2025.05.01[S東京ベイ] “ビタミン”のごとく、安定と安心をもたらす存在。大型ロックはチームの潤滑油

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第17節(リーグ戦)カンファレンスB
2025年5月3日(土)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs 埼玉パナソニックワイルドナイツ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスB)

クボタスピアーズ船橋・東京ベイの、デーヴィッド・ブルブリング選手。ラインアウトではロックとしてジャンパーを務めることが多く中心的な役割を担う

ビタミン。誰もが知る名前ではあるのだけれど、炭水化物や脂質のようにエネルギー源として利用されることも、タンパク質のように筋肉などの材料になることもない。一体、どんな働きをしているのか? 言われてみれば、その役割をよくは知らない。でも、多くの人たちが「大切だ」と口をそろえ、摂取を勧める栄養素、それがビタミンである。

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)の今野達朗アシスタントコーチいわく、その選手は「チームのプランを理解し、それを確実に実行する能力が高い」、「興奮しがちな選手もいる中、冷静に状況を判断し、適切な行動を取ることができる」、「選手間やコーチとのコミュニケーションを円滑にし、意見の調整を行ってくれる」、「英語を基本にさまざまな言語を駆使してチームメートとコミュニケーションを取ってくれる」、「常に動き続け、安定したパフォーマンスを維持している」などの特徴を有する。

特にランのスピードに長けているわけでもなければ、トライを量産するような目を見張るプレーをするわけでもない。でも、チームに安定感と安心感をもたらし、勝利を陰で支えている。「DB」の愛称で親しまれる南アフリカ出身の大型ロック、デーヴィッド・ブルブリングはそんな選手なのだと言う。

「そう言ってくれるのはうれしいですね」とDBは口元を緩ませた。その献身性の源を尋ねると、「私は“人”が好きなんです」。人が好きだから、さまざまな国のさまざまな文化の選手たちと心を通わせられるS東京ベイは「自分らしくいられる場所」だと感じている。

「ここに来て数年が経ち、いまでは自分の役割に慣れました。それに、もちろん、可能な限りチームに貢献したいと思っています」

2019年に入団し、翌20年1月のパナソニック ワイルドナイツ(トップリーグ当時)戦でトップリーグデビュー(19年にはトップリーグカップに出場)。11対34で大敗を喫したものの、チームは研鑽を積み重ね、2022-23シーズンには決勝でその強豪を下して優勝。そして今節、DBにとってはデビュー戦の相手である埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)との首位攻防戦を、秩父宮ラグビー場で迎える。

「埼玉WKは素晴らしいチームで、第2節で対戦したときも接戦になりました。次の試合では自分たちがやるべきことにフォーカスし、自分たちのプレーを遂行できれば、良い結果になるはずです」

ビタミンは、それ自体がエネルギーになるわけではないものの、ほかの栄養素が活躍できる舞台を整える、体の機能を円滑に進めるために欠かせない重要な栄養素。戦略を機能させるための触媒であり、連係を円滑にするための潤滑油でもある。そんなビタミンのような役割を担う男が、歓喜の春を迎えるために、チームという“生きもの”の機能を静かに巡らせる。

(藤本かずまさ)

2025.05.01[埼玉WK]日本代表の9番から学び、模索した日々。出場機会の増加は「成長につながっている」

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第17節(リーグ戦)カンファレンスB
2025年5月3日(土)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs 埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツ(D1 カンファレンスB)

加入10年目の節目を迎えている埼玉パナソニックワイルドナイツのスクラムハーフ、高城佑太選手。「同じポジションに代表クラスの選手がいるチームだったので、学ぶ日々だった」

加入10年目を迎える埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)の高城佑太が、今季12試合に出場しチームタスクを黙々と遂行している。第15節の三重ホンダヒート戦では初先発して後半29分までプレー、チームを勝利に導いている。

リーグワンでは16キャップを記録。そのうち12キャップが今季刻んだもので、激闘が続くシーズンにおいて貴重な役割を果たしている。「出場機会が増えたことで、自分の成長につながっている」と手ごたえもつかんでいる様子だ。

“花の2016年入団”。同期には、キャプテンの坂手淳史、平野翔平、長谷川峻太、福岡堅樹、ベン・ガンターら名だたる仲間が並ぶ。高城は身長162センチのスクラムハーフ。スピードあふれるプレーと広い視野から繰り出されるパスが武器だ。盛岡工業高校、関東学院大学で活躍し、埼玉WKに加入したが、田中史朗、内田啓介ら日本代表スクラムハーフが存在した影響もあり我慢の時間が続いた。

「同じポジションに代表クラスの選手がいるチームだったので、学ぶ日々だった。その中で自分に合ったプレースタイルを模索して、ロビー・ディーンズ監督とコミュニケーションを取りながら、どのようにチームに貢献できるかを考えてきた」

同期の坂手は「佑太にとって、日本を代表する9番がいる中での挑戦だった。僕らはこの4月で社会人10年目になったが、どんな状況でも努力を重ねている姿を見てきた。今季はここまで積み上げてきたものを発揮してくれている。僕自身も彼とプレーするのが楽しみ」と信頼を寄せる。

戦いの舞台に身を置く高城にとっての癒しは、家族、そして愛猫と過ごす時間だ。3年前に保護猫2匹を引き取り、家族と一緒に暮らしているという。種類はどちらも、スコティッシュフォールドとマンチカンのミックスという。「家では、猫がキャプテンです(笑)。いつも癒してもらっている」と笑顔を見せる。

白熱のディビジョン1は残り2試合。今節のビジターゲームは、2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイとの上位対決だ。「どんな状況でも、チームに貢献することだけにフォーカスして役割を果たしていく。最終的な目標はプレーオフトーナメント優勝だが、先を見るのではなく一戦一戦に集中して、全員でタスキをつないでいきたい」。高城は今節も「21」でメンバー入り、野武士軍団の一員として、静かに出番を待つ。

(伊藤寿学)


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