2024.03.22NTTリーグワン2023-24 第9節 釜石SW vs RH大阪-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第9節
2024年3月24日(日)12:00 いわぎんスタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs レッドハリケーンズ大阪

日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)

初の盛岡開催。「勝った記憶しかない」スタジアムで
上り調子の男がチームを勝利へ導く

日本製鉄釜石シーウェイブスの阿部竜二選手。「いまのチームには確実に勝つ力がある」と、きっぱり

日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)にとっては、今節が今季のレギュラーシーズン最後のホストゲームとなる。対戦相手である4位のレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)との勝ち点差はわずかに2。シーズンが佳境に入る中で行われる4位と6位による直接対決は、3月24日、盛岡市のいわぎんスタジアムでキックオフを迎える。

リーグワン発足以降、ディビジョン2公式戦初開催となるいわぎんスタジアムは、全国高等学校ラグビーフットボール大会岩手県大会の決勝戦が行われるグラウンド。岩手県紫波郡紫波町出身、阿部竜二もこの舞台で戦い、“花園”への切符を勝ち取った一人だ。当時を次のように振り返る。

「高校3年のときの決勝戦はラグビー人生で一番緊張した瞬間でした。ウォーミングアップのとき、決められたメニューをみんなで順番に行うのですが、自分だけしばらくのあいだ、みんなと違う動きをしちゃっていて(笑)。あとにも先にもそんなことはなかったので、本当に緊張していたんだなといまでは思います」

その阿部は、後半戦に入り調子が右肩上がりだ。ランやステップワークが冴え、コーチ陣も期待を寄せるその高いポテンシャルがいよいよ開花のときを迎えているように感じられる。

RH大阪との前回対戦では、ラストプレーでペナルティーゴールを決められ、土壇場で逆転される痛恨の敗戦となったが、それでも「いまのチームには確実に勝つ力がある」と言い切る。その根拠となるのがフォワード陣の力強さと、セットピースの精度向上。チーム力が高まってきているのがいまの釜石SWだ。目標であるトップ3への道は閉ざされたが、一つでも多く勝利し、一つでも順位を上げて、最終的に残留という成果を得るために大きな意味を持つ一戦。阿部にとっては、それが「勝った記憶しかない」という思い出のスタジアム。自身は上り調子で勝てば順位を上げられる状況、さらに家族やお世話になった指導者らが見守る中で迎えられる。まさに舞台は整った。得意のランからトライを決め、チームを勝利に導く活躍に期待が集まる。

(高橋拓磨)

レッドハリケーンズ大阪(D2)

武者修行で作り上げた真新しい自分。
若武者は家族、友人に成長を見せる

土橋郁矢選手は岩手県北上市出身ながら「家族も友だちもいない環境に身を置いて、ラグビーに集中したい」という理由でレッドハリケーンズ大阪へ加入したのだという

3月24日(日)、レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)は、いわぎんスタジアムで行われるビジターゲームに臨む。

RH大阪に、岩手県北上市出身の選手がいる。スタンドオフの土橋郁矢だ。黒沢尻工業高校では、2年生のときから先発に定着すると全国高校大会岩手県大会を制し、“花園”行きを二度勝ち取っている。岩手県大会の準決勝と決勝戦が行われるのは、今節と同じいわぎんスタジアム。土橋にとっては良い思い出が詰まった場所だ。

東洋大学を経てRH大阪に加入したのは、昨季のことだった。アーリーエントリー選手として、チームに合流。ほかの選手が個人練習を終えてグラウンドをあとにしてもなお、ずっと一人で練習を続ける姿が合流当初から印象的な選手だった。合流間もない昨年2月のうちに、誰からともなく「もうこのグラウンドに住めばいいのでは」と言われるようになり、いつの間にか「たぶん、もうここに住んでいる」と言われるようになった。大阪らしい冗談を交えた表現だが、それは誰が見ても“誰よりもグラウンドで練習している”という評価だった。

土橋本人は、「最近はRH大阪ファンの方たちにも言われるようになったので、恥ずかしい」と苦笑いしていたが、そもそもRH大阪への加入を選んだのは、「家族も友だちもいない環境に身を置いて、ラグビーに集中したい」と思ったからだった。本人からすれば、「武者修行のような気持ち」で加入したぶん、ひたすら練習に取り組むのは至極当然のことだった。

その誰よりも練習に取り組む姿勢への評価は、今季の開幕戦に表れた。経験がなかったフルバックとして先発し、ファーストキャップを獲得。以降、バックスリーで出場を重ねている。

第4節のあとに行われたチーム内の紅白戦で負傷していた土橋。「今シーズン中の復帰は難しいかもしれないと思っていた」と言うが、メディカルスタッフのサポートを受け、「岩手での試合に出たい」一心でリハビリにも前向きに取り組んだ。控えメンバー入りした今節が、5試合ぶりの復帰戦。控えには、同じスタンドオフの呉嶺太も名を連ねている。アクシデントがない限り、土橋はおそらく今節もバックスリーでの出場となるだろう。

岩手にいる家族や友人は、スタンドオフではない土橋をまだ見たことがない。思い出深いスタジアムで、これまでも得意としてきたキックと“武者修行”で得たランを武器に、チームに貢献している真新しい自分を見せたい。

(前田カオリ)

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