2025.01.16[江東BS]幾多のけがを乗り越えて──。悔しさを力に変えるウイングの物語

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第4節
2025年1月18日(土)14:30 ヤンマースタジアム長居 (大阪府)
レッドハリケーンズ大阪 vs 清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークス(D2)

今シーズン、待ち望んだ初出場となる宮㟢永也選手。「集大成というか、いつ辞めても悔いの残らないシーズンにしたい」

1月18日、清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)は、ヤンマースタジアム長居へ乗り込み、首位を走るレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)とのビジターゲームに挑む。前節で連勝が止まった江東BSにとって、今節は流れを取り戻すための重要な一戦だ。

仁木啓裕監督兼チームディレクターは前節を振り返り、「単に気持ちの差」と厳しい言葉を口にした。「一戦一戦に集中し、チャレンジャー精神で臨む」ことを掲げていただけに、メンタル面に要因があったことは悔しさを伴う。そんな中、今節は熱い思いを持った男が先発に名を連ねた。

「社会人になってから、ずっと悔しいシーズンですよ」。そう語るのは、大卒6年目の宮㟢永也だ。宮㟢は、新人時代なかなか出場機会を得られず、さらにその後も鎖骨や鼻の骨折など度重なるけがに苦しんできた。昨季ようやくけがなくプレーできたものの、公式戦での出場はわずか3試合。満足のいく結果ではなかった。

それでも宮㟢は「腐らずにやっているとチャンスは必ずやってくる」と考え、いつメンバーに入ってもいいように準備をしてきた。ラグビーと社業の両立という厳しい環境の中、モチベーションの源はどこにあるのだろうか。皮肉にも、ラグビー愛に気付くのは自身を長らく苦しめてきた「けがをしている」ときだという。「ラグビーをやっているときって、やっぱりキツいじゃないですか。でも、けがをして、みんながプレーしているのを蚊帳の外から見ているときに、やりたくなるんですよ。ということは、やっぱり好きってことじゃないですか」。そうした悔しい時期にこそ、宮㟢は自身の中にあるラグビーへの気持ちを確かめてきた。

仁木監督兼チームディレクターは、努力を怠らず「試合に出たい」という顔を見せる選手を見落とさないようにしているという。加えて吉廣広征ヘッドコーチ兼マーケティングリーダーは、「(RH大阪戦は)ウイングのディフェンスがカギになってくるゲーム。宮㟢はそうしたプレーができる選手だと思ったので、監督に『使いたい』と言われたときに戦術面で合っていると思った」と評価している。

宮㟢にとって、今季は特別な意味を持つ。「集大成というか、いつ辞めても悔いの残らないシーズンにしたい」。実は今年こそ、大学時代からのけがの影響も鑑みて逆算していた”区切りの年”だという。その覚悟がプレーに一層の磨きをかける。

未来は分からない。一戦一戦、目の前の試合に集中することをうたう江東BSにおいて、「試合に出たい顔」のこの男に、楕円球の女神はきっと微笑む。

(奥田明日美)


2025.01.16[RH大阪]力強く、ひたむきに。背中でリードするディフェンスリーダー

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第4節
2025年1月18日(土)14:30 ヤンマースタジアム長居 (大阪府)
レッドハリケーンズ大阪 vs 清水建設江東ブルーシャークス

レッドハリケーンズ大阪(D2)

佐藤大朗選手。元キャプテンのベテランは前節、久しぶりの出場。後半18分には1トライも挙げた

1月18日、ヤンマースタジアム長居で開幕戦以来のホストゲームを行うレッドハリケーンズ大阪。ディビジョン2で唯一、開幕から連勝中となっている。良い戦績や日々の取り組みへの手ごたえを得てもなお、驕ることなく今節も「一貫性をもって戦えるか」(松川功ヘッドコーチ)。それは結果につながるだけでなく、チームとしてあるべき姿を示す意味でも大切にしたい。

今節は、ジャパンラグビー リーグワンが始まってからの過去3シーズンでまだ対戦したことのない清水建設江東ブルーシャークスを迎え、戦う。得点力のある、特に前半での得点が多い相手をいかに止め、チャンスを生んでいくかは、一つのポイントになってくるだろう。

前節、昨季の第5節(2024年2月3日)以来およそ11カ月ぶりに、佐藤大朗が出場した。持ち前のタックルやブレイクダウンでの強さで、勝利に貢献。ボーナスポイントを手繰り寄せるトライもあったが、試合後には「ファウルもあったし、タックルを外される場面もあった。これまでの自分のスタッツと比較すれば、まだまだ」と、満足のいかない様子をのぞかせていた。久しぶりの出場で、試合勘に課題があると感じたという。この日学んだことをもとに、「実戦の中で成長していきたい」と話していた。

そして今節も、前節に続いて先発メンバー入り。望んでいた、試合勘を取り戻して成長を重ねる機会を得た。

佐藤は、チーム内でディフェンスリーダーの一人としての務めも果たしている。彼が担当するのは、主にタックルに関する部分だ。前節を振り返り、コリジョン(接点)は「全体的に良かったと思う」とする一方で、「チームとしてタックルの本数自体が多くなかったので、一つ外せば成功率は下がってしまう。成功率は、70%台前半だった」ことは今節への課題になったと語っている。

2015年から3シーズン、キャプテンを務めた経験もあるベテラン選手だ。彼が語る際に紡ぐ言葉には、過不足がない。けれどいまは、「ハドルを組んだときにはキャプテンが話してくれるので、自分が話す必要はない」。ただチームの一員として、常に「与えられた仕事をするだけ」だ。

「相手をタックル一発で倒すことができれば、ボールも見える。そうすれば、ジャッカル(スティール)できる機会も増えてくるはずだし、チャンスにつながる。タックルの回数、クオリティー、成功率にこだわっていきたい」。語らずとも、その力強くひたむきに戦う背中がチームを引っ張る。

(前田カオリ)


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