2025.02.06[横浜E]指揮官も絶賛するプロップとしての成長。離脱中の幼なじみに勝利を届けてみせる

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第7節(交流戦)
2025年2月8日(土)14:10 ニッパツ三ツ沢球技場 (神奈川県)
横浜キヤノンイーグルス vs クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

横浜キヤノンイーグルス(D1 カンファレンスA)

フランカー/プロップというユニークな立ち位置、シオエリ・ヴァカラヒ選手

前節、トヨタヴェルブリッツとの接戦を制した横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)は怒涛の4連勝を達成。5連勝へ挑む今節は、2022-23シーズンの王者であるクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)と対戦する。今季のホストゲーム“三ツ沢最終戦”は2月8日(土)14:10キックオフだ。

“采配的中”にご満悦だったのか。シオエリ・ヴァカラヒを初めてプロップのポジションで先発起用した沢木敬介監督は、前々節の三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)戦後、取材に応じるヴァカラヒの横をとおり過ぎる際、「ね、いいでしょ?」と言い残した。

相模原DB戦の勝因として、スクラムでのドミネート(相手を支配すること)を挙げていた横浜Eの指揮官は、スクラムの主軸を担ったヴァカラヒへ最大級の賛辞を送った。また、実際に対戦相手としてスクラムを組む立場だった相模原DBのプロップ安昌豪はこう振り返る。

「昨年から(ヴァカラヒは)プロップのポジションにチャレンジはしていましたが、見違えるほどスクラムを組めるようになっていました。今回は対戦相手でしたが、元チームメートとしてなんだかうれしかったですし、個人的には“親心”のような気持ちを抱きました」

今節のS東京ベイ戦で再び巡ってきたプロップでの先発出場のチャンス。試合2日前の居残り練習後には庭井祐輔とスクラムの修正点を確認し、チームが勝つための努力を惜しまなかった。

主戦場のフランカーだけではなく、プロップのポジションで新境地を開拓しつつあるヴァカラヒには、どうしても自身の先発出場試合で勝ちたい理由がある。幼なじみである負傷離脱中のシオネ・ハラシリに勝利の報告を──。いつもは陽気なハラシリがチーム離脱に悔しさを募らせた表情を、ヴァカラヒは見逃せなかった。

5連勝の達成と旧知のチームメートのために、S東京ベイ戦に臨むヴァカラヒは「相手をスクラムで圧倒する」と短い言葉に勝利への決意を込めた。

(郡司聡)

2025.02.06[S東京ベイ]磨き続けてきたマインドセット。背番号10は期待と信頼に応えてみせる

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第7節(交流戦)
2025年2月8日(土)14:10 ニッパツ三ツ沢球技場 (神奈川県)
横浜キヤノンイーグルス vs クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスB)

前節に続いて10番で先発する押川敦治選手

丁寧な研磨は、まるでパズルのピースを一つひとつ埋めていくかのよう。最初は小さな変化しか見えなくても、あきらめずに続ければ、いつか必ず美しい絵が完成する。

前節の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦で、押川敦治は約1年9カ月ぶりに先発メンバーとしてピッチに立った。ポジションは、チームの攻撃を組み立てる上で重要な役割を担うスタンドオフ。背番号は「10」。若干の緊張感に見舞われながらも、キックオフ時のドロップキックが的確に決まり、「練習を含め、これまでで一番いいキックオフになった」という。試合は40対12で快勝。司令塔としての存在感を示してみせた。

ここに至るまで、平坦な道ではなかった。デビューイヤーに6試合を戦ったものの、昨季は出場機会に恵まれず。しかし、地に足をつけて進むこと以外に近道はない。ゲームコントロール、状況判断、そしてチームを鼓舞するメンタル。押川は冷静に、一つひとつピースを埋めていった。

「より多くの試合を、自分たちのチームはもちろん、リーグワンのほかのチーム、海外のチームの試合も見るようにしました。試合中の局面において(スタンドオフは)なぜそういう判断をしたのか。もし自分がその現場にいたら、どういう判断をしていたか。一歩踏み込んだ視点で試合を見て、考えるようになりました」

そうして磨かれたラグビーIQ。だが、プレシーズン開幕直前には左ふくらはぎ負傷という不運に見舞われることになってしまう。それでも「できることをやろうと、すぐに気持ちを切り替えました」と、客観的に試合を見ることで、よりゲームへの理解を深めた。

そしてチャンスは訪れた。シーズン開幕後の1月に行われたリコーブラックラムズ東京との練習試合ではゲームキャプテンを任され、10点差を覆す劇的な勝利。この活躍が、前節の先発起用を大きく後押しした。

「先々のことはあまり考えず、目の前のことにフォーカスして取り組んだ結果だと思います。こうしたマインドセットの重要性を再確認でき、いまも目の前のことに集中して取り組むようにしています」

「こうした重要な試合で『10』番を任せてもらえる。このチームからの期待と信頼に応えたいです」

今節、横浜キヤノンイーグルス戦でも押川は先発メンバーにその名を連ねた。チームは現在4位。勝利すれば上位進出へ大きく近づく重要な一戦に臨む。

「責任感やプレッシャー、いろいろな気持ちが入り混じっていますが、いまはワクワクしています。こうした重要な試合で『10』番を任せてもらえる。このチームからの期待と信頼に応えたいです」

押川の決意が、美しい絵を完成へと導く。

(藤本かずまさ)

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