2025.03.20[横浜E]「みんなが腹を括っている」横浜E。宿すのは勝利への強い意思

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第12節(交流戦)
2025年3月22日(土)14:30 スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場) (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs 横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルス(D1 カンファレンスA)

スクラムハーフの山菅一史選手。「チームとしてまとまって、一人ひとりの役割を果たしたい」

前節のリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)戦の敗戦で5勝6敗と黒星が先行した横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)は今節、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)とのビジターゲームに臨む。

失意の敗戦から5日後。黒星先行の状況から巻き返しを図る横浜Eの練習場・キヤノンスポーツパークには、普段以上に選手たちの力強い声が響いていた。また、チームを率いる沢木敬介監督は、何度も「エナジー」という言葉を発して、選手たちにハッパを掛けた。「もうみんなが腹を括っている」。そう話すのは、スクラムハーフの山菅一史だ。

BR東京戦の山菅はファフ・デクラークに代わって、後半のスタートから途中出場。後半31分にはブレンダン・オーウェンのトライをアシストし、逆転勝利の可能性をつないだものの、最終的にチームの勝利には届かなかった。

今節対戦するS東京ベイは、ニッパツ三ツ沢球技場でのホストゲームで悔しい逆転負けを喫した相手。前回対戦はスタンドから仲間の奮闘を見守った山菅だが、今節はリザーブメンバーの一人として、チームの勝利に貢献する覚悟だ。

「勝つために必要なことはシンプルで、自分たちがやるべきことをやることに尽きると思います。その中で僕は9番の役割を全うすること。自分のディフェンス力で貢献するのはもちろんのこと、スキルを丁寧に発揮して、ブレイクダウンをコントロールして、(田村)優さんなど10番の選手(スタンドオフ)とのコンビネーションを深めながらアタックにつなげていきたいです」

BR東京戦で選手交代のバトンを受け取ったデクラークからは、自分にはない「視野の広さ」を学んできた。「そこが見えているんだ」という意外性には目を丸くするばかりだが、山菅自身も直近2試合は前述のアシストを筆頭に、チームのトライシーンに関わってきた。

さらに今節はS東京ベイが不敗記録「21」の更新を狙う“えどりく”でのビジターゲーム。山菅は「記録を止めたい」と口にしたが、あくまでも相手の不敗神話ストップは、あとから付いてくるものだ。「チームとしてまとまって、一人ひとりの役割を果たしたい」。そう語る山菅の表情は、勝利への強い意思を宿していた。

(郡司聡)

2025.03.20[S東京ベイ]ファミリーマンでありチームマン。誰かのために戦う者は強い

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第12節(交流戦)
2025年3月22日(土)14:30 スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場) (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs 横浜キヤノンイーグルス

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスB)

2019年の移籍の際、家族のような雰囲気があると聞き、クボタスピアーズ船橋・東京ベイを選んだというトゥパ フィナウ選手

「私はファミリーマン(family man)でありたい」とトゥパ フィナウは語る。ファミリーマン。日本語にすると「家族思いの人」「良き父親/夫」といったニュアンスの言葉になる。なぜファミリーマンでありたいのか。それは「両親が私たちをどのように育ててくれたかを見て、私も同じようにしたい」と感じたから。両親がそうしていたので、自分も「人生で一度もタバコを吸ったことないし、お酒も飲んだこともない」という。

2012年にトンガから来日したフィナウがホンダヒート(現・三重ホンダヒート)、キヤノンイーグルス(現・横浜キヤノンイーグルス、[以下、横浜E])を経てクボタスピアーズ(現・クボタスピアーズ船橋・東京ベイ[以下、S東京ベイ])に入団したのは2019年のことだ。複数あった移籍先の候補の中で、フィナウが強く惹かれたチームがS東京ベイだった。

「当時、クボタスピアーズではコーチ陣が新しいチーム文化を作ろうとしていて、家族のような雰囲気があると聞きました。私にとって家族はとても大切な存在です。最終的には家族の意向で、クボタスピアーズに決めました」

2019年と言えばフラン・ルディケ ヘッドコーチ、立川理道キャプテン体制がスタートして4年目。バーナード・フォーリーやデーヴィッド・ブルブリング、ライアン・クロッティらが加入した年で、チーム全体が光の差す方向に明確に舵を切り、飛躍という帆を大きく張っていた時期である。

しかし2020年、人類はうまく息を吐くことすらままならないような危機的状況に陥る。新型コロナウイルスの影が世界を覆い、その暗い波はラグビー界にも押し寄せた。

「あの年、私と妻は日本に残り、子供たちがトンガに帰ったあと、ロックダウンで離れ離れになってしまったんです。妻はパニックになり、私は練習どころではありませんでしたが、前川さん(前川泰慶・現ゼネラルマネージャー)が『家に帰って奥さんの面倒を見ていい』と言ってくれました。チームの愛とケアは本当に大きかった。家族のために尽くしたい、チームのために命を懸けて戦いたいとあらためて思いました」

いかなる局面でも体を張り続ける不屈のフランカー。今節はかつて自身も所属した横浜Eとの対戦となる。

「古巣だからといって、特別な感情はありません。ほかのチームとの試合と同じように、S東京ベイのために勝利を目指して戦います」

誰かのために戦うとき、人は想像以上の力を発揮する。ファミリーマンでありチームマン、トゥパ フィナウの強さの源がここにある。

(藤本かずまさ)

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