2025.03.01[静岡BR]偉大なワンクラブマンが記す『150』。大戸裕矢、勝つために全力を注ぐ不変の姿

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第10節(交流戦)
2025年3月2日(日)13:05 ヤマハスタジアム (静岡県)
静岡ブルーレヴズ vs 三重ホンダヒート

静岡ブルーレヴズ(D1 カンファレンスA)

けがが少ないことについて「正しいスキルでラグビーができているのかなというのはあります」と語る大戸裕矢選手

前節ではクボタスピアーズ船橋・東京ベイに大敗を喫し、5位以下との勝ち点差も詰まってきた静岡ブルーレヴズ。今節の相手は直近2連勝と調子を上げてきた三重ホンダヒートだが、この正念場で1カ月ぶりにヤマハスタジアムに戻って戦えるのは大きい。加えて、今節でチームにとって欠かせない選手が大きな節目を迎える。それも勝利への原動力となるはずだ。

その節目とは、大戸裕矢が、出場すればクラブ史上4人目のクラブ通算150キャップを達成すること。

2012年に立命館大学を卒業してヤマハ発動機ジュビロ(現在の静岡BR)に加入し、同年9月のジャパンラグビー トップリーグ第4節で初キャップを獲得してから13シーズン、静岡BR一筋で常に主力として大きなけがなく働き続けてきた。17年には日本代表でも初キャップを記録している。

187cm、100kgと現代のロックとしては決して大きくはないが、ラインアウトのキャッチ成功率も高く、目立たないところでの貢献度も非常に高い選手だ。彼が欠かせない存在であり続ける理由について、藤井雄一郎監督は次のように語る。

「試合による(パフォーマンスの)上下があまりない。体を張れるし、(判断やプレーの)間違いがないんですよね。どんなにプレッシャーが掛かっていても間違えないし、相手が強くなっても間違えずに一貫して同じプレーができる。なかなかそういう選手はいないので、それも彼が150キャップを取れた理由の一つだと思います。あとはけがをしないし、痛みにも強い。派手な選手じゃないけれど、いてくれるとすごく安心です」

大戸本人も「(間違えないことは)いまだけでなくて僕がこのチームに入って清宮さん(清宮克幸元監督)の下でやっていたときから、たくさん勉強してきたし、自分でも本当に大事にしているところです」と誇りにしている。

けがについては「ちょっと痛いぐらいなら問題なくできると思ってやっています」と言うが、その「ちょっと痛い」は常人の基準では「相当痛い」はずだ。また、けがが少ない理由は、彼自身のプライドとも関係しているようだ。

「正しいスキルでラグビーができているのかなというのはあります。逆ヘッド(頭を負傷しやすい危険なタックルの入り方)もあまりないですし、本当に中学・高校・大学で正しいスキルを身に付けて、それを実践できているから(けがをしにくい)というのは感じています」

150キャップは真に誇るべき足跡と言えるが、大戸自身はそれよりも勝つために何をすべきかを強調する。

「150という数字を目標にしてきたわけではないですが、この歴史あるクラブで150試合プレーできるのは、僕にとって本当に特別なことです。ただ、今節はすごく大事な一戦ですし、三重ホンダヒートは横浜キヤノンイーグルスに勝って、勢いや力強さは相当あると思います。でも、僕らがフォワードで試合を決めるような展開にできれば、どのチームにも勝てると思うので、チームが勝つためにフォワードから圧倒していきたいと思います」

その思いをチーム全体で共有できれば、彼の偉大な記録に花を添える勝利も自ずと近づいてくるはずだ。

(前島芳雄)

2025.02.28[三重H]試合に出られなかった3年間を原動力に。「自分のベストを発揮する」精神で戦い抜く

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第10節(交流戦)
2025年3月2日(日)13:05 ヤマハスタジアム (静岡県)
静岡ブルーレヴズ vs 三重ホンダヒート

三重ホンダヒート(D1 カンファレンスB)

山田生真選手は今シーズン、ここまで全試合で出場メンバーに選ばれている

2月23日に行われたホストゲームで、横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)を相手に20対17で勝利を収めた三重ホンダヒート(以下、三重H)。ドラマチックな展開の中、3点差で迎えたラストプレーの場面が話題を呼んだ。

トライでの逆転を狙う横浜Eがトライライン際へと攻め込む。誰もが危ないと感じたその瞬間、山田生真の激しいタックルが相手の攻撃を阻止する。そしてノーサイドの笛が響き、三重Hが勝利した。

「必死に走っていたら、たまたまあの状況になったんです。ここで決められたら終わりという場面だったので、ただただ気持ちで(相手を)捕まえることができた、という場面でした」

殊勲の好守を見せた山田は、笑顔でそう振り返る。今季、前線で貴重な働きを見せている男には、キアラン・クローリー ヘッドコーチからも「敬意を表したい」との言葉が送られていた。

山田は昨季まで所属していたコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)であまり出場機会に恵まれず、苦しい時間を過ごしたが、その経験が、いま三重Hで大いに生きているようだ。

「学生時代は常に何らかの形で試合に絡んでいたので、丸3年ほど出られなかったというのは初めてでしたし、良くも悪くも大きな経験になりました。あのときの歯がゆい気持ちが、いまの自分を突き動かす力になっています。チームにフィットできて、試合に使っていただいて、結果はまだ満足できるものではないですが、一つひとつ勝利をつかめている現状はうれしいです。ヘッドコーチには『こちらこそ、このような試合に起用してくれて、活躍させてくれてありがとう』と言いたいです」

山田が見据えるのは、今節・静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)戦、そして、古巣対決となる次節・神戸S戦だ。

「今週末は静岡BRと対戦して、その次は古巣との試合が待っています。絶対に負けたくないという気持ちが高まっています。そういう意味でも、3年間苦い経験をしましたけど今ではとてもプラスになったなと思っています。当時は試合に出たい気持ちが先行しすぎていましたが、いまは公式戦でプレーできるようになって『出ている以上は自分のベストを発揮して勝つんだ』というマインドに変わってきました。

横浜E戦の最後、ライン際でタックルに成功して、試合終了の笛が鳴って、顔を上げたときにスタンドで喜ぶファンの姿が目の前に広がりました。このような方々の存在が僕たちの原動力になっているんだなとあらためて思いました」

楽しみにする古巣戦を前に、試合に出る喜びを再び知った山田が、まずは今節を全力で戦い抜く。

(籠信明)

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