづらくてすみません(笑)。でも心掛けているのは、よく食べてよく寝ること。基本的な部分ですが、それがいい方向につながっているんだと思います」

ピッチで力強いプレーを見せる一方、SNSでは彼のやわらかな空気感や釜石への愛が伝わるような投稿も多い。実に多趣味で、読書、登山、サイクリングなどについてつぶやいたかと思えば、子どもからの手紙の写真もアップするなど、あの手この手でほのぼのした気分にさせてくれる。ちなみに小学3年生の息子がバスケットボールの少年団に入っていることから、最近は一緒にバスケットボールをする機会が多いそうだ。

チームの今季に目を移すと、4連敗中ながら時間帯や局面では互角以上に渡り合えている場面も多い。もちろん結果が伴えば言うことはないが、何よりも大事なのは「チームがここまで積み上げてきたプロセス」だと山田龍之介は言う。トレーニングで培ってきたものを表現することが一番で、それこそが勝利への道筋だと確信している。釜石SWを「一番あきらめてはいけないチーム」と表現する男は、これからも釜石愛を貫き、プレーで魅せる。

(髙橋拓磨)

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