2025.03.28[埼玉WK]「いま、苦しむことは無駄ではない」。ベン・ガンター、連敗脱出のために作る“ムード”

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第13節(交流戦)
2025年3月29日(土)12:05 キューアンドエースタジアムみやぎ (宮城県)
浦安D-Rocks vs 埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツ(D1 カンファレンスB)

フィジカルという言葉が似合う。埼玉パナソニックワイルドナイツのベン・ガンター選手

まさかの連敗だった。第10節まで9勝1分だった埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)は第11節から連敗。埼玉WKのリーグ戦での連敗は2005年以来19シーズンぶりという。首位も明け渡すことになったが、このまま引き下がるわけにはいかない。選手たちは気持ちを一つに第13節の浦安D-Rocks(以下、浦安DR)戦へ向かう。

埼玉WKを救うのは、日本代表のベン・ガンターだ。この2連敗をどう受け止めているのか。

「まず、リーグワン全体のレベルが上がっているのは間違いない。19シーズンぶりの連敗と聞いたが、どんなチームにもいつかはそういうときがやってくる。一昨季、昨季は苦しい局面がプレーオフトーナメントのファイナルになってしまった。いま、苦しむことは決して無駄にはならない」

この状況をポジティブに捉えてゲームへの準備を進めている。27日のトレーニングでも攻守に気迫のプレーでチームに活を入れた。練習後にはフィールドに横になってチームメートと談笑してコミュニケーションをとっている。

「チームにはリーダーがいるので戦術的な部分は任せているが、それ以外のところでムードを作っていきたい。下を向くのではなく前向きに取り組んでいかなければいけない」

チームメートたちは、ガンターについてこう口をそろえる。「仲間にすれば頼もしいが、絶対に敵にしたくない選手」。まるで“ビッグベアー”のように相手の前に立ちはだかり、懐のボールを奪い取っていく。スティールのスキルはワールドクラス。タックルで相手の動きを止めたあとに、ど太い腕を絡めて自由を奪う。「スティールのコツは秘密だが(笑)、ボールを奪い取るという気持ちが大切だ」。

オーストラリア出身。高校卒業後に軍人になる道を薦められたが、土壇場でパナソニック ワイルドナイツ(当時)からオファーを受けて来日。練習グラウンドとしていた群馬県太田市、そして現在の練習場がある埼玉県熊谷市で進化を遂げた。「チャンスをくれたクラブには感謝している」。ガンターのプレーには、ラグビーへの喜びがあふれている。昨季まではけがに苦しむことも多かったが、今季はリーグ戦12試合中11試合に先発してハードなタスクを果たす。

「リーグ戦の終盤に差し掛かったが、先を見ることなく一戦一戦に集中することが重要。浦安DR戦も簡単な試合にはならない。けが人が多い中でも一つになって戦うことで結果が付いてくる。ビジターゲーム3連戦の最後で勝って、良い形で熊谷に戻ってくる」。ガンターがチームに再びモメンタムを生み出していく。

(伊藤寿学)

2025.03.27[浦安DR]いま最も勢いのあるフレッシュマン。その姿、壮大で颯爽と走る馬のよう

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第13節(交流戦)
2025年3月29日(土)12:05 キューアンドエースタジアムみやぎ (宮城県)
浦安D-Rocks vs 埼玉パナソニックワイルドナイツ

浦安D-Rocks(D1 カンファレンスA)

浦安D-Rocksの松本壮馬選手。8節から出場のアーリーエントリー組でありながら、すでに3トライを記録している

浦安D-Rocksが、今季初の連勝を懸けて宮城県のキューアンドエースタジアムみやぎで埼玉パナソニックワイルドナイツとのホストゲームを戦う。

いま、リーグワンで最もフレッシュで勢いのある選手と言って異論はないだろう。アーリーエントリーながらすでに5試合に出場している松本壮馬が、チームに新風を吹き込んでいる。

前々節・クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦で挙げた初トライは衝撃的であった。右サイドを駆け抜けて渾身の雄叫びを挙げた直後、秩父宮ラグビー場の大型ビジョンに映された14番の顔からは、大量の血が流れ出ていた。

「その前のプレーのラックの中で誰かのひざあたりが当たって切れてしまったと思います。だから、トライのシーンはあまり覚えていないです。血が出ていて『ヤバい』と思ったらボールがきた感じだったので。でも、トライの瞬間は『よっしゃー!』と思いました」

そして、傷も完全に癒えぬまま出場した前節・三重ホンダヒート戦では2トライを奪い、逆転勝ちの立役者となる。「めっちゃうれしかったです」と、リーグワンで初めて勝利の瞬間を味わった。

プレースタイルは、まさに壮馬の名前そのものと表現するのが相応しい。ボールを持てば、大胆に颯爽とグラウンドを駆け抜け、ディフェンスとなれば力強いタックルで相手を止める。本人は「由来は聞いたことないですけど、“壮大な馬”みたいな感じですかね」と笑った。その歩みは、まだまだ学びの連続だという。

「手ごたえというよりも勉強の毎日です。でも、そうやっていろいろと新しいことを学べて楽しいです。いい時間を過ごせていると思います」

ウイングを務めていたこれまでの5試合とは異なり、今節は本職のセンターでの出場となる。「ウイングをやったからこそ分かることもあるので、フィジカルを押し出すスタイルは変えずに、センターではスマートに周りを生かすプレーをしていきたいです」。いまかいまかと、杜の都での一戦を松本壮馬は爪を研いで待っている。

(須賀大輔)

試合詳細

見どころ・試合レポート一覧